2012 Fiscal Year Research-status Report
肺癌化学療法におけるマイクロRNAのバイオマーカーへの応用研究
Project/Area Number |
24590174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柴山 良彦 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90593822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオマーカー / 肺癌 / マイクロRNA |
Research Abstract |
遺伝子をコードしない20塩基程度のマイクロRNAは相補的なメッセンジャーRNAと部分的にハイブリダイゼーションし、メッセンジャーRNAから蛋白質への翻訳を制御するという極めてユニークな発現調節機構に携わっていると考えられている。がんにおいてもマイクロRNAはがんの発生、悪性化、転移など、重要な役割を担っていることが示唆されている。本研究では血漿中に存在するマイクロRNAに注目し、化学療法の有効性向上と治療の個別化に有用な知見を得ることを目的とし研究を行った。 本研究は北海道大学(以下、北大)病院薬剤部、北大病院腫瘍内科、北海道がんセンター病院、札幌南三条病院の協力を得て実施した。本研究で分析した血漿は通常の診断行為で得られ、検査後に廃棄される試料であるので、本研究は患者への侵襲性は伴わない観察研究である。初年度である平成24年度には臨床計画を立案し、臨床研究倫理審査委員会の承認を受けた。また、研究のための技術的方法を確立し、同意が得られた数名の患者の血漿について分析を行った。内標準としてRNU6Bを用い、miRNA 16, 21, 26a, 34a, 98, 101, 101*, 124*, 126, 126*, 210, 217 および 630の発現を評価した。いくつかのmiRNAの発現には正の相関があり、miRNA 630はmiRNA 98, 101, 101*, 124, 126, 126*, 210と発現に相関があることが認められた。現在、治療効果とマイクロRNAの関係について調べており、がん治療のバイオマーカーとして応用するための研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は研究体制を確立し、臨床研究審査を経て研究を行うための技術的方法を確立した。本研究は3年間で行う研究であり、初年度に達成すべき目標についておおむね達成されたと考えられる。 1.臨床研究計画の立案および倫理審査: 本研究は北大薬学部、北大病院薬剤部、北大病院腫瘍内科、北海道がんセンター病院、札幌南三条病院が参加して行われる臨床研究である。それぞれの所属施設で倫理審査委員会の審査を受け、それぞれ承認が得られた。 2.分析方法: RNAはリボヌクレアーゼにより容易に分解され、非常に不安定な物質である。血漿中からRNAを抽出、DNAに逆転写する方法は不明な点が多いが、本研究では安定して血漿中マイクロRNAを定量する方法を確立した。また肺癌の予後と関与しているEZH2遺伝子、がん幹細胞と関係しているMFGE8遺伝子についても安定的に定量する方法を確立した。 3.患者検体の分析: 協力機関で得られた6名の患者の血漿サンプルについてRNA発現量の定量を行った。また肺癌に加えて大腸癌患者における血漿中マイクロRNA発現の変化についても併せて研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた結果を発展させ、以下の2項目について研究を進める予定である。 1.発現定量および臨床経過の観察: 登録症例数を増やし、マイクロRNA、MFGE8およびEZH2メッセンジャーRNA発現量と臨床経過との関係について調べる。 2.分子生物学的研究: 上記の研究でマイクロRNA発現量と臨床経過との関係が得られた場合、マイクロRNAを強制的に導入もしくは抑制することにより、そのマイクロRNAの分子生物学的機能についてin vitro研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
血漿中のマイクロRNAを定量し、マイクロRNAの分子生物学的機能を調べるため、研究用試薬を計1,200千円購入する予定である。以下は購入予定の試薬(個数X単価)である。 miScript Primer Assay (14 X 15)、QuantiTect Primer Assay (5 X 20)、Realtime PCR Master Mix (4 X 29)、miScript SYBR Green PCR Kit (2 X 208)、ReverTra Ace (2 X 17)、miScript II RT Kit (2 X 57)、ほか試薬 210千円 平成24年度予算の残額、483156円は物品として3月に納入され、平成25年4月に支払された。購入した試薬はmiScript Primer Assay、miScript SYBR Green PCR Kit、miScript II RT Kitである。
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