2014 Fiscal Year Research-status Report
セルロース・ヘミセルロース加水分解菌の電位制御による発酵ビートトップ飼料創製
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24580384
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
高橋 潤一 帯広畜産大学, その他部局等, 名誉教授 (20111198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 武弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70343986)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電位制御バイオリアクター / 繊維加水分解菌 / ビートトップ / 乳酸発酵 / TMR / 乳牛 / 印加電圧 / セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
1.発酵ビートトップTMR乳牛泌乳試験 構成粗飼料の乾物50%相当量の発酵ビートトップを混合して、乳牛用TMRを調整した。対照区のTMR構成粗飼料はイネ科乾草のみとした。泌乳牛10頭を用い、試験区及び対照区各5頭あて、泌乳試験を45日間実施し、乳量及び乳質を評価した。また発酵ビートトップ及び発酵ビートトップTMRは対照区TMRより嗜好性が良好で、飼料摂取量は有意に(p<0.01)高い推移を示した。乳生産量は発酵ビートトップTMRの方が対照区TMRより有意に(p<0.01)高い値を示した。体細胞数はビートトップTMRは対照区TMRより有意に(p<0.01)低い値を示した。 2.電位制御バイオリアクターによるビートトップ加水分解試験 2-1.電位制御バイオリアクターによる乳酸、低級脂肪酸(VFA)発酵試験…-0.1,-0.3及び-0.5VvsAg/AgC1の印加電圧における乳酸及びVFA生成量を測定した結果、最も高い-0.3Vで17,000mg/Lを示し、プロピオン酸で生成も高かったが、-0.5Vでは乳酸発酵及びプロピオン酸発酵は阻害された。2-2.電位制御バイオリアクターによるグルコース酸化試験…見掛けの電流密度として10mA/cm2を達成することができ、電位制御バイオリアクターに用いた炭素繊維フェルトの活性化法が微生物電極として有効なものであることを確認した。2-3.セルラーゼを用いるビートトップ加水分解試験…-0.3VvsAg/AgC1について乳酸発酵処理試験を行った結果、セルロース・ヘミセルロースの加水分解とそれに続く、乳酸、VFAの発酵の適正電極電位は-0.3VvsAg/AgC1近辺であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に試作した電位制御バイオリアクターの性能試験について乳酸・VFA発酵、グルコース酸化試験及びセルラーゼによるビートトップ繊維成分加水分解試験を実施し、電位制御バイオリアクターの適正印加電圧を検討した。その結果、-0.3VvsAg/Agc1で最も高いセルロース加水分解と乳酸・VFA発酵を示し、平成24年度の試験結果を裏付ける結果が得られた。これらの結果から、導電性炭素フェルトに担持された供試生菌剤の加水分解酵素活性は-3Vに印加電圧を調整することにより、増幅することが確認された。すなわち、本モデルを原理とする電位制御バイオリアクターは嫌気性繊維加水分解菌を適正な嫌気性に電気制御することが可能であり、未利用の農産物セルロースバイオマスに応用することが可能であることが証明された。しかし、電位制御によって活性化されるセルロース・ヘミセルロース加水分解菌の同定にはPCR菌叢解析が必要であるが、想定外の分析機器補修費等のための予算が制約され、本科研費では断念せざるを得なくなった。次のステージに機会が得られれば、優先的に解明したいと考える。 生菌剤発酵ビートトップTMRの泌乳試験に関しては、民間の丸紅(株)、TMRセンター(酪研道東)、農業団体(十勝農協連)、酪農家の多大な協力を得、泌乳牛10頭を用いた実証試験を実施した。発酵ビートトップTMRの嗜好性及び生産性は極めて高く、しかも安全性、保存性に優れた酪農飼料として実用化できることが実証された。発酵に用いる微生物の繊維加水分解酵素活性の活性化により、より優れた発酵ビートトップTMR製造が可能であることが証明された。以上の成果とさらなる検討課題から、表記区分の評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した導電性炭素繊維を微生物単体とするバイオリアクターは直接酵素を担持するバイオリアクターと異なり、細胞膜を通しての物質移動を伴うため、実質的な反応密度(電流密度)が1%以下程度まで非常に小さくなる。現在の技術でこれを補う方法は炭素繊維の実質的な比表面積大きくして、見かけの反応密度を上げることで、気相成長炭素や従来の炭素繊維のエッチング処理で、比表面積(窒素ガスを用いるBET比表面)を100倍以上上げることや高温焼成した活性炭の集電性を確保する方法によって達成した。高温焼成した粒状活性炭を炭素板に挟み込む構造のリアクターを用いて加水分解性の試験を用い、加水分解性の向上(20%)を確認した。加水分解反応に関与するH+(プロトン)の酸化還元電位もpH依存性(約60mV/△pH)を示すため、バイオリアクターで加水分解反応行う場合、最適pHの選択は必要である。今回は他の競合する反応を抑えることも含め、pH3程度が最適であった。さらに、今後は加水分解菌によるセルロースバイオマスの加水分解効率向上のための研究を推進し、反応のメカニズムの解明を目指したい。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた研究成果をとりまとめたホームページ作成作業に追加データが発生し、本データの取得が遅れたため、ホームページ掲載情報の整理に時間を要している。追加データは本研究課題の根幹となる電位制御バイオリアクターに関するデータで、製作所との打合せが必要である。そのためのホームページ作成の年度内発注が不可能となり、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を総括したホームページの作成費と研究打合せのための電位制御バイオリアクター製作所(タキザワ理化、千葉)への国内旅費として使用する。
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Research Products
(12 results)