2013 Fiscal Year Research-status Report
コムギのフルクタン分解酵素遺伝子群による越冬エネルギーの効率的利用機構の解析
Project/Area Number |
24580501
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
吉田 みどり 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・寒地作物研究領域, 主任研究員 (00355455)
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Keywords | コムギ / フルクタン / 越冬性 |
Research Abstract |
フルクタン(fructan)は麦類や寒地型牧草の越冬能力に深く関わる多糖であり、コムギにおいて秋のハードニング時に蓄積されるフルクタン量がコムギの品種間の耐凍性及び雪腐病抵抗性と相関する。本課題では、圃場越冬コムギのフルクタン分解酵素遺伝子発現の変化を解析し、フルクタン代謝によるコムギの越冬エネルギー蓄積・利用の調節機構を分子生物学的に明らかにする。 1)昨年と同じ品種に関して、次年度越冬中の圃場コムギ品種のクラウンと葉茎組織のフルクタン分解酵素遺伝子の発現を解析したところ、クラウンと葉茎では傾向は昨年度解析と概ね同じであった。 2)季節を通して、それぞれ6-ケストース(3糖)とビフルコース(4糖)に強い基質特異性をもつ6-KEH, 6&1-FEHの発現量が長鎖を分解する酵素をコードする他の遺伝子よりも高いレベルで発現していた。ハードニング、越冬期間を通してエネルギー源供給のために、常にこれらの酵素によってフルクトオリゴ糖分解されている可能性がある。6&1-FEH遺伝子は昨年度結果では恒常的な発現を示していたが、今年度解析ではやや低温誘導性を示した。 3)コムギのフルクタンの骨格となるβ(2→6)結合を切る6-FEHは昨年解析と同様にハードニング中に増加し、積雪下で減少した。単・二糖類含量の増減と相関する変化を示した。 4)昨年解析でフルクタンの季節変化と品種間差異のキー酵素遺伝子と推察されたフルクタンの全ての組成を分解できる酵素をコードするWfh-sm3の発現は、フルクタンが急激に増加する秋口後半に発現量が抑えられ、積雪下で発現が誘導された。フルクタンの蓄積量が高く、雪の下でのフルクタン消費速度が低いPI 173438では多品種より一貫して発現が低く推移した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圃場の遺伝子発現解析については、2シーズン分のサンプルについての実験を終了し、目的とする越冬性中のフルクタンの蓄積量の制御およびその品種間差異に関わるフルクタン分解酵素のキー遺伝子の特定までに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現の結果を裏付けるため、酵素活性の季節変化を解析する。また、越冬下のフルクタン分解とエネルギー消費の制御を考察するために、人工環境下で高いDPフルクタンと3糖フルクタン(1-ケストース)に対するFEH酵素活性の温度応答を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究担当者の健康上の理由(長期病休)により、3月に急遽3週間実験を中断せざるを得なくなり、その間計画していた実験の費用と人件費が使用されないままとなった。 上記期間に計画していた酵素活性実験を26年度に実施するのための費用に充填する。
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Research Products
(1 results)