2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570044
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
福原 敏行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90228924)
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Keywords | ダイサー / シロイヌナズナ / DCL3 / DCL4 / RNA干渉 |
Research Abstract |
植物には、4種類の2本鎖RNA切断酵素・ダイサーが存在し、遺伝子発現制御、トランスポゾンの転移抑制、ウイルス感染防御など多くの重要な生体反応に関わっている。本研究では、4種類のダイサーの中で、RNA依存DNAメチル化を担いトランスポゾンの転移抑制に関与するDCL3と、RNA干渉を担いウイルス感染防御に関与するDCL4の酵素活性(小分子RNA生成機構)を解析し、ダイサーの機能分化を明らかにすることを目的とした。 モデル植物シロイヌナズナの芽生え由来の粗抽出液を酵素画分、種々の長さの2本鎖RNAを基質とした生化学的解析により、DCL3とDCL4がそれぞれ24および21塩基の小分子RNAを生成することを確認し、2種類のダイサーの活性を簡便に検出する実験系を開発した。さらに、DCL3は30-50塩基の短い2本鎖RNAを好んで切断するが、DCL4は50塩基以上の長い2本鎖RNAを好んで切断すること、至適塩濃度、至適Mgイオン濃度、ATP要求性など、DCL3とDCL4の酵素化学的性質が異なることを明らかにした。このように、生体内で機能が異なる2種類のダイサー(DCL3とDCL4)は、基質の認識機構などの生化学的特性が異なることで機能分化していることが示唆された。 また、シロイヌナズナに栄養欠乏ストレスを処理し、DCL3およびDCL4の活性を測定したところ、DCL3活性は比較的安定に維持される一方、DCL4活性はイオウや窒素の欠乏で低下し、リンの欠乏で増強されるという結果が得られた。すなわち、栄養欠乏などのストレスに応答する機構にダイサー(RNA干渉機構)が関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、32Pで末端標識した50塩基程度の比較的短い2本鎖RNAを基質に用い、シロイヌナズナの粗抽出液を酵素画分として酵素反応を行うことで、簡便かつ高感度に、2種類のダイサー(DCL3とDCL4)の活性を同時に検出する技術を開発した。その結果、基質の認識機構(基質の長さ)、至適塩濃度、ATP要求性などの点で、DCL3とDCL4の酵素化学的性質が異なることで機能分化していることが示唆された。平成25年度には、この研究成果を論文として纏め、核酸科学分野で最も国際的に評価の高いNucleic Acids Research 誌 (IF: 8.278)に投稿し受理された(Nagano et al., 2014)。このように2種類のダイサーの生体内での機能分化、すなわちRNA依存DNAメチル化とRNA干渉が、2種類のダイサーの基質認識機構の違いが原因であることを示唆する興味深い結果が得られたことは予想以上の大きな進展である。 さらに平成25年度は、本研究手法の特徴、すなわち、植物組織を用いて2種類のダイサーの活性を簡便かつ高感度に検出できる点を生かして、種々のストレスを処理したシロイヌナズナを用いて2種類のダイサーの活性を検出した。この実験系では、種々のストレスがDCL3とDCL4の活性に及ぼす影響を調べることで、ストレスがRNA依存DNAメチル化とRNA干渉に及ぼす影響を解析することが期待される。この実験系により、イオウ、リン、窒素などの栄養欠乏ストレスがDCL4活性に影響を及ぼすと同時に、RNA干渉にも影響を及ぼすことが示唆された(2014年3月、日本植物生理学会)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果により、植物組織をそのまま用いてRNA依存DNAメチル化を担いトランスポゾンの転移抑制に関与するDCL3と、RNA干渉を担いウイルス感染防御に関与するDCL4の活性を簡便かつ高感度に検出できる実験系を開発した。本年度は、生殖細胞の形成および分化・脱分化におけるDCL3およびDCL4の役割を解明すべく研究を推進する。 シロイヌナズナの生殖細胞形成では、21塩基および24塩基の小分子RNAが、生殖細胞形成やトランスポゾンの抑制に重要な役割を果たしていることが報告されているが、詳細な分子機構は未解明である。イネ、トウモロコシ、アブラナ、ユリなど生殖細胞の扱いが容易な植物材料を用い、DCL3とDCL4の活性を検出することで、生殖細胞形成におけるダイサーの機能および役割分担を明らかにしたい。また、シロイヌナズナを材料に、カルスの誘導(脱分化)と再分化におけるDCL3とDCL4の役割についても解析したい。 また、生化学的手法により明らかにした2種類のダイサー(DCL3とDCL4)の基質認識機構が、細胞内においても適用できるかどうか検討する研究を推進する。シロイヌナズナからプロトプラストを調製し、種々の2本鎖RNAをプロトプラスト(細胞)に導入し、その後のダイサー活性による切断産物(siRNA)と誘導される生体防御反応(DNAのメチル化もしくはmRNAの切断)を解析する。導入した基質・2本鎖RNAの構造と生成したsiRNAのサイズや誘導される生体防御反応の関係を明らかにする。生化学的実験結果と細胞内実験系による研究成果を総合的に解析し、DCL3とDCL4の酵素活性と機能分化の関係について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費において、当初の計画よりも安価な物品を購入したため若干の次年度使用額(134,957円)が生じた。 次年度使用額(134,957円)は、次年度の物品費に繰り入れて適正に支出する計画である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] A dsRNA mycovirus, Magnaporthe oryzae chrysovirus 1-B, suppresses vegetative growth and development of the rice blast fungus2014
Author(s)
Urayama S, Sakoda H, Takai R, Katoh Y, Le TM, Fukuhara T, Arie T, Teraoka T, and Moriyama H.
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Journal Title
Virology
Volume: 448
Pages: 265-273
DOI
Peer Reviewed
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