2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
倉田 哲也 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任准教授 (50360540)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物 / 表皮細胞 / 胚軸 / 次世代シーケンサー / トランスクリプトーム / マイクロアレイ / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
本研究では、シロイヌナズナの胚軸伸長成長をモデル系にした全転写産物を対象にした次世代シーケンサーによる細胞層特異的発現解析と、それに続く体系的な高速機能解析を行い、表皮細胞層由来の成長協調化に関わる因子の同定を行う。 平成24年度は、転写解析のための形質転換シロイヌナズナを以下の通り行った。表皮細胞層特異的ATML1プロモーターおよびコントロールとして全細胞層で発現させるカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターにより、核膜局在ドメイン、蛍光タンパク質GFPおよびビオチン化認識ペプチドから成る融合タンパク質(Nuclear Targeting Fusion protein: NTF)を発現する形質転換シロイヌナズナ(ATML1::NTF、35S::NTF)を作出する。平行して、NTFをビオチンラベルするための大腸菌由来のビオチンリガーゼ(BirA)を35Sプロモーターで発現させる形質転換体(35S::BirA)も作出しておく。掛け合わせにより、表皮細胞層ラベル系統ATML1::NTF 35S::BirA、全細胞層ラベル系統35S::NTF 35S::BirAを確立した。 本研究では、表皮細胞層由来の成長協調化に関わるシグナル因子の同定を目指すものであるが、成長協調化シグナルが細胞伸長により引き起こされる物理的シグナルの可能性もあり、この場合、内部組織で濃縮している遺伝子群が想定される物理シグナルの受容に関与することも考えられる。そこで、内部組織で特異的に発現をもたらす遺伝子プロモーター(COH) の探索も平行して行い、表皮の下層で特異的に発現するCOH遺伝子を見いだし、それのプロモーターを用いたCOH::NTF 35S::BirA形質転換系統も作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形質転換シロイヌナズナを作出するための植物用発現ベクターについては、すでに、INTACT系を開発した米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのSteven Henikoff博士のグループから分与を受けたが、本研究には、このベクターを改変することが必要であり、この行程に予定以上の時間を要した。また、本実験に供する形質転換シロイヌナズナは、2つの組換え遺伝子をもつことが必要である。そのために、掛け合わせを介した植物系統の作出が必要であり、そのために半年ほどが必要であることも、年度内に計画していた発現解析が行えなかった理由である。 当初、同定出来ていなかった、胚軸の内部で、表皮と直接接している皮層細胞特異的なCOH遺伝子を同定できたことは、本研究を遂行するために大きな進展である。これは、モデル植物であるシロイヌナズナでは、多くの遺伝子の組織レベル発現解析が公表されていることが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、H24年度内に計画していた細胞層ごとの次世代シーケンサーによる転写解析をおこなう。この際に、計画には入れていなかった、内部組織(皮層)特異的な発現系統COH::NTF 35S::BirAも解析に用いる。実験は、サンプリングの簡易化と光合成関連遺伝子を解析対象から除くために、暗所で生育させた黄化芽生えを準備する。胚軸の伸長領域を切り取り、核分画を抽出する。その後、ビオチン化された核をストレプトアビジン磁気ビーズと混合し、簡易マグネット装置により回収する。ビオチン化核分画から、全RNAを抽出・増幅後、RNA-seq用のライブラリーを作製し、本学に設置されている次世代シーケンサー・GAIIxによる配列の読み取りを行う。その後の情報・発現解析を行い、胚軸における表皮細胞層特異的発現遺伝子群の一次データを取得する。 INTACTを利用した、胚軸における表皮細胞層特異的な遺伝子群の抽出後、次に、これらの抽出した遺伝子群に関して、既存の植物ホルモンや光環境に関するマイクロアレイデータ等を利用して統合的に解析を行い、成長協調化候補遺伝子群の絞り込みを行う。選抜した遺伝子群の細胞層特異性については、プロモーターGUS/GFPにより検討する。なお、アレイデータによる絞り込みが適切ではないことも考えられるので、細胞層特異的な遺伝子数に応じて、絞り込みを行わないことも検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に実施予定であった、次世代シーケンサーによるRNA-seqを行うためのRNA増幅キット、ライブラリー作成、シーケンス用の試薬・消耗品に使用する。また、以降の解析で必要な、実体顕微鏡の購入・設置をおこなう。その他には、研究に関する情報収集及び研究成果を報告するための国内外の関連学会参加に必要な旅費等に使用する。
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