2012 Fiscal Year Research-status Report
非常住人口を考慮した歴史観光都市における避難場所配置の分析と提案
Project/Area Number |
24560767
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
及川 清昭 立命館大学, 理工学部, 教授 (00168840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 悟史 立命館大学, 理工学部, 助教 (00551524)
藤井 健史 立命館大学, 理工学部, 助手 (50599199)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 避難場所 / 帰宅困難者 / 帰宅流動 / 観光客 / パーソントリップ調査 / 寺社境内 |
Research Abstract |
本年度は,京都市における避難場所配置の適正評価と帰宅困難者の推計に焦点を絞り,下記のような研究を行った。 1.避難場所関連の各種データベースの作成・整備:京都市の広域避難場所68箇所と一時避難場所340箇所の敷地ポリゴンデータをCAD入力した。また,町丁目別の夜間人口と昼間人口,パーソントリップ調査の結果を,ポリゴンデータとともに入力・整備した。さらに,京都市における都心5区(上京区・中京区・下京区・東山区・南区)の道路ネットワークデータをCAD入力した。 2.避難距離からみた京都市における避難場所配置の定量的評価:京都市内の広域避難場所と一時避難場所からの避難距離に基づいてバッファを作成し,カバリングモデルを用いて被覆領域を描出し,被覆人口を計量した。また,避難場所までの最近隣距離分布を導出するとともに,ボロノイ図を作成し,避難距離が限界を超える地域とその人口を明らかにした。その計量結果をもとに,避難距離の短縮と施設容量の確保をはかるために,広域避難場所については大学や大規模な寺社境内を,また,一時避難場所については,オフィスビルや中小規模の寺社境内や公園などを新たな避難場所とすることを提案した。 3.京都市都心部における帰宅困難者と徒歩流動量の推計:パーソントリップと昼夜間人口のデータから,都心5区における帰宅困難者数は約20万人,徒歩帰宅者数は約52万人という推計結果を得た。また帰宅困難者の分布図を作成し,都心部と京都駅周辺に集中することを明らかにした。さらに,京都市観光調査年報に基づき,主要観光地における観光客が宿泊地に全員帰ると仮定し,観光客の帰路OD行列を作成することで,都心5区に帰る観光客数の合計は約14万人という推計結果を得た。道路データを作成し,徒歩帰宅者約52万人と観光客約14万人と合わせて帰宅流動シミュレーンを実行し,流動が集中する箇所を描出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の達成度は下記の通りである。 (1)避難場所関連の各種データベースの作成・整備:避難場所や昼夜間人口などの基本的なデータベースの整備は完了したが,小学校などの一時避難場所の収容可能人数については,収集・入力途中である。また,観光客の詳細な場所的・時間的分布データと,道路幅員別のデータが未整備の状況である。なお,避難場所の代替施設として提案を目論んでいる寺社境内の建物・敷地のポリゴンデータは整備完了済みであるが,帰宅困難者の収容施設として提案するためのオフィスビルや公共施設のデータは今後整備する予定である。 (2)京都市における避難場所配置の定量的評価:避難距離を直線距離とした場合の定量的評価は完了したが,さらに信頼性を高めるために,避難距離を道路距離とし,道路幅員と火災危険地域を加味した避難ルートの検証が必要である。また,避難場所収容人数に関しては,収容不能となる大まかな人口把握は試みたが,特に小学校の体育館や教室の規模から具体的な不足容量を推計する必要があると考える。 (3)京都市都心部における帰宅困難者と徒歩流動量の推計:帰宅困難者の推計と帰宅流動シミュレーションは完了したが,推計に際しては,パーソントリップ調査の集計結果を昼夜間人口をもとに町丁目別に再配分するというやや信頼性に欠ける方法を採用しており,今後はパーソントリップ調査の結果を直接反映させる方法に改良することを考えている。 上記(2),(3)の研究計画は平成25年度に実施予定であったが,早めに達成した。しかし,当初24年度に実施予定であった,全国の自治体における避難場所関連の資料収集と分析,および,施設容量に基づく階層型施設の最適化問題における数理的性質の解明については未着手の状況にあり,25年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)京都市における避難場所関連の各種データベースの作成・整備:震災時における避難に関する一連の分析において,本研究での最も肝要なデータは,通勤・通学者,買物客,観光客などの非常住者の時空間分布である。今後はパーソントリップ調査の結果を詳細に分析するとともに,当初予定していた以上に収集が困難である観光客のデータについては,個別の観光地の訪問者数の収集やサンプル調査等の新たな作成方法を試みる必要がある。 (2) 全国の自治体における避難場所関連の資料収集と分析:全国の都道府県と政令都市における地域防災計画の資料を収集し,広域避難場所および一時避難場所の種類(公園・学校・公共施設・神社・民間施設など)や収容能力等を調査する。これらのデータはネット上で収集可能であり,学生の協力を得て精力的に調査・分析を行う。 (3) 施設容量に基づく階層型施設の最適化問題における数理的性質の解明:京都市においては,一時避難場所と広域避難場所というふたつの階層に分けて配置されている。このような階層型施設の最適化配置問題を,施設容量を制約条件とした最適化問題に展開し,基本的な数理的性質を明らかにする。この研究計画を実現するために,連携研究者の協力を得ながら推進する。 (4)京都市における避難場所配置の定量的評価:研究成果を学会に発表するべく,人口代表点から避難場所までの避難距離を,避難路の危険度を重みづけして評価し,かつ,避難場所収容人数の過不足と追加施設の提案を行う。 (5)京都市都心部における帰宅困難者と徒歩流動量の推計:本年度の研究展開として,帰宅困難者の推計の精緻化をはかり,道路データを再整備し,分析を深めた後,その成果を学会に発表する。なお,観光客を含めた推計は,未だ数値の信頼性を欠いているので,今後精力的に推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①機器・各種データ・アプリケーションソフトの購入;現有のパソコンを更新し,計算速度の向上をはかる。また,京都市の道路ネットワークデータを幅員別に入力するために数値データを購入し,公共施設や大規模オフィスビルを一時避難場所として利活用する提案を精緻化するため,その基礎となるNTTタウンページデータベースも購入する。さらに,データ入力に用いるCAD(Vectorworks)と簡易な画像処理ソフトを購入する。 ②謝金;全国の自治体における避難場所関連の資料収集と,京都市における避難場所の収容可能人数・道路網・代替施設のデータ入力,および資料整理を依頼する。 ③旅費;国内の歴史観光都市における避難場所,とりわけ,避難場所として指定されている寺社境内の調査を行う。また,施設容量に基づく階層型施設の最適化問題について,東京大学と慶応大学の連携研究者と打ち合わせを行うために,また,学会発表のために旅費を計上している。 ④会議費;連携研究者との打ち合わせに充当する。 ⑤論文作成費;学会論文の投稿料と,英文翻訳・校正代に充当する。
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