2012 Fiscal Year Research-status Report
エピトープ情報を活用した魚卵アレルゲン検知系の開発
Project/Area Number |
24580294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐伯 宏樹 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (90250505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 裕 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 技術専門職員 (00374629)
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10443920)
原 彰彦 北海道大学, -, 名誉教授 (40091483)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 魚卵 / 食物アレルギー / アレルゲン / IgE結合部位 / いくら / β’-コンポーネント / 抗原交差性 / 抗ペプチド抗体 |
Research Abstract |
【内容】本研究の目的は、魚種を問わずに魚卵タンパク質の存在を包括的に評価できるアレルゲン検知系を構築することである。この開発の要諦は二つある。第一は標的タンパク質を魚卵の主要アレルゲン・β’-コンポーネント(β’-c)とすることであり、第二は抗原性の評価を、β’-cのIgE結合部位と同じ部位を認識するペプチド抗体(a-EP)を用いて行うことである。本年度はa-EPを作成し、その免疫学的特性に関する検討を行った。 【結果】これまでに決定したIgE結合部位の中から、魚種間での相同性が高い「VVDWMK」を選択し、これを認識するa-EPを作成した。このa-EPを用いて、シロザケ、スケトウダラ、ニシン、アサバカレイ、ボラおよびカペリンの各卵黄抽出物を用いたイムノブロッティング(IB)および阻害ELISAを行い、以下の結果を得た。(1)IBにおいては、供試した全魚種に対してa-EPが結合した。(2)阻害ELISAにおいては、a-EPとシロザケβ’-cの結合を他魚種β’-cは顕著に阻害しなかった。このように、供試抗原のタンパク質構造が変化しているIBと未変化の阻害ELISAでは、β’-cに対するa-EPの結合性が異なっていた。この結果は、このa-EPが各魚種卵のβ’-cを同時に認識可能なプローブとなりうる事を示すとともに、シロザケ以外の魚種においては、β’-cの高次構造に起因する立体障害によってIgEが「VVDWMK」に結合できない状態であることを示唆している。すなわちIgE結合部位には「VVDWMK」のように、調理や消化吸収過程における構造変化によって発現するIgE結合部位が存在し、これが抗原性や魚種間の抗原交差性に関与している可能性がある。以上,本年の成果から、このa-EPを用いて目指す検知系を構築する際には、抗原タンパク質の構造を変化させてから検知系に供する必要性が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、検知系構築のためにa-EPの作成が必須である。当初予定では複数種の抗体作成を予定していたが、実験動物における免疫の確立が想定よりも難航し、1種類の抗体を完成させたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】に記載したように、a-EP作成の遅延が問題となっているが、これに関しては本年度の検討により解決の目処が立った。そこでH25年度は、複数種のa-EPの作成をめざし、検知系に使用にする適性について検討する。また本年度の活動において、a-EPを用いる事で抗原タンパク質の高次構造の変化に伴う抗原性変化を詳細に検討可能である事が示唆された。この知見を応用すれば、本検知系に加工や消化吸収過程におけるアレルゲンの抗原性変化を評価する機能を付与する事が可能となる。それゆえ上記の検討と平行して、a-EPを用いたアレルゲンの抗原性変化評価法についても検討を進めることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度はa-EPの作成が難航し、当初予定していた検知構築に至る事ができなかったため、予算支出額は当初予定を下回った。この未使用の予算に関しては、次年度に繰り込んだ上で、改めて検知系の構築に用いる。具体的には、次年度の作業を、(1)a-EPの作成、(2)検知系の検討に用いるモデル食品やモデルタンパク質の調製、そして(3)a-EPを用いた検知系の構築と定め、次年度研究費の8割程度を(1)に、2割を(2)に使用し、その上で本年度の未使用分を(3)にあてる。
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Research Products
(1 results)