2012 Fiscal Year Research-status Report
新規キチン分解酵素を用いたキチン質バイオマスからの有用糖質素材の生産
Project/Area Number |
24580107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
下坂 誠 信州大学, 繊維学部, 教授 (90187477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 悟朗 信州大学, 繊維学部, 准教授 (70252070)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | キチナーゼ / キチン / N-アセチルグルコサミン / キチン結合ドメイン / 糖質加水分解酵素 |
Research Abstract |
未解明であった7遺伝子(chiA, chiB, chiH, chiJ, chiK, chiM, chiO)について、大腸菌を宿主に発現させた結果、ChiA, ChiB, ChiH, ChiM, ChiOの5種の組変え酵素は通常報告されているエンド型キチナーゼと類似した分解様式を示した。一方、ChiJとChiKについては、N-acetyl-D-glucosamine (GlcNAc)6量体に対する反応生成物を分析した結果、新しく生じた還元末端はβアノマー配位であることから保持型の分解様式を示すことがわかった。また、このときGlcNAc2量体を優先的に生成し、さらに不溶性のコロイダルキチンを基質に用いた場合にも反応初期からGlcNAc2量体が蓄積した。以上の結果より、ChiJ, ChiKはエンド型反応よりも、非還元末端側から連続的にGlcNAc2量体を切り出すprocessive型の反応特性がより強い酵素であることを明らかした。 ChiGはエンド型の分解様式を示しながら最終産物としてGlcNAcのみを与える新規な性質を示した。GlcNAc6量体に対する分解反応初期生成物をHPLC分析した結果、両末端側のグリコシド結合の分解によりGlcNAc単量体を生じていた。通常のエンド型キチナーゼの分解反応進行には、切断点の両側に最低2個のGlcNAc残基の存在が必要であるが、ChiGの場合は1個でも許容する柔軟性を示した。また、ChiGにはファミリー18キチナーゼの触媒中心モチーフ配列Asp-X-Asp-X-Gluが保存されていた。これら3つの酸性アミノ酸残基に点突然変異を導入した結果、Glu残基の変異でのみ活性が大きく低下したことから、本残基が活性中心であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未解明の7遺伝子がコードする酵素タンパク質の機能解明は順調に終了した。その中の2遺伝子(chiJ, chiK)がprocessive型の反応特性を示す酵素をコードすることが明らかとなった。本研究対象のChitiniphilus shinanonensis SAY3株は15個の多種多様なキチン分解関連酵素を産生することで、キチンの効率的な分解利用を可能にしているという推察が裏付けられた。 ChiGが示した最終反応生成物としてGlcNAc単量体のみを与えるという新規な性質に関して、反応メカニズムの点から新たな考察を加えることができた。ChiGを用いることにより、キチンから1段階反応でGlcNAcを生産することが可能であり応用面でも価値が高い酵素と言える。既に本酵素および本酵素を用いたGlcNAc生産法について特許出願を行った。 当初計画にあるChiLの糖転移活性を用いた3量体以上のGlcNAcオリゴ糖の生産については、検討を行ったものの生成量は微量であり実用性はないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.C. shinanonensis SAY3株ゲノムDNAのドラフトシークエンスを委託分析により獲得した。現在、遺伝子アノテーションの作業中であるが,約50%の解析を終えた段階で3個の新たなキチン分解酵素遺伝子を見出した。これら新たな遺伝子も機能解析の対象に加えていき、SAY3株キチン分解系全容の解明につなげていきたい。 2.機能未知であるchiF遺伝子を大腸菌で発現させた組換えタンパク質について、キチン基質に対する作用を調査する。特に基質キチンの結晶構造の変化に注目し、電子顕微鏡観察や物理化学的測定により評価する。 3.グラム陰性広宿主域プラスミドを用い、大腸菌からC. shinanonensis SAY3株へ接合伝達が可能であることを確認した。SAY3株内で自律複製能を持たないプラスミドを用い、挿入断片とゲノム間の相同組換えを起こさせることにより特定遺伝子を破壊する実験系を構築する。手始めに機能不明なchiF遺伝子を破壊し表現型の変化から本遺伝子産物の機能を調査する。 4.酵素ChiGはキチンから1段階反応でGlcNAcを産生する有用な性質を示した。しかし、 GlcNAc2量体から単量体への分解反応速度が著しく遅いのが産業利用に際して不都合である。この点の解決を目指して、chiG遺伝子へランダム変異を導入し、2量体分解速度が上昇した変異酵素をスクリーニングする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため次年度使用額が生じた。今年度の実験計画には、遺伝子へのランダム変異導入、組換えタンパク質の発現、特定遺伝子の破壊など、遺伝子工学実験関連キット類を必要とする実験が含まれる。生じた次年度使用額はこれらを購入する物品費に充当する予定である。
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Research Products
(7 results)