2013 Fiscal Year Research-status Report
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24560786
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
三浦 要一 高知県立大学, 文化学部, 教授 (70305803)
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Keywords | 民家 / 平面 / 住宅規模 / 住まい方 / 明治前期 / 徴発令 |
Research Abstract |
1.明治15年の「徴発令」と「徴発事務条例」の条文の検討;徴発令は全部で53条からなる法律であり、条文について詳細に検討を加えた。「各戸坪数」の算出には、社寺、学校などが未対象であり、徴発は何を目的とし、どのような調査が必要であったかを明らかにした。明治17年1月の東京府達丙第3号には、「民家ノ総坪数ヲ記入シ宿舎ニ充ツ可キ坪数」とある。当時、末端の行政機構であった戸長役場が、陸軍省へ提出する「徴発物件表」を作成にするにあたってどのような調査をしていたのか明らかになった。 2.「明治十六年十二月 徴發下調 相楽郡北村戸長役場」の検討;京都府相楽郡北村の戸長役場が「徴発物件表」を提出するため、現地調査で作成された下図が「明治十六年十二月 徴發下調 相楽郡北村戸長役場」であった。「徴発下調」は鉛筆書きであり、図面がフリーハンドで描かれており、判読にかなり時間を要した。図面には主屋に加えて、附属屋の記載があり、記載内容について資料批判をおこなった。 3.「徴発調綴」(京都府北村)と「家屋繪圖面」(徳島県漆川村)の比較検討;「徴発調綴」は、「明治十六年十二月 徴發下調 相楽郡北村戸長役場」の主屋を清書したものであった。「明治十七年一月一日調 家屋繪圖面」は、下図が現存しないが、徳島県三好郡漆川村戸長に提出したものであり、「徴発調綴」と同様に主屋を清書した図面が掲載されていた。2ケ村の徴発物件資料は、墨引で図面を清書し、図中に室名や畳数あるいは坪数が書き込まれている。ところが大工あるいは建築教育をうけたものが作成したとは考え難く、記載内容を比較して共通点と相違点を明らかにする。平面の分析にあたって必要な建築史研究としての資料批判をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、徴発物件資料を用いた先行研究を総括し、前近代および明治期の類例資料を全国的に調査し、過去の日本人が家屋の間取りを描いた資料には、どのようなものが現存するのかを明らかにした。つづいて、平成25年度では、徴発物件資料を作成するために、いかなる調査を実施し、どのような書類が作成されていたのかを明らかにした。徴発物件資料の作成の背景、作図技法や描法について検討を加えることで、資料的性格の一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、民家研究の資料として徴発物件資料を分析するためのマニュアルを検討する。民家を歴史的に知ろうとする建築史の分野において、徴発物件資料は失われた民家の姿を知ることができる貴重な資料である。徴発物件資料を基礎資料にして、明治前期における民家の平面の全体像、住宅規模、住まい方を分析する指標を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年3月の出張旅費が終了後に、残額が生じることが判明したが、約5,000円のため、無理に執行しなかった。 次年度は最終年度でもあり、研究に必要な文房具など、物品費として有効に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)