2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム情報を書き換えてストレスに対抗する植物のしくみの解明
Project/Area Number |
24580016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
土生 芳樹 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (80266915)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イネ / トランスポゾン / エピゲノム / 環境ストレス |
Research Abstract |
ゲノム塩基配列が決定・公開されているイネ日本晴系統で確立したDDM1遺伝子ノックダウン系統を数世代に亘って自殖させ、ゲノムワイドな低メチル化状態を安定に維持する系統を確立した。この系統から抽出したDNAを用いて、次世代シーケンサー解析により多数の挿入・欠失を検出した。検出された挿入・欠失の多くはトランスポゾンが関係しない構造変化であり、日本晴系統内多様性(リファレンスゲノムとして公開されている日本晴系統のゲノム塩基配列と各研究機関で維持されている日本晴系統のゲノムの構造的差異)に由来するものだった。一方で、一部の挿入・欠失については、トランスポゾン挿入に伴う標的重複配列や脱離時に形成されるフットプリントの存在からDNA型トランスポゾンおよびレトロトランスポゾンの転位に由来するものと推測され、解析に用いたDNA中でトランスポゾンンの挿入・脱離がキメラの状態で検出されたもの(サンプルとして用いた体細胞中で挿入・脱離が起きているもの)も存在した。体細胞キメラの状態で検出されたトランスポゾンのうち、DaiZ10と呼ばれるhAT型トランスポゾンは、解析に用いた低メチル化系統で極めて強く活性化されていることが明らかになったが、しかし、コントロールとして用いた他の形質転換体でもDaiZ10の活性化が認められ、イネの形質転換法で用いるカルス形成(脱分化)の過程で活性化され、植物体に再分化した後も活性化状態が維持されていることが示された。シロイヌナズナ特定のレトロトランスポゾンを活性化することが明らかになっている熱ショックではDaiZ10の活性化は認められなかった。低メチル化系統で活性化されたDaiZ10の一部について、メチル化状態をバイサルファイト法により解析したが、これまでに明確な脱メチル化を受けている領域は見つかっておらず、さらに領域を広げたメチル化解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネ低メチル化系統トランスポゾンDaiZ10の転位が検出された。DaiZ10の活性化は低メチル化系統以外の形質転換イネでも認められ、イネの一般的な形質転換に用いられる脱分化誘導条件下で活性化されること、さらには植物体の再分化後にも活性化状態が維持されていることが示された。イネの挿入変異の原因因子として広く利用されているレトロトランスポゾンTos17も長期間のカルス培養で活性化されることが知られているが、DaiZ10はTos17よりも脱分化過程の早い時期で活性化される可能性が考えられた。DaiZ10は植物体再分化後にも高い活性化状態を維持している極めて稀なケースと考えられた。一方で脱分化過程以外にDaiZ10を活性化する環境ストレス条件はこれまでに見つかっておらず、放射線処理等のゲノムストレスについても今後解析を進める。低メチル化系統については、ゲノムワイドなメチル化解析(BS-seq)を行い、グローバルなメチル化状態のデータを取得した。さらに、不活性クロマチンの指標となるジメチル化9番リシンヒストンH3に対する抗体を用いたゲノムワイドなクロマチン免疫沈降解析(ChIP-seq)を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
脱分化過程で活性化されることが明らかになったDaiZ10については、脱分化誘導から植物体再分化の期間を通してのメチル化状態の活性化の経時変化を解析し、同様に脱分化過程で活性化されることが知られているTos17との比較を行う。現状ではDaiZ10の一部の領域についてのメチル化解析データのみしか得られていないため、さらに対象領域を拡大してメチル化状態の解析を行う。DaiZファミリーに属するトランスポゾンはイネゲノム中に複数あるため、低メチル化・脱分化過程で他のDaiZファミリーのトランスポゾンが活性化されているか否かを解析する。DaiZ10の活性化を誘導する環境ストレス条件について、放射線処理等を含む広範囲な条件検討を進める。体細胞におけるDaiZ10の脱離が次世代に伝わる頻度についての解析を進め、イネの一般的な形質転換条件が世代を通したゲノムの構造的変化を誘導する頻度を見積もる。 次世代シーケンサ-を用いたイネ低メチル化系統ゲノムのInDel解析では、トランスポゾンに依らない構造多様性が多数検出され、解析に使用している日本晴系統とレファレンスゲノムとの間の系統内多様性が存在することが明らかになった。現状では、これらの系統内構造多様性に由来するInDelの存在が効率的な低メチル化系統におけるトランスポゾンの転位検出を妨げている。そこで、低メチル化系統を作製した野生型日本晴系統そのもののゲノムを次世代シーケンサーにより解析し、リファレンスとして用いることで、低メチル化系統における新規なInDelの検出感度を向上させ、更なる活性トランスポゾンの検出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画に従い、消耗品購入、学会発表・情報収集のための国内外出張等に研究費を使用する。
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[Journal Article] DDM1 (Decrease in DNA Methylation) genes in rice (Oryza sativa).2012
Author(s)
Higo H, Tahir M, Takashima K, Miura A, Watanabe K, Tagiri A, Ugaki M, Ishikawa R, Eiguchi M, Kurata N, Sasaki T, Richards E, Takano M, Kishimoto N, Kakutani T, Habu Y
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Journal Title
Molecular Genetics and Genomics
Volume: 287(20)
Pages: 785-792
DOI
Peer Reviewed
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