2012 Fiscal Year Research-status Report
新世代衛星測位システムを用いた森林測量の測位精度および作業効率の向上
Project/Area Number |
24580219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
吉村 哲彦 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40252499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 森林測量 / GPS / GLONASS / 測位試験 / GNSS |
Research Abstract |
森林測量分野において今後の利用拡大が見込まれる新たな衛星測位システム「GLONASS」「準天頂衛星」の測位試験を行うための試験サイトを島根大学三瓶演習林内に2ヶ所設定した。この試験サイトは従来林業界で多用されていた1周波(L1)GPS受信機用のものとは異なり、精密な測位誤差を評価する必要があるため、上空が開けた場所に国土地理院の電子基準点を用いて網平均によって基準点を設置して、そこからトータルステーションを使ってセンチあるいはミリの精度を検証できるようにしている。さらに、魚眼レンズを使った撮影によって、信号受信の障害となる樹冠の状況を画像で取得している。本年度はこの試験サイトにおいて「GLONASS併用システム」の測位誤差を検証するためのフィールド試験を行った。GLONASSはロシアの衛星測位システムで、かつては衛星数が少なかったため実用的に利用できなかったが、近年衛星の打ち上げが進み、米国のGPSと併用したハイブリッド型GNSS受信機の低価格化も進んでいる。GLONASSは我が国の森林・林業分野ではまだほとんど利用が進んでいないが、この方法を用いれば斜面や樹木が障害となってGPSの信号が捕捉できないという森林測量において現場が抱えている問題が解決できる。フィールド試験の結果、GLONASSを用いることで測位衛星数が大幅に増え、測位誤差についても若干の改善が見られた。このとき複数のGNSS受信機を十字状に配置して、個々の受信機の誤差をキャンセルすることによって、測位誤差が大きく改善できることもあきらかになった。この成果はクロアチアで開催された国際会議で「Improvement of autonomous GPS accuracy with the crisscross arrangement of low-cost GPS receivers」という題目で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
島根大学三瓶演習林内での試験サイト(2ヶ所)の設置の作業は順調に進み、数cmの誤差しかない正確な測量を行うことができた。この試験サイトを利用して「GLONASSシステム」の測位試験を計画通り実施することができた。その結果得られたデータも良好であり、これまで困難であった樹冠下での十分な数の衛星捕捉が可能であり、測位誤差も改善することが示された。複数のGNSS受信機を十字型に配置して測位を行う方法について、国際会議で発表したところ、これまでほぼ不可能と考えられていた低コストなGNSSレシーバーによる測位精度の改善というブレークスルーに対して大きな反響があった。その一方で、試験サイトの樹冠の状況を撮影した画像解析では、樹冠の状況と測位誤差の関係について有意な関係を見つけ出すことができなかったことについては、来年度の課題として取り組みたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、前年度に引き続いて「GLONASS併用システム」の測位試験を実施する。今年度は試験サイトの設定に時間を要したことで、十分な観測データを集められなかったので、次年度にもフィールド試験を継続するものである。次年度はこれに加えて「準天頂衛星システム」の測位試験を実施する。準天頂衛星は日本で開発された測位衛星で、衛星4機を8の字型の軌道に投入することにより、東京では常時仰角が70度以上になるように設計されている。衛星が高仰角にあれば谷部にあっても地面の傾斜が急であっても、その影響を受けることはなく、同時に樹木の影響も小さいものになると考えられる。次年度以降、さらに測位誤差の予測式に補正値を与えるられるように、降雨量および降雪量に応じた測位誤差を観測する。これは樹冠の葉に付着した雨滴や雪がGPSの測位精度に著しい影響を及ぼすことが近年指摘され、雨や雪の影響を評価する必要が生じているためである。これまで、GPSは全天候型の測位システムで雨や雪の影響をほとんど受けないと言われていたが、樹木の葉部に大量の雨滴や雪が付着している状況ではGPS衛星の電波の捕捉に顕著な障害が発生していると考えられる状況がしばしば発生しているため、その評価を行うものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
準天頂衛星システムの精度検証を行うために、準天頂衛星の補完信号に対応したGNSSレシーバー(Garmin製)を2台購入する。さらに、森林環境下におけるGNSSレシーバーの降雨量および降雪量に応じた測位誤差を観測するために、GNSSレシーバー(Trimble製およびHemishere製)を各1台購入する。GPSおよびGNSSを用いた森林管理や林業機械に関する資料収集のために、この分野で世界最先端の技術を有している北欧へ渡航する。さらに、今年度の研究成果を国内の学会でも発表したいと考えており、国外・国内の旅費をそれぞれ1件ずつ使用する予定である。それ以外は、測位試験を実施する試験サイトと往復するために必要な国内旅費、実験およびデータ分析に必要なハードディスク、メモリー、ソフトウェア、ケーブル、測量機器、書籍、デジタルカメラ等消耗品の購入に使用する。今年度1540円という少額の未使用額が生じたが、これだけでは必要なものが何も買えないので、翌年度の予算と合算して使用した方が無駄がないと考えて残すことにした。この未使用額は次年度本研究に必要な書籍の購入に充当するつもりである。
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Research Products
(3 results)