2012 Fiscal Year Research-status Report
仮想的テリトリー手法を用いた街路の歩きやすさに関する研究
Project/Area Number |
24560634
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
深堀 清隆 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70292646)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 街路景観 / 歩行環境 |
Research Abstract |
本年度は実施計画の通り、①歩行環境調査、②道路および沿道の景観特性の指標化と分析、③街路での歩きやすさに関するアンケート実験を実施した。①については、さいたま市内、大宮駅東口周辺地区および南浦和駅周辺地区それぞれ駅から500m圏内の主要歩行ルートを対象に現地調査を実施し、②において、個別街路の構造、街路の接続状況、街路網における可視領域に関わる指標を設定し分析を行った。さらに仮想的テリトリーの空間分類を再設定した上、調査街路におけるテリトリーの分布状況を把握した。③のアンケート実験は2通りの手法によってデータを得た。一方は2つのケーススタディ地区における現地歩行実験であり、被験者22名(南浦和)16名(大宮)に評価対象ルートを歩行しつつ、交差点ごとに歩行に関わる設問への回答を行ってもらった。もう一方は調査街路の景観映像を用いた室内実験であり、第1段階目に評価グリッド法の適用によって、10名の被験者から、「歩きたい(歩く意欲)」「歩行しやすい(物理的条件)」の評価項目に対する評価構造をパス図としてとりまとめた。この結果を踏まえ第2段階として、20枚の景観画像の評価実験を行い、15項目の下位評価項目について32名の被験者による評定尺度データを得た。ここで得られたデータをもとに統計ソフトAmossを用いた共分散構造分析を適用し、数通りの評価構造モデルを作成することができた。以上をまとめると、対象地域の歩行環境に関わる基礎データを得ることができ、方法論的には歩きやすさの評価手法を一通り実施して評価構造モデルを抽出できることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、街路の空間において、景観特性が歩行者の歩行意欲を高めるとの着眼点により、評価手法を構築することである。景観特性の効果については、現地歩行のアンケート、評価グリッド法によるインタビュー、その結果に対する共分散構造分析の適用により、景観以外の街路空間の物理的空間特性に対し、景観的特徴(視覚的要素)および空間構造に由来して歩行者に認識されうる仮想的テリトリーの持つ効果のウェイトを十分評価できたと考えている。研究目的に記載した事項のうち、以上が24年度の実施計画に関わる事項であるので、順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に構築した評価構造モデルには、2つの歩行に関わる心理評価尺度と、仮想的テリトリーの空間特性の関係性が明瞭でないとの課題を残している。そこで仮想的テリトリーの空間分類について見直しを行った上で、評価構造モデルの再作成を行う。再作成においては、類似した景観特性を有する一定区間の街路のタイプ分類を行い(仮想的テリトリーは沿道の個別の小空間)、複数の評価構造モデルを作成した上、比較検証する。これは最終年度により面的な街路網の総合的な評価を行うための準備である。一定区間の街路の歩行環境評価を可能とするために、個別の仮想的テリトリー空間の評価を統合して区間評価を見出す方法論を構築することを2年目の主要な課題としたい。その後、3年目に向けた課題となるかもしれないが、こうした仮想的テリトリー空間を景観シミュレーションにより計画的にコントロールした映像を用いて歩行環境評価を行うための準備をする。ここでは仮想的環境内でウオークスルーが可能となる景観シミュレーションシステムを市販のツール等を比較検討した上導入する。このシミュレーションを活用して街路映像群を仮想的に体験する被験者による心理実験を実施する。得られた実験データについて要因分析を適用し、仮想的テリトリーに関連する景観要因と被験者の歩行状況に関わる属性や街路環境要因との相互関係について検証を行う。この評価モデルは、2年度目に得られた評価構造モデルを参考に要因を設定して、実験データが妥当なものであるか、またどのような街路の環境条件であれば有効なモデルとなるかを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額については、交付申請書に記載したとおり、当初使用予定であった没入型仮想空間体験装置CAVEの代わりに導入する景観シミュレーションシステムについて、計画を実施する上で性能等が十分なソフトウェアとワークステーションを導入するために、次年度の経費とあわせて使用する予定である。
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