2012 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染症克服に向けた糖鎖機能改変による革新的感染制御
Project/Area Number |
24570168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
左 一八 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (20260226)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖鎖生物学 / 感染症 |
Research Abstract |
本研究は,デング・日本脳炎ウイルス病態発現の分子機構の解明および感染症制御に有用な物質的基盤を構築することを目的としている。平成24年度において以下の項目について研究を実施し、成果を得た。 1.糖鎖機能改変プローブを用いたデング・日本脳炎ウイルス感染機構の解明: グルコース転移酵素阻害剤であるPDMPを用いてウイルス増殖阻害効果を検討した。PDMPは両ウイルスの増殖を阻害した。ウイルス感染後期の過程において作用していることが示唆された。糖脂質が両ウイルス感染にとって必須の分子であるかどうかを糖脂質欠損マウス胎児由来繊維芽細胞を用いて検討した。その結果、ウイルス侵入効率に違いは認められない一方で、細胞外へのウイルス粒子の放出に著しい低下を認めた。以上のことから、細胞内糖脂質が両ウイルスの増殖に必須であることが示されるとともに、ウイルス粒子の成熟、細胞外放出に重要な役割を担っていることが示唆された。 2.新規糖鎖機能改変プローブの探索・性状解析: 食用キノコの抽出液から抗DENV、抗JEV活性を有する化合物の探索をおこなった。その結果、オオヒラタケ熱水抽出物中にきわめて高い抗デングウイルス活性を検出した(IC50値=約0.01mg/ml)。当熱水抽出物の感染阻害効果はウイルス感染後の細胞を処理することによって認められたことから、ウイルスの複製過程を阻害していることが示唆された。 3.ウイルスNS1 タンパク質修飾糖鎖の構造と機能解析: 感染個体においてDENVタンパク質の一つであるNS1が糖鎖修飾を受けた後、ウイルス血症に先行して血中濃度が上昇すること、その濃度と重症度(デング出血熱)が相関することが知られている。NS1タンパク質上の修飾糖鎖構造をレクチンブロット法により解析した。糖鎖のシアル酸残基が標的細胞への結合に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究の目指すところは感染過程におけるウイルス-宿主因子間相互作用を介した病態形成機構を解明するとともに感染症制御に有用な物質的基盤を構築するものである。本年度、実施した研究の成果の概要は以下のようにまとめられる。 (1)細胞内糖脂質がデングウイルスならびに日本脳炎ウイルスの増殖に必須であることが示されるとともに、ウイルス粒子の成熟、細胞外放出に重要な役割を担っていることが示された。従来、細胞内糖脂質がウイルス粒子の成熟・細胞外放出に直接かかわる知見はなく、今回得られた成果は、新たなウイルス感染機構を示唆するものである。さらに、糖脂質生合成過程が両ウイルスに対する薬剤の新たな標的となる可能性が示され、現在臨床で有効な薬剤がない両ウイルス感染症に対する新たな薬剤開発の可能性が示されたと考えている。 (2)天然資源としての食用キノコの中から極めて高い抗デングウイルス活性を示すものを見出した。熱水処理により容易に抽出できることから、熱安定性があること、ウイルス感染後期過程に作用することから、本抽出液中に含まれる成分が、新たな抗デングウイルス剤リードなる可能性が高いと考えている。 (3)NS1タンパク質について、130番のN-結合型糖鎖がNS1のHeparinに対する結合に対して抑制的に機能すること、その糖鎖末端に特徴的にシアル酸が付加されていることを明らかにした。シアル酸に依存した細胞への結合・取込み機構が存在する可能異性があると考えている。NS1の肝細胞への取込は、デング出血熱への重篤化にかかわる可能性が報告されており、NS1に付加されたシアル酸含有糖鎖依存的に取込む新たな分子の存在が示唆された。 以上、本年度における研究実施については、当初の目的に沿った成果が得られ、研究全体の目的に対して概ね予想通りの成果を上げることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、平成25年度当初より所属研究機関が変更となった。研究環境が従来から変化したが、代表者の従来所属していた静岡県立大学薬学研究院同研究室の鈴木隆教授の協力を得ており、研究実施場所の確保および研究実施方法等に大きな影響は生じていない。さらに代表者は静岡県立大学規程に基づく客員教授として同研究室の大学院生の指導の継続が保証されており、さらに連携研究者との共同研究も鈴木教授の同意のもとで継続実施が可能である。従って平成25年度は当初の研究計画どおり、連携研究者とともに以下の研究項目を実施する。 ・糖鎖機能改変プローブの分子最適化 ウイルス増殖阻害作用を有する糖鎖機能制御プローブをリードとして機能改変候補化合物を化学合成し、評価する。合成されたプローブ分子と標的タンパク質複合体構造を連携研究者が新たに開発した新規分子モデリング・シュミレーション法を用いて複合体構造を解明するとともにより有効性の高いプローブ分子への構造最適化を行う。 ・受容体糖鎖改変マウスを用いたウイルス感染機構の解明 研究代表者はコンドロイチン硫酸E(CSE)と呼ばれる糖鎖分子がDENV、JEVに対する受容体活性を有することを見出した研究協力者が作出したCSE-KOマウスを用いて、in vivoにおけるCSEのウイルス感染における機能を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] No evidence of horizontal infection in horses kept in close contact with dogs experimentally infected with canine influenza A virus (H3N8).2012
Author(s)
T. Yamanaka, M. Nemoto, H. Bannai, K. Tsujimura, T. Kondo, T. Matsumura, M. Muranaka, T. Ueno, Y. Kinoshita, H. Niwa, K.I.P.J. Hidari, T. Suzuki
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Journal Title
Acta Vet. Scand.
Volume: 54
Pages: 25
DOI
Peer Reviewed
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