2013 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染症克服に向けた糖鎖機能改変による革新的感染制御
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24570168
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Research Institution | The University of Aizu Junior College Division |
Principal Investigator |
左 一八 会津大学短期大学部, その他部局等, 教授 (20260226)
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Keywords | 糖鎖生物学 / 感染症 |
Research Abstract |
平成25年度において以下の成果を得た。 1.糖鎖機能改変プローブの分子最適化 デングウイルスEタンパク質との結合およびウイルス増殖阻害作用が明らかにされているオクチルグルコシドをリードとして糖鎖機能制御プローブ誘導体ライブラリーを新たに構築した。このライブラリーからデングウイルス感染阻害活性を指標に探索を行った結果、Octyl-2-O-sulfo β-D-glucuronic acidを機能改変候補化合物として同定した(IC50値=約0.1 mM)。さらにX-線結晶構造解析データ(PDB: 1OKE)を利用して、デングウイルスEタンパク質上の疎水性ポケットに対するこの化合物の相互作用について熱力学的シュミレーションをはじめとするコンピュータモデリング手法を行い、阻害化合物とEタンパク質上のアミノ酸との相互作用を分子レベルで明らかにするとともに、膜融合を標的とする新規抗デングウイルス剤リードであることを示した。 2.受容体糖鎖改変マウスを用いたウイルス感染機構の解明 CSEは哺乳動物の生体内に広く分布しており、脳内では神経細胞に特徴的に発現している。生体内でのCSEの日本脳炎ウイルス感染における機能を解明するため、CSE合成酵素遺伝子欠損(CSE-KO)マウスに対する日本脳炎ウイルス感染を行った。CSE-KOマウスはヘテロマウスを交配させることにより取得した。3週令のCSE-KOマウスおよびその野生型Balb/cマウスに対して、麻酔下、日本脳炎ウイルスを頭蓋内に接種した。マウスの感染後の体重変化のモニタリング、行動観察および生存率測定を行った。その結果、CSE-KOマウスでは有意差は得られなかったものの野生型マウスに比べて生存率の延長傾向が認められた。CSEは脳神経系へのウイルス指向性に関与するのではなく、ウイルス感染に対する防御的な因子として機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究の目指すところは感染過程におけるウイルス-宿主因子間相互作用を介した病態形成機構を解明するとともに感染症制御に有用な物質的基盤を構築するものである。本年度の研究成果の達成度は以下のようにまとめられる。 (1)糖合成化学およびコンピュータ科学の技術・知見を連携させることにより、デングウイルスの細胞内侵入阻害剤の創出を行った。独自に作成した糖誘導体ライブラリーから、ウイルスにより誘導される膜融合を制御することでウイルス感染を効率的に阻害できる新規ウイルス増殖阻害化合物を同定した。本化合物は、デングウイルスの流行を有効に阻止するための抗デングウイルス剤リード化合物になると考えている。さらに本化合物の作用機序解析から、未だ十分に解明されていないデングウイルス感染初期過程におけるウイルス膜―宿主細胞膜間融合機構の分子レベルでの解明に貢献した。 (2)遺伝子改変マウスを用いて、デングウイルスならびに日本脳炎ウイルス結合性糖鎖分子であるコンドロイチン硫酸E(CSE)のウイルス感染にかかわる機能解明を試みた。CSE欠失マウスにおける日本脳炎ウイルスの脳内感染は、野生型マウスに比べて感染が阻害される傾向が認められ、本糖鎖分子は生体内におけるウイルス感染防御に寄与していることが示唆された。生体内糖鎖分子のフラビウイルス感染における機能を動物レベルで理解することに貢献した。 以上、本年度における研究達成度について、当初の目的に沿った成果が得られ、研究全体の目的に対して概ね予想通りの成果を上げることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、平成25年度より所属研究機関が変更となった。研究環境が従来から変化したが、代表者の前所属である静岡県立大学薬学研究院との協働体制を維持することで、大きな支障を生じることなく研究を実施した。さらに本課題研究の連携研究者と順調に研究を継続実施するとともに、連携強化に努めた結果、当初の目的に沿った成果を挙げることができた。平成24年度からの2年間で実施した研究では当初どおりの成果を挙げてきており、研究計画は順調に進行しているといえる。研究計画最終年度では、本研究の目的を達成するため、強化してきた共同研究者らとの連携を活用して研究を実施する。平成26年度においても当初計画どおり、以下の研究項目を実施する。 ・分子最適化プローブを用いたin vivo感染制御 糖鎖機能制御プローブの構造最適化をさらに進めるとともに、最適化化合物を用いて、標的糖鎖改変によるウイルス増殖性への影響を、DENV、JEVマウス感染モデルを用いてin vivoで評価する。 ・高病原性ウイルスによる動物感染モデルを用いた日本脳炎ウイルス神経組織指向性の解明 研究代表者はコンドロイチン硫酸E(CSE)と呼ばれる糖鎖分子がDENV、JEVに対する受容体活性を有することを見出した。研究協力者である感染症研究所高崎・田島らはJEVの1アミノ酸変異によりマウスに対して強毒性を示すJEV株を分離し、その性状を明らかにしている[Tajima, S, et al. Virology 396, 298-304 (2010)]。研究代表者はJEV強毒性株と弱毒性株とでCSE糖鎖分子に対する結合性に違いがあることを見出している。そこでJEV強毒化の分子機構をCSE-KOマウスを用いてin vivoで評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品購入支払いに際して端数が生じた。 次年度補助金に加算して研究計画に従い適正に使用する。
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[Journal Article] Improvement of Depression-Like Behavior and Memory Impairment with the Ethanol Extract of Pleurotus eryngii in Ovariectomized Rats.2013
Author(s)
Akira Minami, Hiroshi Matsushita, Yuuki Horii, Daisuke Ieno, Yukino Matsuda, Masakazu Saito, Hiroaki Kanazawa, Yuriko Ohyama, Akihiko Wakatsuki, Atsushi Takeda, Kazuya I.P.J. Hidari, Vikineswary Sabaratnam, Takashi Suzuki
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Journal Title
Biol. Pharm. Bull.
Volume: 36
Pages: 1990-1995
Peer Reviewed
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