2013 Fiscal Year Research-status Report
ライシメーター法による実大樹木の蒸散量計測によるヒートアイランド対策への展開
Project/Area Number |
24580062
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Research Institution | Organization for Landscape and Urban Green Infrastructure |
Principal Investigator |
手代木 純 公益財団法人都市緑化機構, その他部局等, 主任研究員 (70537026)
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Keywords | ライシメーター / ヒートアイランド対策 / 実測 / 蒸発散量 / 都市緑化樹木 / ケヤキ / ポロメーター / リーフカット法 |
Research Abstract |
緑化植物による蒸発散量の推定や放射熱量の定量的な緩和効果について、基礎的データの蓄積を図ることは大変重要な課題であるが、高木を単木で蒸発散量を実測した研究成果はこれまで見られなかった。そこで本研究は,重量法による高木の蒸発散量の実測を通年で行い,また今後、これまでに行われてきた他の手法との比較を行い、実測値との比較、検証を行う。得られた値は高木だけでなく、低木、地被植物との精度の高い比較が出来るほか、植栽密度による蒸発散量の効果の比較の貴重な基礎データとなる。 (1)試験体の管理 平成24年度に設置した以下の試験区の管理を行った。日射遮蔽のない平坦な圃場に高木の植栽用のコンテナを2基設置し,うち一基にケヤキを植栽し,もう一方のコンテナは植栽せずに比較対照区とし、あわせて土壌表面からの蒸発量を測定した。 (2)測定 ライシメーターを用いた重量法による蒸発散量の実測を連続して実施して,通年の重量変化から、季節毎の傾向を把握する。また、樹冠面積、気象データ及び蒸発散量との相関の大きい土壌水分、PAR(光合成有効放射)を計測し、突き合わせた。また別途共同研究先の協力を得て,実験場所周辺の微気象を3次元超音波風速計を用いて計測した。 重量計の結果から,樹木の重量変化,すなわち樹木による蒸発散量が詳細な数値で変化する様子が確認できると共に,他の気象条件等からの影響等を考察した。 (3)比較測定 上記のコンテナ樹木の重量変化の実測に以下の手法による蒸発散量の実測と比較測定を加え,特に夏季の蒸発散量を詳細に計測した。 1)ポロメーターによる推計法 ポロメーターを用いた葉面からの蒸散速度を計測する,2)リーフカット法 葉をカットし、一定時間経過後の重量減分で蒸発散量を推計。またLAI(葉面積指数)を計測し、樹木全体での蒸発散量を推計するとともに,全葉枚数を数え,全葉面積量を算出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑化植物による蒸散量の推定や放射熱量の定量的な緩和効果について、基礎的データの蓄積をはかることは大変重要な課題である。本研究は,重量法による高木の蒸発散量の実測を通年で行い、これまでに行われてきたポロメーターによる推計法等による計測を行い、年間を通じた高木(成木)一本の蒸発散量を明らかにする。 本研究における最大の特徴は,実大樹木の重量を実際に計測することであり,そのために必要な大型重量計および供試体は当初の目論み通り作成できた。実験を行っている圃場に,実験に最適なサイズの樹木が無かったが,前倒し支払請求することとし,所期の目的の設備を設置することが出来た。 なお,申請時点より不足する部分については,一部の機器購入の見合わせおよび連携研究者の追加による共同研究を今後進め,これにより3次元超音波風速計を用いた風速測定を共同研究グループと実施した。またポロメーターについては,所有機材のバッテリーの入れ替えにより使用が可能となった。 計測データについても,順調に収集することが出来,特に夏場では最大で一日あたり44.6kgの蒸散が見られるなど,成果が上がりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)測定 一対の試験体の,通年の重量変化を求め、季節毎の傾向や気象変化による傾向を把握する。また、樹冠面積、気象データ及び蒸発散量との相関の大きい土壌水分、PAR(光合成有効放射)を計測し、突き合わせる。 (2)比較測定 昨年度実施事項のうち,特にポロメーターの測定を中心に比較測定を加え,特に夏季の蒸発散量を詳細に計測する。 このほか,別途共同研究先の協力を得て,実験場所周辺の微気象を3次元超音波風速計を用いて計測する。 (3)実測結果のヒートアイランド対策への展開 実測で得られた結果を基に、樹木の配植の違いによるオアシス効果について、実際の高木での結果を用いて当てはめる。さらに、都市内に多く存在する民有地の樹木に関する都市のヒートアイランド緩和策に繋がる有効な高木の配置や密度を今回の実測値から推計することが可能となる。さらに都市のヒートアイランド対策上有効とされる、「風の道」計画への樹木の適用や応用、展開についても検討する。さらに得られた成果を、国内学会および国際会議を念頭に研究成果を発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度実施事項のうち,必要機材の使用をリース等により計画したが,共同研究者等の機材を借りることにより使用額を減らすことが出来た。今後,共同研究者の交通費を次年度に確保することにより,次年度における円滑な測定を計画している。 主に圃場への往復や対外発表のための交通費,消耗品の交換等に充当する。
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