2012 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノウォールの構造制御による物性とその応用に関する研究
Project/Area Number |
24560807
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
橘 勝 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (80236546)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノカーボン / グラファイト / グラフェン / 燃料電池 / 非金属触媒 / ラマン分光 / 高圧合成 |
Research Abstract |
24年度は大きく分けると以下の2つの成果が得られた。 1.カーボンナノウォール(CNW)は高いグラファイト性と高い欠陥密度といった相反する性質をもっており、その構造が燃料電池用Pt担体として極めて有望であることが示されてきた。この構造上の特徴は、白金代替触媒の一つとして期待されている窒化カーボンの作製においても有望であることが期待される。そこで本研究では、窒化カーボンの生成とその触媒活性の評価を行った。生成法としては、CVD法によってCNWを生成し、その後、窒素を導入する方法(後処理)、もう一つはCNW生成時に同時に窒素を導入する方法(同時処理)の2種類の方を用いた。結果としては、どちらも明確な触媒活性を示した。特に、同時処理による窒化カーボンでは、酸素還元電流の開始電圧が0.8 Vと非常に高く、高い触媒活性を示すことがわかった。 2.これまでのCNWの成長過程の観察から、成長時の局所的な高圧状態の形成が最終的なCNWの形態や構造を左右していることがわかってきた。そこで本研究では、CNWの成長制御に向けた第一段階として、高圧下でのCNWの構造変換といった基礎物性の理解を目的とした。高圧実験では、衝撃圧縮急速冷却によるCNWの構造変換の詳細を調べた。50 GPa程度以下の衝撃圧縮から回収されたサンプルでは、特に色の変化は観察されず、黒色を示した。また、その構造は、CNWの特異な構造が壊れ、アモルファスカーボン的になることが分かった。一方、注目されることは、57 GPa以上の衝撃圧縮から回収されたサンプルでは、透明なタイル状の物質が支配的に観察された。ラマン分光法や電子エネルギー損失分光のスペクトルの特徴から、スーパーハードグラファイトと呼ばれている新物質に非常に良く似ていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境エネルギー問題の解決に向けて燃料電池応用に向けた白金代替触媒の開発は最重要課題の一つである。そこで本研究でも、白金代替触媒として期待されている窒化カーボンの生成を優先して行った。結果として、窒化カーボンの生成だけでなく高い触媒活性の観測にも成功し、研究はおおむね順調に進展しているといえる。また、一方、次年度にやることになっていたCNWの成長制御の観点からのナノダイヤモンドの生成に関しては、共同利用実験の日程が前倒しになり、24年度にスタートすることができた。また、これは新たな透明グラファイトの生成にも繋がり、予想以上の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の成果から、本研究で生成された新規白金代替触媒である窒化カーボンは今後の発展が大いに期待される。そこで、今後は、もちろん当初の研究計画と大幅な変更はないが、高触媒活性を示す窒化カーボンの生成とその電極作製を重点に研究を進める予定である。具体的には、窒化カーボンの生成条件、例えば、窒素、メタン、水素などの流量比、温度、真空度を変えて、高活性を示す生成条件を明らかにする。また、触媒活性の測定に必要なリニアスイープボルタンメトリ―法を確立する。さらに、ラマン分光法や光電子分光法によって高活性を示す窒化カーボンの構造および窒素ドープ位置の解析を行う。これにより窒化カーボンの触媒活性のメカニズムの解明を目指す。 また、これらの実用化には、ナノカーボンの構造制御や形態制御は不可欠であり、当初の計画どおり成長制御や構造変換の研究も進める。具体的には、24年度に見つけたカーボンナノウォール(CNW)の衝撃圧縮によって生成された透明タイル状物質の生成条件の検討と詳細な構造評価を行う。これらの知見は、CNWの成長制御や構造変換による新たな物質生成にも繋がり、実用化や応用研究をさらに広げると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(16 results)