2012 Fiscal Year Research-status Report
農業部門における非営利事業の経営形態と運営管理に関する研究
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24580321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊庭 治彦 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70303873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 美喜 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (60433158)
高橋 明広 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, その他 (20355465)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会貢献型事業 / 公益的事業 / ネオリベラリズム政策 / 米国の小規模農場 / シティファーム / コミュニティガーデン / アロットメント / 集落営農 |
Research Abstract |
研究期間の初年度である今年度は、主には次の3つの研究活動を行い、それぞれに成果を得た。 第一は日本国内の事例を対象とする調査・研究であり、集落営農が実践する非営利事業の実態把握を行い、同事業の今日的意義をその社会経済的背景を視点として考察した。さらに、事業運営に関わる問題の所在を明かにするとともに、その改善に向けての対応活動の在り方を検討した。その結果、明らかになったのは、集落営農の問題への対応活動と地域社会の厚生の維持や振興とが一体性を有することである。当調査・研究の成果は、Rural Sociological Societyの年次大会(米国シカゴ市)において報告した。また、この研究成果を踏まえつつ、島根県の中山間地域に位置する10組織を対象にした事例調査から、事業運営上の問題として労働力不足と事業収益性の低さの二つに焦点を当て、その対応策を検討した。当研究の成果は、農業問題研究学会2013年度春季大会シンポジウムにおいて報告した。 第二は米国の事例を対象とする調査・研究であり、米国カリフォルニア州ケイペイバレーに位置する小規模農場が取り組む社会貢献型事業としての再生エネルギープロジェクトの実態把握を行い、事業構造を明らかにするとともに、地域社会に与える効果を考察した。その結果として、同プロジェクトの特徴を三点にまとめた。当調査・研究の成果は、第62回地域農林経済学会大会において報告した。 第三は英国の事例を対象とする調査であり、英国イングランド北部において取り組まれているシティファーム、コミュニティガーデンおよびアロットメントに関する実態調査を行った。当調査結果については、来年度に分析を行い、学会等での報告を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本国内の事例の調査・研究に関しては、当初の計画を大幅に上回る数の事例組織(約20組織)を対象として調査・分析を行うを行い得たことにより、分析結果からはより幅広い知見を得ることができた。とくに、2000年代以降のネオリベラリズム政策を視点として、集落営農が実践する社会貢献型事業の今日的意義を明らかにしたことは、大きな成果である。さらに、当調査・研究の成果を国内学会と国際学会の二つの機会において報告することができた。とくに、国際学会での報告は、米国で出版される書籍のワンチャプターとして掲載されることになった。このことは、日本農業の展開や機能に関して、海外における認識や理解を醸成するものであり、わが国の農業にとって極めて高い意義を有すると考える。 海外事例の調査・研究に関しては、米国の事例について詳細な調査を行い、その結果を基に分析を行い、学会報告を行うことができた。この成果は、今後、日本において同様の事業運営方法(消費者および地域住民が出資者としての役割を担う)を導入する上で、貴重な情報を提供するものである。 英国の事例については、約10組織の多様なタイプの調査を行うことができたことにより、幅広い事例の類型を用いての分析が可能となった。 以上のことから、今年度の研究の達成度は当初の計画を上回るものであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の調査・研究の推進方向は、初年度に引き続き国内外の事例を対象に、公益的農業サービス事業の対象者(参加者、顧客、会員等)の視点から、四つの調査を実施する。第一に、国内事例に関しては、非営利公益的事業や社会貢献型事業の利用者を対象に、事業内容、運営体制等に関する評価を調査する。その際、事業運営に関わる財務状況の分析により、事業の継続性に関する検討を行う。この結果を基に、当該事業の解題および今後の展開に関する検討を行う。 第二に、米国事例に関しては、事業主体である農場のプロラムに参加する消費者や関係者を対象に、事業内容、運営体制に加えて、非営利事業に対する日常的な支援活動(寄付やボランティア活動)に関して調査する。この結果を基に、米国における非営利法人の社会的背景を明らかにする。その際、寄付行為や基金創設の歴史的経緯だけでなく、非営利組織に関わる税制上の優遇点も整理する。その上で、日本の社会的特質との比較を行い、日本型の事業モデル構築の検討材料とする。 第三に、英国事例に関する調査では、シティファーム、コミュニティガーデン、アロットメントに関するより幅広い情報収集を行い、事業内容、運営体制に加えて、非営利事業に対する日常的な支援活動(寄付やボランティア活動)に関して調査する。また、当該事業を支援する関係機関(行政機関、民間団体等)への調査を併せ行う。これらの結果を基に、英国における非営利事業の社会的背景と支援体制を明らかにする。 第四に、文献調査として非営利事業を取り巻く社会環境に焦点を当て、国内外の関連領域の資料収集と分析を行う。なお、初年度の調査・研究を進める中で、文献調査により豪州においても農業者が社会貢献型事業に取り組んでいる状況が明かとなった。このため、今後、豪州に関しても実態把握を行い、国際比較研究を行うことを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費については次の事項において使用する計画である。 海外調査については、米国、英国、豪州の三カ国の内から我が国における公益的農業サービス事業との比較において重要となる事例を精査し調査を行うこととする。 国内調査については、前年度の事例調査を踏まえつつ、新たな事例についても積極的に探索し調査する。 また、科研研究を進めていく上でメンバーが参加しての研究会を開催することが必要であり、このための国内旅費として使用する。 さらに、種々の調査から得られたデータを整理するために必要となる作業に人員を雇用する必要から人件費・謝金として使用する。その他に、研究を進めていく上で必要となる文具等の消耗品に使用する。
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Research Products
(6 results)