2014 Fiscal Year Research-status Report
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24570124
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
若松 馨 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40222426)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | GPCR / Gタンパク質 / 抗体 / 安定化 / スルホベタイン / cis-trans異性化 / メカニズム / リフォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体とGPCRの安定化は創薬の更なる発展に必須である.申請者はスルホベタインが両者を安定化する予備的知見を得ていたので,安定化効果を詳細に解析し適用範囲と限界を見極めることを本研究全体の目的とした. H26年度に予定していた課題は,(1) 抗体の安定化,(2) GPCRの安定化, (3) Gq/m3の共結晶, (4) メカニズム解析,の4つである. (1) 撹拌刺激による抗体の凝集体の形成とシリコンオイルによる促進を再現性良く促進・検出する系を前年度に作成していた.今回,新たな凝集体形成反応を試みたが,その方法でも同様の結果が得られた.また,抗体はシリコンオイルの表面に吸着した状態で凝集している可能性が示唆された. (2) NDSBがm2-receptorを安定化することを見出していたが,従来の結果は膜画分のreceptorについて得られたものだった.今回,精製や結晶化に必要な可溶化状態での安定化について調べた.界面活性化剤で可溶化すると,m2-receptorは速やかに失活するが,NDSBは可溶化状態のm2-receptorも強力に安定化できることを明らかにした. (3) 今年度はGq/m3の共結晶の作成を予定していたが,Gi/m4の共結晶が得られていない状況では困難であると判断し,Gi/m4複合体形成に重要な残基の同定を試みた.従来,VTIF motifが特異性に重要であると考えられていたが,特にIF(IleとPhe)が重要であることが確認された.またVTの2残基N末端側のArgも重要であることが明らかとなった. (4) Xaa-Pro結合のcis-trans異性化はタンパク質フォールディングの律速段階の1つであり,異性化を促進する化合物はフォールディングを促進する可能性が高い.Gly-Proジペプチドを用いて,cis-trans異性化速度をNMRで効率的に定量する系を作成した.その結果,NDSB-256はcis-trans異性化を濃度依存的に促進する事が明らかとなった.この異性化促進効果がNDSB-256のリフォールディング促進活性に寄与している可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 抗体の安定化: 凝集防止について研究する際のボトルネックは凝集体を効率良く・再現性良く作成する方法がないことであった.我々は1時間以内という短時間で効率良く,かつ,再現性良く凝集体を形成させることに成功し,危険性が懸念されていたシリコンオイルが凝集を促進する事も確認した.しかし,この方法は従来の方法とはかなり異なるので,そのバリデーションが必要と考え,2つの方法の中間の新しい方法を試みた.その結果,新しい方法でも再現性良く凝集体形成のシリコンオイルによる促進を確認できた.またこの新しい方法は多数のサンプルを同時に処理できるので,抗体の凝集防止に役立つ安定化剤のスクリーニングが今後,効率的に行えると期待される. (2) レセプターの安定化: レセプターは界面活性化剤で可溶化すると,不安定になる.ドラッグデザインにおいては,レセプターを可溶化・精製・結晶化することが必須であるので,可溶化状態での安定化が重要である.NDSBが精製・結晶化と同等の可溶化状態でもレセプターを強力に安定化したことから,NDSBはドラッグデザインに大いに役立つと期待される. (3) Giαとm4-receptor部分ペプチドとの生理的な複合体を再現性良く形成させる方法が確立できたので,複合体形成に必要な残基の同定をおこなった.その結果,従来予測されていたVTIFモチーフの中でも特にIFが重要である事,従来見過ごされていたArg残基も重要である事が明らかとなった. (4) Xaa-Pro結合のcis-trans異性化はタンパク質フォールディングの律速段階の1つであり,異性化を促進する化合物はフォールディングを促進する可能性が高い.cis-trans異性化速度をNMRで効率的に定量する系を作成し,リフォールディングを促進するNDSB-256が異性化も促進する事を確認した.この系はリフォールディング促進剤のスクリーニングにも利用できる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) H25, 26年度に作成した凝集体の形成手法と検出手法を用いて,スルホベタインが抗体の凝集を防止するかを確認する.また抗体の凝集を防止する試薬をスクリーニングする.また,スルホベタインが凝集体の免疫原性を低下させるかも確認する. (2) 今までの方法で得られているGi1αとm4レセプター部分ペプチドの複合体は1:1ではなく,多量体を形成しているので,このままでは単結晶の作成が困難である.そこで,コンストラクトを変更し,1:1複合体を得ることを試みる. (3) スルホベタインはリフォールディングで頻用されているアルギニンよりも優れたリフォールディング促進作用を示すことがある.そこで,スルホベタインとアルギニンが示す種々の効果を比較することにより,そのメカニズムを明らかにする.
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Causes of Carryover |
26年度にスルホベタインを利用してGi1αとm4レセプター部分ペプチドを含む融合蛋白質との複合体の結晶構造を決定する予定であった.生理的な複合体の作成には成功したが,部分ペプチドの凝集性の高さから結晶は得られていなかった.NMRで部分ペプチドの状態を解析したところ,イオン強度等を調節することで単量体にできることがわかった.また,1:1複合体を形成させられるGi1αの新しいコンストラクトのアイデアも得られた.NMRよりもX線結晶解析の方が得られる情報が多いので,NMRサンプル調製の費用を結晶作成に充てることにした.そこで,未使用額が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Gi1αとm4レセプター部分ペプチドの共結晶の作成と解析に使用する.
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Research Products
(5 results)