2013 Fiscal Year Research-status Report
城下町の庭池を結ぶ水利用システムの現状と多面的な利用実態、及びその保全利活用計画
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24560743
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 邦博 信州大学, 農学部, 教授 (10178642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 三知 信州大学, 農学部, 助教 (40412093)
大窪 久美子 信州大学, 農学部, 教授 (90250167)
大石 善隆 信州大学, 農学部, 助教 (80578138)
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Keywords | 庭園群 / 水路網 / 城下町 / 歴史的環境保全 / 水辺環境 |
Research Abstract |
松代城下町を特徴付けるのは、池庭群と池に水を供給する水路網である。池庭と水路が持つ多面的な機能を調査した。庭園の鑑賞として、花、紅葉、鯉を楽しむ事があげられている。水の利用だが、半数の方が池の水を防火用水として認識し、また植物への水やりや打ち水のために用いている。かつては野菜や食器を洗っていたという利用形態が多くよせられた。課題としては、水量が減少していること、また水質が悪化し鯉が死ぬ時があることが上げられた。水路と池庭の減少の実態とともに、平成26年夏に論文を提出する予定である。 水路の所有と管理だが、市道沿いの水路の所有は市であり、屋敷地内を流れる水路は個人の所有となっている。屋敷地と屋敷地の境界を流れる水路は双方が所有する、または片側の屋敷地が所有しているケースが有る。水利権がその理由と考察される。管理は所有者が行っている。ただ市道沿いの水路は、町内会単位で清掃を行っていたり、自分の家の前を掃除していたり、道により異なる。一体化した管理が課題であることが判明した。結果を平成26年6月の庭園学会で発表する予定である。 水生植物の分布調査は、松代町における4つの水辺環境(水路、池、河川、水田)を対象とし、水流分岐点と材質構造を基準とした区間を1プロットとして、出現種を記録した。総計299プロットで総種数は93種が記録され、絶滅危惧種は環境省RDB記載の8種、長野県RDBの11種が確認された。TWINSPAN解析で得られた11群落型(A~K)の立地環境条件を比較すると、群落Eで底質が砂礫である割合が高いことが湿性植物の生育を可能にしたと考えられる。結果は生態学会で発表され、論文を準備中である。 群馬県甘楽町小幡地区と福岡県朝倉市秋月地区の調査を行った。両地区とも、水路や池庭の消滅という深刻な問題は生じていない。水量の豊富さが理由と考えられるが、より深く考察を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
松代町東部における庭池と水路網の現状把握だが、水路網は把握した。この地区は湧水を水源としているが、湧水が枯渇してきている。状況は深刻である。池庭の現状把握は遅れている。湧水池帯である南側で池が消失している。池庭の多面的機能と利用の実態調査と合わせて、これから残りの地区で調査を行う予定である。 水路の所有と管理状況だが、南部地区では調査が終了している。東部地区で調査が進んでいない。これから調査を行う予定である。水路や池の生物調査だが、城下町内では順調に進み、終了している。 城下町周辺の郊外や農村地区での調査だが、生物調査は水生植物を中心として順調に進んでいる。農村地区では、やはり植物数が豊富であった。来年度も継続し、城下町地区の水生植物の現状と特徴をより明確化する予定である。土地利用の変化の調査は進んでいるが、終了していない。合わせて次年度に行う。 群馬県甘楽町小幡地区と福岡県朝倉市秋月地区の調査を行った。松代町のような課題は生じていないことがわかった。水路と池庭の消失は、水量の減少と水質の悪化に起因していると考察され、これは松代特有の課題であった。 研究調査全体を見ると、達成されて課題が明確化されていることも多いが、遅れている調査もあり、また研究結果の口頭発表や論文発表が遅れていることもあり、総じて、やや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も調査を進める体制が早くつくれたので、順調に調査を進めていく。松代町東部での水路と池庭の持つ多面的機能と利用の実態を探る補充調査を進めるとともに、城下町周辺の農村地区における生物調査と土地利用調査を進めていく。 池庭を所有していない住民の調査だが、旧城下町内で行う。松代町の重要な特徴をなす水路網と池庭群に対し、どのような考えを持っているのか、その歴史的なそして文化的な価値に対し、どのような意識を持っているのか、保全に協力する考えの有無などを探る。池庭を所有していない住民も水路の管理などに参加し、一体となって町の特徴を保全していく方法はないか、探っていく。 群馬県甘楽町小幡地区と福岡県朝倉市秋月地区では松代町同様の課題は発生していなかった。秋月地区では、庭池と庭池を直接結ぶ泉水路の重要性があまり認識されていなかった。小幡地区では水路と庭園の重要性が認識されており、昨年は雄川堰という水路(網)を中心としたまちづくりのシンポジウムも開催されている。その保全活用の仕方を調査し、松代町を比較検討していく。 そして、まとめとともに、松代町の水路網と池庭群の保全利活用計画の作成を行う。 研究成果としての論文だが、現在、すでに2報をまとめ始めている。その他にも論文を準備し、また報告としても成果を発表する予定である。
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Research Products
(2 results)