2013 Fiscal Year Research-status Report
非常住人口を考慮した歴史観光都市における避難場所配置の分析と提案
Project/Area Number |
24560767
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
及川 清昭 立命館大学, 理工学部, 教授 (00168840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 悟史 立命館大学, 理工学部, 助教 (00551524)
藤井 健史 立命館大学, 理工学部, 助手 (50599199)
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Keywords | 避難場所 / 京都 / 帰宅困難者 / 観光客 / パーソントリップ調査 / 寺社境内 / 帰宅流動 / 人の流れ |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に引き続き京都市における帰宅困難者の推計問題と避難場所配置の適正評価に焦点を絞り,下記のような研究を行った。 1.避難場所関連の各種データベースの再整備:京都市の広域避難場所68箇所と一時避難場所340箇所の敷地・建物ポリゴンデータ,および町丁目別の夜間人口と昼間人口分布データ,パーソントリップ調査の結果を整備した。また,京都市・都心5区(上京区・中京区・下京区・東山区・南区)の道路ネットワークデータと京阪神都市圏人の流れデータを整備した。 2.京都市における大震災時の避難所配置に関する定量的考察:京都市内で指定されている広域避難所と一時避難所配置の適正評価に関する分析を展開した。特に,今年度は,避難所の屋内空間に加え,屋外空間を活用した場合の収容可能人数を元学区単位で集計し,避難所の充足度の把握を試みた。その結果をもとに,屋内空間のみの利用では,ほぼすべての学区において著しく施設容量が不足していることを明らかにし,屋外空間も含めると収容人数は大幅に増加し,施設容量の不足は解消されることを提示した。 3.京都市における帰宅困難者数の推計:昨年度は,パーソントリップと昼夜間人口のデータから,都心5区のみを対象として,帰宅困難者数は約20万人,徒歩帰宅者数は約52万人という推計結果を得た。今年度は京都市全体に研究対象を拡大し,京阪神都市圏人の流れデータを用いて京都市外の非常住者の分布状況を推定した。その際,京阪神都市圏外の居住者を含めて推計するために拡大係数を調整し,また,人の流れデータに含まれない地点を考慮するためにカーネル密度推定法を適用して,100mメッシュごとに非常住者人口を推計した。非常住者人口は約76万人で,四条烏丸や京都駅付近に集中することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の達成度は下記の通りである。 1.避難場所関連の各種データベースの作成・整備:広域避難場所と一時避難所,昼夜間人口などの基本的なデータベースの整備は着実に進捗している。一方,観光客については,地点別の大まかな分布は整備したが,詳細なデータ自体が存在せず,何らかの場所的・時間的分布データの推定方法が必要と考える。また,避難所の代替施設として提案を目論んでいる寺社境内のデータは整備完了済みであるが,オフィスビルや公共施設のデータは引き続いて整備する予定である。データベースの作成に関しては概ね順調と考える。 2.京都市における避難場所配置の定量的評価:研究を進めていく中で,京都市では,そもそも常住者のみに限定した場合でも一時避難所の収容人数が大幅に不足していることが判明した。当初は,道路幅員と火災危険度を加味した避難ルートの提案を行う予定であったが,収容不能な避難場所へのルートを考察する意義が希薄になり,むしろ一時避難所の確保が重要な課題として浮上してきた。そのため,不足容量を解消するだけの代替施設の探求が大きな課題となった。研究目的の達成度に影響はないが,研究内容の変更が伴うこととなった。 3.京都市における帰宅困難者の推計:都心部については帰宅困難者の推計と帰宅流動シミュレーションは完了したが,推計に際しては,もともとのパーソントリップ調査やそれを加工した人の流れデータデータセットにおける常住者/非常住者人口の根本的な吟味が新たに必要となった。ただし,研究目的の達成度の点からは概ね順調と言える。 以上のようにデータ整備と解析は順調に進んでいるが,当初実施予定であった,全国の自治体における避難場所関連の資料収集と分析,および,施設容量に基づく階層型施設の最適化問題における数理的性質の解明については未着手の状況にあり,最終年度までには実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.京都市における避難場所関連の各種データベースの作成・整備:本研究での最も肝要なデータは,通勤・通学者,買物客,観光客などの非常住者の時空間分布である。今後はパーソントリップ調査・人に流れデータの結果を詳細に分析するとともに,新たに,観光客の場所的・時間的分布データの推定を試みるつもりである。 2.帰宅困難者の全国の自治体における避難場所関連の資料収集と分析:全国の都道府県と政令都市における地域防災計画の資料収集に関しては研究がやや遅れている。観光地における広域避難場所および一時避難所の種類(公園・学校・公共施設・神社・民間施設など)や収容能力等を調査する。これらのデータは学生の協力を得て精力的に調査・分析を行う。 3.施設容量に基づく階層型施設の最適化問題における数理的性質の解明:京都市においては,一時避難場所と広域避難場所というふたつの階層に分けて配置されている。このような階層型施設の最適化配置問題を,施設容量を制約条件とした最適化問題に展開し,基本的な数理的性質を明らかにする。この点の研究も遅れており,連携研究者の協力を得ながら推進する。 4.京都市における避難場所配置の定量的評価:非常住者人口分布の推定の精緻化をはかるために,パーソントリップ調査結果の再検討を新たな課題として行う。特に,昨年度までは京都駅の偏在する常住者/非常住者の吟味が不足していたため,別な資料にもあたって研究を推進する予定である。その結果に基づき,ネットワーク解析を行い,避難所収容人数の過不足を勘案しながら,必要最小施設数や優先的に整備すべき箇所の提案を行う。その研究成果は学会に発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度において,全国の自治体における帰宅困難者に対する避難場所関連の資料収集を行う予定であったが,収集作業を依頼する予定の学生が他のテーマの研究で時間を割くことができず,次年度に新たに別の学生に依頼することとした。 また,施設容量に基づく階層型施設の最適化問題における数理的性質の解明については,連繋研究者の大学に幾度か赴いて議論を深めるつもりであったが,連繋研究者が多忙であり,次年度に持ちこすこととした。 全国の自治体における帰宅困難者に対する避難場所関連の資料収集を学生に依頼して,謝金として使用する予定である。 また,施設容量に基づく階層型施設の最適化問題における数理的性質の解明については,連繋研究者と議論を深めながら実施するために,旅費として使用する計画である。
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