2012 Fiscal Year Research-status Report
レーダー降雨予測の不確実性を考慮した雨天時汚濁負荷削減のための雨水貯留施設制御
Project/Area Number |
24560662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
城戸 由能 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50224994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中北 英一 京都大学, 防災研究所, 教授 (70183506)
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 助教 (90551383)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市雨水排除 / ノンポイント負荷削減 / レーダー降水量 / 予測精度 / 雨水貯留施設 / 緊急排水操作 / 実時間制御 |
Research Abstract |
雨天時のノンポイント汚濁負荷流出は都市内河川の水質汚染の主要な要因となりつつあり,浸水防止目的で整備された雨水貯留施設を活用して初期汚濁雨水を貯留・処理することが検討されているが,同一施設において浸水防止と汚濁負荷削減の両目的を達成するためには浸水被害をもたらす豪雨が予測された場合に汚濁負荷削減目的で貯留した初期流出雨水を速やかに排水して浸水防止目的のピークカット貯留に備えるための緊急排水操作を導入する必要がある.近年,最新型レーダー整備と予測手法改善により降雨予測精度の向上が図られており,本研究では,降雨予測誤差を定量的に評価した上で雨水貯留施設の操作ルールを作成することを目的としている. H24年度において,西羽束師川流域を対象として,仮想的な予測誤差を付加した計画降雨規模の予測降雨モデルを入力とした流出解析に基づいて緊急排水操作を実施する雨水貯留施設の実時間制御シミュレーションを行い,段階的に設定したノンポイント汚濁負荷削減のための初期貯留容量毎に,浸水量および緊急排水の実施状況を算定し,仮想的予測誤差に基づいて浸水量期待値を評価した.その結果,初期貯留容量を18千ton(全貯留容量の18%)の場合,降雨予測相対誤差が40%を越えなければ,計画降雨規模の強降雨時においても初期貯留実施による浸水危険度は増加せず,降雨予測相対誤差が80%を越える場合には,初期貯留容量を9千ton(全貯留容量の9%)であっても浸水危険度は増加することが評価できた.つまり,降雨予測精度が相対誤差として40%以下に抑えることができれば,貯留施設用量の2割弱の容量を初期貯留操作に用いても浸水危険度を高めることなくノンポイント汚濁負荷削減を目的とした初期貯留と緊急排水操作を実施することができることを定量的に評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,H24年度において雨水および汚濁負荷流出モデルの作成に重点を置いていたが,西羽束師川流域における観測・モデル化を先行して実施し,さらに,H25年度に実施予定であった仮想的に降雨予測誤差を付加したモデル降雨を用いた解析を,西羽束師川流域を対象として先行して実施した.ただし,X-bandレーダー降水量データを用いた降雨予測誤差解析を実施する予定であったが,強降雨の事例収集が十分とは言えず,まずデータ蓄積量が豊富なC-bandレーダー降水量情報に基づく降雨予測誤差解析を実施し,降雨予測相対誤差と段階的に設定した初期貯留容量毎の実時間制御シミュレーション結果から,浸水危険度を増加させないための,初期貯留容量と降雨予測相対誤差を定量的に評価できたことは,本研究の重要な到達点が達成できた.また,負荷削減評価のための,ノンポイント汚濁負荷流出の連続水質観測に基づき,多変量解析によりTOCやT-Nの短時間水質変動を推定する手法を西羽束師川流域での適用性確認を実施し,次年度以降,緊急排水操作を含む雨水貯留施設の実時間制御を行った場合の汚濁負荷削減効果を定量的に評価するための準備を行った. 以上のように,当初計画した研究内容を再整理して,雨水および汚濁負荷流出モデルの作成から予測降雨モデルを用いた雨水貯留施設の実時間シミュレーションによる浸水危険度の評価という流れを先行して実施することで,本研究の目的達成の見込みをつけることができたことで,本研究の全体的な達成度はおおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度も,まず分流式下水道区域におけるノンポイント汚濁負荷削減のための雨水貯留施設の実時間制御に重点をおいた解析を実施する.前年度に実施した分流式下水道区域における仮想的に降雨予測誤差を付加したモデル降雨による解析により,初期貯留容量と浸水量期待値および浸水深との関係性が明らかになったので,近年の比較的大きな降雨事象を対象として実際のレーダー降雨情報と移流モデルを用いた降雨予測を行い,その予測誤差の解析および浸水危険度評価を行い,浸水危険度を増加させずにノンポイント汚濁負荷削減を実施するための初期貯留容量の評価を実施して,実際のレーダー降水量データと降雨予測モデルを用いた解析によって得られる降雨予測精度と浸水危険度の関係性について解析を実施する.さらに,雨水貯留によるノンポイント汚濁負荷削減効果の評価を実施するため,複数年間を通した降雨事象を解析対象とした連続シミュレーションを行い,緊急排水操作を伴わない小降雨時を含めた,年間の汚濁負荷削減量を定量的に評価する. また,合流式下水道越流水対策の対象となる下水道区域における雨天時雨水・汚濁負荷流出観測を実施し,流出モデルの作成と越流水量・汚濁負荷量の評価を実施する.貯留施設操作は既存下水道管渠の流下能力を越えた越流雨水を貯留するため,浸水防止目的と必ずしもトレードオフの操作とはならないため,降雨予測に基づく実時間制御の必要性は低い.ただし,計画規模超過降雨が予測される場合に事前に緊急排水を実施することで,より浸水危険度を低下させる操作の導入可能性について,その実施可能性を含む手基礎的な検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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