2012 Fiscal Year Research-status Report
夏播きカバークロップと不耕起播種による春コムギ初冬播き栽培体系の改善
Project/Area Number |
24580363
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 聡之 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (60281797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 肇 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30183148)
片岡 崇 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40231253)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 春コムギ / 初冬播き / 不耕起 / ヘアリーベッチ / 低投資栽培 / 省力化栽培 |
Research Abstract |
ヘアリーベッチ栽培と不耕起条件を組み合わせた春コムギの初冬播き栽培の収量は、通常の春播き栽培に比べて30%以上高く、夏播きヘアリーバッチ栽培後のコムギの初冬播き栽培は、不耕起条件下においても有効であることが示唆された。また、不耕起地における初冬播き時に地表散播と通常の条播を比較したところ、地表散播区の収量が高く、ヘアリベッチによる土壌被覆の効果が示唆された。 トラクター走行性能性を調査用トラクターによる作業トラクターのけん引力およびスリップ率で評価したところ、特にけん引力で明確な差異が認められた。ヘアリーベッチ播種時に耕起を行わなかった区では、行った区に比べけん引力が50%以下に減少した。また、地表散播を行うことにより、通常の条播に比べ50%程度のけん引の低下が認められた。今年度における試験期間の降水量が多く、通常の初冬播きが困難であったが、不耕起状態では播種に問題が生じなかった。これらのことから、不耕起状態により初冬播き時の播種作業性が高まることが示された。 融雪後の土壌水分量および地温の動態にヘアリーベッチ残渣の影響は認められなかったが、土壌内無機態窒素量はヘアリーベッチ栽培により増加した。融雪時におけるヘアリーベッチ栽培による無機態窒素の増加量は、早春追肥の慣行量(9kg/10a)に匹敵しており、ヘアリーベッチ栽培によって早春窒素施肥量を減量させることが可能であると思われる。15Nを吸収させたヘアリーベッチ残渣を処理したポット試験では、収量は早春追肥を行わなかったポット間でヘアリーベッチを処理したポットで増加した。また、ポット栽培のコムギ子実内窒素量にたいするヘアリーベッチ由来窒素量は早春追肥量が高くなるほど低下した。これらのことからヘアリーベッチの小麦生産にたいする寄与は、低窒素環境で大きいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
春コムギの初冬播き栽培により収量増加の効果が認められたが、融雪後の出芽数は想定値(150-300本/m2)を下回った(50-127本/m2)。出芽数の不足は、耕起状態に依存せず、反復間で大きくばらつたことから、播種行程の問題が示唆された。初冬播き栽培の最も大きな問題点は、越冬後のコムギ実生の起生数の確保にあり、年次間により大きく異なることが報告されている。2012年の播種では播種機および播種時期を再検討する。 土壌養分の動態は、もっとも顕著な違いが生じると考えられる窒素量の測定を先行ており、他の養分(リン、陽イオン)の測定については現在も進行中である。サンプルの採取・調整は問題なく終了しているので、速やかに測定を進める。 トラクターの走行性能性試験には、問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度の結果より、夏播きヘアリーベッチと不耕起におけるコムギの初冬播き栽培にコムギの増収の効果が認められた一方、コムギ生育の安定性の検討が必要なことが示唆された。申請時には、最終年度に同栽培体系の広域適応性について検討を始める予定であったが、今後は栽培システムの安定化にも重点をおく。 これまでの試験で、コムギの地表散播によるヘアリーベッチ栽培の効果が認められており、コムギ初冬播き栽培における新たな省力化技術としての有効性が示唆される。今後、その検証が重要である。 走行性能試験では、不耕起状態における播種作業の安定化が示され、圃場状態が悪化する従来の初冬播き播種期間以降においても、播種が可能であることを確認した。一方、申請外の発芽試験において、ヘアリーベッチによるコムギの出芽抑制効果を確認しており、従来の初冬播き播種期間以前に播種をおこなって、幼苗の生育が抑制され、越冬能力が維持される可能性が示唆された。これらのことから、播種時期と春コムギの生育安定性の効果についての再検討が必要である。 以上のことから、これまで解析が進んでいるコムギの増収効果、減肥料、播種作業の効率化の解析に加え、コムギ生育の安定化についても検討を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度未使用金は、年度にわたり使用している試薬などにあてる予定であったため発生した。未使用金額は次年度の土壌分析の試薬の購入にあてる。
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