2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570112
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
西田 治文 中央大学, 理工学部, 教授 (70156082)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 古植物学 / ゴミ化石 / ゴンドワナ / 南極 / 植生・環境 / 古第三紀 / 白亜紀 / 国際情報交換 チリ |
Research Abstract |
平成24年度は、当初計画に沿って、a) マゼラン州産後期白亜紀~前期新生代の石灰質団塊、b) コンセプシオン州周辺の後期白亜紀~始新世の石灰質団塊、c) Cocholgueで新たに発見された始新世珪化泥炭、についてそれぞれ保管資料を整理するとともに、ピール法(Joy et al. 1953)による顕微鏡薄片標本を作製した。a)からは菌類、コケ、シダ、針葉樹、被子植物の他に、シダ種子類と同定できる雌性生殖器官を発見した。シダ種子類は中生代で絶滅したとされる裸子植物で、この発見は大きな意義がある。また、材料b)については、初めての試みとして含化石ノジュールを溶解して胞子・花粉に加えて葉の組織なども得ることに成功した。この資料からは、世界最古のナンキョクブナ属化石を発見し、ナンキョクブナ科の進化史を大きく書き換える証拠になる。新たに導入した岩石を溶解する手法は、次年度以降に発展させる。c)については多数のマスターピールを得、3種の広葉樹材、ヒノキ科、マキ科、ナンヨウスギ科針葉樹、湿地生のウラジロ科のシダなど多様な植生が明らかになりつつある。なお、南極産の資料はチリ南極研究所からの送付が遅れており、入手次第研究に着手する。 専門会社の大型X線CTスキャナによる観察は、資料の適性によってその利用を随時判断するが、本年度は該当する標本がなかったため、研究室設置の小型スキャナのみで観察し、着生シダ類の微細な根茎の立体復元画像などを得た。 成果の一部は、第13回国際花粉学会議・第9回国際古植物学会合同大会と第12回日本植物分類学会大会で発表した。なお、得られた化石資料の分類学的検討とパタゴニアの植生史解明のための情報交換を、国際会議に参加したチリのLuis Felipe Hinojosa博士らと行った。また、同様の目的の研究会を平成23年1月に国内研究協力者を中央大に招へいし行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほとんど計画通りに進行し、白亜紀後期から新生代前期のチリパタゴニアにおける植物相の解明が大きく進展している。ただ、平成24年8月23日から30日まで研究代表者が所属する中央大学理工学部において、海外54カ国470名が参加した国際学会が開催され、西田はその運営に予想以上の時間と労力を費やし、アルバイト予定の学生にも多くの支援を得たため、全体の計画と予算消化に多少の遅れが生じた。また、南極において西田が平成23年度の科学研究費基盤研究Bによる海外調査で採集した化石は、研究協力機関であるチリ南極研究所に保管されており、その送付が遅れているために、研究は未着手である。南極研究所からは資料送付を始めるという返答が平成25年5月に届いたので、今年度以降の研究計画に支障はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績欄に記載したa, b, cの各資料について、前年度の研究手法を原則として継続する。ピール法(Joy et al. 1953)による顕微鏡薄片標本を作製する。また、石灰質ノジュールを酸で溶解して植物組織や胞子・花粉を取り出す試みをさらに進める。石灰質ノジュールの酸による溶解と、珪化泥炭(c)のピール作成にはドラフト内での作業が不可欠である。作業には協力者を用いるが、それぞれ別のチームとして作業する。ピール標本は封筒に入れてロッカーに、作製したプレパラートは専用の標本箱に保管し、顕微鏡による観察に供する。包埋以前のピールフィルムは、必要に応じて走査型電子顕微鏡で観察する。観察画像はデジタルカメラで撮影し、画像ファイルとして保存する。立体構造が良く保存された材料や、岩石内部の予察が必要な資料については、X線CTスキャナによる観察と化石の3D復元を行う。大型の資料や、高解像度の画像を得る必要 がある場合は、専門の会社が所有する大型スキャナで観察する。珪化が進行した資料はピール法が使えないため、岩石薄片法によりプレパラートを作製する。 資料の同定には専門の研究協力者に依頼する場合もある。また、情報交換のために研究協力者を集めた研究会を少なくとも1度開催する。 化石の新種など新分類群が発見された場合は、タイプ標本は原産国であるチリに返還する。それ以外の資料とプレパラートは中央大学に保管するが、将来は国立科学博物館に移管する。 これまでのパタゴニアにおける鉱化化石の先行研究で明らかになった研究成果と新発見の鉱化泥炭資料についての予察結果は、9月にチリのLa Serena で開催される 第7回CONGRESO LATINOAMERICANO DE CIENCIA ANTARCTICA と国内学会等で発表し、英文学会誌に成果の一部を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究推進方法は前年度と基本的に同じであることと、平成24年度には作業の遅れが生じたことから、研究遂行のための消耗品やアルバイト謝金などに使用する。
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