2013 Fiscal Year Research-status Report
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24570051
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
倉田 哲也 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (50360540)
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Keywords | 植物 / 表皮細胞 / 胚軸 / 茎 / 次世代シーケンサー / トランスクリプトーム / シロイヌナズナ / 協調化 |
Research Abstract |
本研究では、シロイヌナズナの胚軸伸長成長をモデル系にした全転写産物を対象にした次世代シーケンサーによる細胞層特異的発現解析と、それに続く体系的な高速機能解析を行い、表皮細胞層由来の成長協調化に関わる因子の同定を行うことを目的にしている。 平成25年度は、前年度までに作成した表皮細胞層特異的な発現解析を行うための形質転換シロイヌナズナ(ATML1::NTF 35S::BirA、35S::NTF 35S::BirA)を用いて、既報の表皮細胞特異的な遺伝子による表皮細胞層の濃縮の評価実験を行った。複数回の実験で、表皮細胞層の濃縮の評価を定量RT-PCRで確認したところ、いくつかの遺伝子については、濃縮が認められたが、サンプルにより結果がばらつくことが分かった。現在、サンプルの量や実験条件の検討を行っている。 また、これらの実験と並行して、森田美代博士(名古屋大)との共同研究により、茎での異なる手法による、細胞層特異的な次世代シーケンサーによる転写解析を行い、表皮細胞層特異的な遺伝子の抽出を行った。その結果、1,000以上の遺伝子が抽出されたため、さらに、公共データーベースから、胚軸器官の伸長が盛んな、暗所において、発現上昇が観察される遺伝子を情報解析手法により抽出し、前者の表皮特異的な遺伝子とオーバーラップするものを絞り込み200弱の遺伝子を見いだした。その後、これらの絞り込みをした遺伝子の破壊株を種子ストックセンター(ABRC)より取り寄せ、体系的な胚軸とそれ以外の器官伸長も含めて、表現型を示す系統のスクリーニングを行った。現在、複数の候補株が得られており、それらの系統の遺伝子破壊状況や表現型の確認を行っている。また、これらの候補遺伝子群については、表皮細胞特異的な強制発現を行う形質転換系統の作出も行っている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、細胞層特異的な核の回収法(INTACT法)による細胞層特異的な次世代シーケンサーによる転写解析を計画していたが、本法を胚軸に適用させるためには、いくつかの条件検討が必要であることが分かった。元々、INTACT法は、シロイヌナズナの根を用いた研究に用いられていた(Deal and Henikoff, 2010)。シロイヌナズナの根の組織は、細胞破砕や核回収には適していると考えられる。一方、胚軸などの地上部の組織は、表面にワックスなどを蓄積することや、細胞壁そのものが肥厚していることなどから、細胞破砕や核回収が根と比べると難しいと考えられる。そこで、本研究においても、破砕法の検討や、核回収の効率化などを行っているが、実験間のバラツキが大きいと考えられ、個別遺伝子の定量PCRでも結果が振れている可能性が高い。 共同研究で行っていた、茎の細胞層特異的な次世代シーケンサーによる転写解析では、本研究課題とは異なる、レーザーによる細胞分取法を用いており、計画されていたように、結果を取得できた。また、当初から計画していた、他の発現解析データによる器官成長の協調化に関与する遺伝子群の候補を絞りこむことができ、現実的に体系的な遺伝子破壊株のスクリーニングを行える数にできたことが、その後の解析の高速化につながっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
INTACT法による表皮細胞層特異的な核の回収については、さらに回収法の条件検討を行う必要がある。これまでの条件検討から、胚軸組織からの核の回収における前段階の組織を物理的に、出来うるかぎり断片化していたが、そのステップが不十分と考えられる。最外層のワックスを効率よく除去するために、物理的な破砕の前に、各種界面活性剤の処理を検討する。また、現在、播種後1週間、暗所で生育させた黄化芽生えを用いているが、最外層のワックスや細胞壁の蓄積が低いことが想定されるより早い段階の芽生えを使用することも考えている。また、データのバラツキの原因のひとつと考えられる回収された核が少ないことについては、上記の条件検討に加えて、出発材料を増やすことも検討する。 共同研究で行っている表皮特異的な転写解析とそれに引き続く、体系的な遺伝子破壊株のスクリーニング後の解析を引き続き行う。これまでに得られた器官成長が不全な遺伝子破壊株に関する遺伝子群については、さらに、プロモーターレポーターによる発現確認、蛍光タンパクとの融合遺伝子を用いた解析から、局在解析を行う。また、遺伝子破壊株の組織レベルの観察を行う。また、協調化に関わる検証として、上記の遺伝子群に関する表皮もしくは内部細胞層特異的発現形質転換体を作出し、表現型を観察する。また、協調的な伸長に関わっていることの証明のためには、人為的に特定のタイミング、組織で発現誘導する系統や、組織の伸長により発現する遺伝子(細胞伸長をモニターして発現する遺伝子)の取得をこれまでのデータを再考し、行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度に記載したように、当初予定していた、研究計画のうち、次世代シーケンサーによる発現解析のための材料の確認作業が遅れたことが第一の理由である。それに伴って計画していた、形質転換植物を用いた解析や、海外学会への参加等が出来なくなった状況により、このような業務に関わる予算をやむなく、繰り越すことになった。 H26年度においては、H25年度に計画していた次世代シーケンサーによる発現解析を行う予定である。さらに、それに引き続く体系的な遺伝子機能スクリーニングを効率的に行うため、H25年度に購入した実体顕微鏡にカメラ撮影用機器をセットアップするための予算執行を行う。また、その後に計画している、より詳細な分子生物学的な解析を行うことや、国内外での成果を学会、原著論文作成を行う。また、研究実績の概要で記載した、共同研究により、得られた結果をもとにした同様な解析も並行して行う。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] WOX13-like genes are required for reprogramming of leaf and protoplast cells into stem cells in the moss Physcomitrella patens2014
Author(s)
Keiko Sakakibara, Pascal Reisewitz, Tsuyoshi Aoyama, Thomas Friedrich, Sayuri Ando, Yoshikatsu Sato, Yosuke Tamada, Tomoaki Nishiyama, Yuji Hiwatashi, Tetsuya Kurata, Masaki Ishikawa, Hironori Deguchi, Stefan A. Rensing, Wolfgang Werr, Takashi Murata, Mitsuyasu Hasebe and Thomas Laux
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Journal Title
Development
Volume: 141
Pages: 1660-1670
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Contribution of NAC Transcription Factors to Plant Adaptation to Land2014
Author(s)
Bo Xu, Misato Ohtani, Masatoshi Yamaguchi, Kiminori Toyooka, Mayumi Wakazaki, Mayuko Sato, Minoru Kubo, Yoshimi Nakano, Ryosuke Sano, Yuji Hiwatashi, Takashi Murata, Tetsuya Kurata, Arata Yoneda, Ko Kato, Mitsuyasu Hasebe, Taku Demura
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Journal Title
Science
Volume: 343
Pages: 1505-1508
DOI
Peer Reviewed
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