2013 Fiscal Year Research-status Report
ブタ、ニワトリの回腸粘膜細菌叢からのイムノバイオティクスの探索と利用
Project/Area Number |
24580401
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
田島 清 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (80343953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠野 雅徳 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域, 研究員 (50547718)
大津 晴彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (40455316)
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Keywords | 回腸粘膜付着細菌 / ブタ / ニワトリ |
Research Abstract |
ブタ回腸粘膜から得られたセグメント細菌の16S rRNA遺伝子約1500bpの配列を決定した。チャンキー種ブロイラーの初生雛を用い、成長段階での回腸粘膜にセグメント細菌が生存しているかどうかを調査した。回腸末端粘膜のTotal RNAを用いたRT-PCRでの検出では、ふ化後1日齢でのセグメント細菌の検出はなかったが、7, 14, 21, 28日齢で調査した個体(各日齢4羽)からセグメント細菌が認められた。次いで16S rRNA遺伝子約1500bpの配列を決定し、ブタセグメント細菌の配列と共に最尤法による系統解析を行った。ブタ、ニワトリの配列は他の動物種から得られているセグメント細菌と大きな1つのグループを形成するが、動物種間で独立した枝に分岐することが明らかになり、動物種特異性を反映していると考えられた。チャンキー種を用いて同様の実験を反復したところ、ふ化後7日齢までにセグメント細菌は検出されず14日齢では検出された。上記の結果からセグメント細菌の回腸への定着には個体間で差があることが示唆された。 セグメント細菌の感染経路を明らかにするために、ブタにおいては初乳、脾臓、腸間膜リンパ節、ニワトリにおいては鶏卵および残存卵黄中のセグメント細菌の存在について調査した。初乳、脾臓中にセグメント細菌は検出されなかったが、腸間膜リンパ節での検出が認められた。 セグメント細菌定着に対する抗生物質の影響を知るために、LWD交雑種25日令離乳子ブタ12頭を抗生物質投与の有無により2区に分け2週間の給与試験を行った。実験終了後に回腸末端、脾臓、腸間膜リンパ節を採取し、各臓器中の細菌叢の解析を行った。その結果、抗生物質を投与しなかった6頭中4頭にセグメント細菌が検出されたが、抗生物質を投与された子ブタでは6頭中1頭にとどまり、セグメント細菌が抗生物質に弱いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブタだけでなく、ニワトリにおいても免疫の発達に重要な役割があると考えられるセグメント細菌の存在を明らかにし、遺伝子系統樹から同一菌種であっても動物種特異的であることを示した。セグメント細菌が優性に存在するのは幼若期に限られていることから免疫機能の発達に不可欠な菌であることが考えられる。また動物種に固有であることから、飼料や飼育環境から動物の体内に入ると考えるよりも、親から垂直伝搬すると考えることが妥当なため、ブタにおいて初乳、ニワトリにおいては残存卵黄中の検出を試みたが成功には至らなかった。セグメント細菌の伝搬を明らかにすることは、幼若動物への細菌感染経路の推定にも結びつくと考える。 セグメント細菌の有無による免疫関連遺伝子の発現については現在定量的PCRを実施している。また、イムノバイオティクス候補菌としてLactobacillus rahmnosus GG, Lactobacillus agilis, Lactobacillus oryzae, Lactobacillus casei, Weissella cibariaの5菌種を選び、ブタ回腸末端との共培養(IVOC)系による免疫遺伝子発現解析も実施した。これらの結果は次年度に離乳子ブタを用いた投与試験に活用する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在実施しているイムノバイオティクス候補菌と回腸との共培養で得られた試料の免疫関連遺伝子発現解析と、セグメント細菌の有無による免疫関連遺伝子発現解析を終わらせる。候補菌と回腸との共培養も継続して実施する。その結果を基に子ブタに投与する菌株を選び、離乳子ブタへの投与を行う。頭数を確保するために複数回に分けて実施する。飼養成績の他、回腸末端、腸間膜リンパ節の細菌叢の他、免疫関連遺伝子の発現の定量を行い、投与菌種の効果を検証する。 また、セグメント細菌が宿主に与える影響については、他の機関との共同研究が可能かどうかを考えて、本課題終了後に展開できるよう、競争的資金の獲得に結びつけたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験補助に掛かる経費が予定を下回ったこと、学会発表のための出張を別の予算から支出したため、当該年度の予算を使い切らず、次年度に持ち越すことになった。 子ブタを使った動物実験の実施のため、試験飼料の調製費が必要になる。免疫関連遺伝子発現の定量や16S rRNA遺伝子を指標にした細菌叢の解析も継続して行うため、その費用を計上している。昨年度の繰り越し分を配分して、申請時よりも多めになっている。 遺伝子関連試薬:500千円、飼料調製費:300千円、消耗品:50千円、人件費:500千円、論文等投稿費:30千円
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