2013 Fiscal Year Research-status Report
地域間交流の促進による国土の維持・活性化のための政策シミュレーション
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24560644
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
近藤 光男 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (10145013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 明子 四国大学, 経営情報学部, 講師 (60514081)
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Keywords | 地域間交流モデル / 政策シミュレーション / 地域間交流促進政策 |
Research Abstract |
平成25年度は、以下に示す2つの課題について実績をあげることができた。 1.地域間交流モデルの構築 まず、地域間交流モデルの定式化を行った。モデルは、個人が他地域を訪問する際には訪問先で得られる効用を最大化しているとの仮説に基づいて、個人の効用関数を仮定し、一方で訪問に要する費用制約を条件とし、非線形計画の最大化問題を解くことによって、定式化した。続いて、四国の市町村を対象として地域間交流の実態を明らかにした。地域間交流は、地域の訪問者数によって捉えており、全国から四国の市町村を訪問した人数で計測した。この地域間交流量を1999年と2005で捉え、各市町村における実数および人口1人当たりの交流量、さらにそれらの変化を明らかにした。一方で、訪問する地域における地域の魅力度を表す指標を社会経済状況を表す指標に基づいて、抽出、作成した。そして、先に定式化した地域間交流モデルのパラメータを上述のデータを用いて推定した。モデルの推定精度は満足がいく水準であり、次の研究ステップである政策シミュレーションに適用することが可能なモデルが推定できた。 2.地域間交流モデルを用いた政策シミュレーション 地域間交流を促進させるために大いに期待される政策の1つが交通政策である。本年度は、この交通政策に着目し、四国における広域的な最重要交通基盤である高速道路の整備計画を対象とし、政策シミュレーションを行った。具体的な高速道路整備計画は、2030年において計画されている四国の高速道路8の字ネットワークが全線開通した場合を取り上げた。8の字ネットワークが全線開通した場合には、高速道路によって新たに連携を持った市町村において訪問者数が増加していることがわかった。なお、何も政策を講じない場合、2005年から2030年にかけて、人口の減少率に応じてすべての市町村で訪問者数は減少することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、3年間の研究期間の2年度である。3年間の目的として掲げた4つの項目である「(1)人口減少下における地域の維持困難度の診断、(2)地域間交流メカニズムの解明とモデルの開発、(3)地域間交流を促進させる交通政策および地域政策の評価、(4)国土の維持・活性化策のための地方部や中山間地域における地域政策の提案」に対し、昨年度は、(1)と(2)に関して成果をあげることができたが、本年度は、(3)に関して成果をあげることができた。さらに、政策シミュレーションを行うことによって、(4)につながる勢いがついた年である。 今年度の大きな成果の1つが、地域間交流モデルを構築できたことにある。モデルの定式化については、従来から研究代表者・分担者が成果をあげてきたが、今回は、全国から四国地域を訪問するという交流に対して、四国の市町村を分析単位として、新たなモデル構築を目指したが、モデルのキャリブレーションの結果、シミュレーションに適用可能なモデルを得ることができた。モデル推定では、交通負担の指標として、新たに一般化費用を適用したことが特筆され、この指標の導入が満足できるモデルの構築につながった。 続いて行った政策シミュレーションについては、今年度は、特に交通政策に着目した。四国における広域的な社会基盤である高速道路の整備は、特定の市町村ではなく、関連するすべての市町村に効果をもたらすと考えられ、地域間交流の促進策としては、大きな効果が期待できる政策である。実際に、四国における高速道路8の字ネットワークの整備による地域間交流促進効果をシミュレーション分析によって、計量的に明らかにし、政策の評価を行うことができた。 以上のことから、3年間の研究期間における2年度の成果としては、今後につながる多くの知見も得ることができ、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と2年目にあたる今年度の研究成果として、3年間の研究期間において掲げた4つ研究目的のうち、3つの目的に関して、意義のある知見が得られた。これらの成果は、最後に掲げた4つめの目的である「国土の維持・活性化策のための地方部や中山間地域における地域政策の提案」につながるものであり、予定どおりの研究計画を遂行する。 まずは、これまでの2年間で得られた成果を土台にして、地方部や中山間地域におけるソフト政策を含めた各種の地域間交流促進政策のシミュレーションができるように、地域の魅力度に関するソフト政策に関する政策変数を導入することを考えている。そのための準備は、今年度の終盤から開始している。具体的には、全国すべての市区町村に対して、イベントや地域活動など、地域の魅力を向上させる取り組みについて、アンケート調査を行っている。このアンケート調査データを用いると、モデルに新たにソフト政策に関する政策変数を導入することが可能になる。このことを反映したモデルが構築できれば、現在適用可能なモデルに含まれているハード政策に加えて、ソフト施策も含めた政策シミュレーションが展開でき、その成果として、4つめの目的を達成することが可能となる。 以上のように、平成26年度は、最後の目的である「国土の維持・活性化策のための地方部や中山間地域における地域政策の提案」を課題として研究を展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年2月に発注した物品(消耗品)が定価より低価格で購入できたため、その差額である8,914円を2013年度内に使うことができなかった。 この使用額は、研究に必要なパソコン関係の消耗品(プリンタ用紙、インク等)にあてる予定である。
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