2013 Fiscal Year Research-status Report
村張り定置網の機能分析と漁村振興のための適用モデル構築に関する研究
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24580262
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
有元 貴文 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (20106751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 誠一 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (20155013)
馬場 治 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (40189725)
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Keywords | 村張り定置網 / 操業システム / 技術移転 / 栄養段階 / 環境インパクト / 漁場環境 / 東南アジア / 国際情報交換 |
Research Abstract |
日本の定置網漁業は400年の歴史を持ち,地域の雇用や経済を支える村張り定置網として発展してきた経緯があり,現在では漁業権で規定された沿岸域での商業的漁業として世界的にも特異な存在となっている。この村張り定置網の機能を途上国の漁村振興に役立てるために,適用モデル構築を目指す研究となっている。 日本国内での実態調査として,東日本大震災で被害を受けた宮城県の定置網について視察を行い,特に復興の過程で3ケ統共同操業を行っている東松島の定置網の事例について聞き取りを行った。また,村張り定置網の機能について富山県定置網の事例について情報収集を行った。 国外調査としては, 2003年にタイ国ラヨンに技術移転された日本式定置網についての調査を継続し,漁獲販売記録をもとに漁期を通じた漁獲傾向の変化,そして燃油消費量からみた収支バランスについて日本の定置網についての既往の傾向と比較を行った。このなかで,漁獲物の販売や流通経路と魚価設定の方式を調査してきた。また,風向風速計,流向流速計,水深計を漁場に設置し,環境条件と漁獲変動に関する解析を進めてきた。また,周辺沿岸漁業漁業者からの聞き取り調査と操業野帳・GPSロガーの資料,そしてインターバルビデオレコーダーによって小型漁船の漁場利用形態を明らかにして,定置網漁具との漁場競合の問題について解析した。 定置網の環境インパクトの問題については,漁獲物組成の急激な変動の兆しとして漁獲物平均栄養段階の数値が指標として使えるかどうかを検討するため,主要漁獲物の筋肉片と消化管内容物の安定同位体解析を行い,主要魚種の栄養段階の推定に向けて解析を進めてきた。これらをもとに,最終年度において,定置網技術導入が沿岸域の資源,そして小規模漁業者にどのように影響するかを検証するものとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内・国外調査ともに順調に推移してきており,特にタイ国での調査については風況,流況等の漁場環境要因と操業条件・漁獲傾向との関係を検討するための準備が整えられた。また,定置網漁獲物の安定同位体解析については総合地球環境学研究所のプロジェクトと連携して行っており,定置網の環境インパクトを考えるために十分な解析結果を蓄積することができた。なお,研究成果については,ICES-FAO漁業技術・魚群行動部会や日本学術振興会主催の国際学会で6件,日本水産学会等の国内学会で8件の口頭発表・ポスター発表を行うとともに,日本水産学会の2件のミニシンポジゥムで講演を行ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として,国内外での現地調査と資料入手を継続するとともに,村張り定置網の機能分析を行い,漁村振興モデルの構築に進める。特に,タイ国定置網について,流況による漁具形状の変化と漁獲への影響,そして周辺沿岸漁業の定置網周辺での操業状況把握をもとに,途上国沿岸域での漁場利用の在り方を考え,漁村振興モデルとして定置網技術の導入がどのように機能するかを考察する。このなかで,定置網漁獲物の集荷流通販路の調査も継続し,日本の魚市場制度との比較検証を行う。また,定置網主要漁獲物の安定同位体解析の結果をもとに,漁獲物平均栄養段階の長期的な推移を明らかにして,周辺での小規模漁業,そして沖合漁業との関係を含めて,定置網の環境インパクトを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
タイ国での現地調査について,総合地球環境学研究所との連携により予算措置を得たため。 国外調査と,研究成果公開のための国外旅費に使用する。
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