2013 Fiscal Year Research-status Report
ホヤCesAによる試験管内セルロース生合成系の構築
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24580239
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 聡 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00420224)
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Keywords | セルロース / ホヤ / Pichia |
Research Abstract |
Pichia細胞へホヤのセルロース合成遺伝子であるCiCesA遺伝子を組み込み、メタノール誘導によりCiCesAタンパク質を細胞内に発現させた。CiCesAタンパク質の発現量はおおむね良好であり、目的タンパク質が細胞破砕物の遠心分離沈殿物に検出されることがわかった。そこで細胞破砕の方法を検討した結果、Pichia細胞をザイモリアーゼ酵素で処理しスフェロプラスト化し低張液処理により細胞を破壊する方法が有効であることがわかった。細胞破砕物のうち細胞膜を含む分画にCiCesAタンパク質が多く局在しており、Pichia細胞においてもCiCesAタンパク質は膜構造へ組込まれることが示された。得られた膜分画を既報のセルロース合成実験において定評のある界面活性剤(ジギトニン、Brij58、タウロコール酸ナトリウム)で処理し、タンパク質を可溶化、その遠心分離上清を用いてセルロースの試験管内合成を試みた。合成反応液には基質としてUDPグルコース、2価カチオンとしてCaとMg、セロビオースを添加し一昼夜の反応を行った。その結果、タウロコール酸ナトリウムを使用した場合、反応液が白濁し、微量であるが何らかの合成産物が生じることがわかった。合成反応物を透過形電子顕微鏡で観察すると、不定形もしくは乱れた微細な繊維構造が観察された。Pichiaの膜画分には種々のβグルカン合成活性が含まれることがわかっている。そこで合成産物を酢酸と硝酸の混合液で処理、結晶性セルロースの精製を試みた。この処理により、ほとんどの合成産物が消失したが、極めて微量な残渣が確認された。この残渣の同定には至らず今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Pichia細胞の細胞壁が極めて強固であることが知られているので、酵母類の細胞破砕においてその有効性が示されているガス式の細胞破砕装置を使用し、条件を変えながら細胞破砕の最適化を行った。しかしこの方法では効率的な破砕効果を得ることが困難であることがわかった。そこで他の方法を検討した結果、細胞壁を酵素で部分的に消化、低張液ショックにより細胞を破裂させて細胞破砕を行う方法が最も効率的であることがわかった。今年度は、細胞破砕の効率化の条件検討に多くの時間を費やす必要があったため、研究目的であるCiCesA酵素の活性測定が年度後半にずれ込み研究達成度がやや遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
Pichia細胞の効率的な破砕方法を明らかにしたので、次年度はCiCesA酵素の活性測定、試験管内セルロース合成の実験を計画通り遂行できる体制が出来たと考えている。また、CiCesA酵素の可溶化に効果的な界面活性剤の種類も特定できつつある。試験管内セルロース合成では合成産物の同定を確実にするために培養系のスケールアップを予定しており、ジャーファーメンテーターの使用を検討している。
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