2013 Fiscal Year Research-status Report
肺癌化学療法におけるマイクロRNAのバイオマーカーへの応用研究
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24590174
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柴山 良彦 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90593822)
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Keywords | 肺癌 / 大腸癌 / マイクロRNA / バイオマーカー |
Research Abstract |
目的: 遺伝子をコードしない20塩基程度のマイクロRNA(miRNA)は相補的なメッセンジャーRNAと部分的にハイブリダイゼーションし、メッセンジャーRNAから蛋白質への翻訳を制御するという極めてユニークな発現調節機構に携わっていると考えられている。がんにおいてもマイクロRNAはがんの発生、悪性化、転移など、重要な役割を担っていることが示唆されている。本研究では13名の肺癌患者と71名の大腸癌患者における血漿中miRNAと治療効果の関係について調べた。 方法: miRNA 21, 26a, 34a, 98, 101, 101*, 124*, 126, 126*, 210, 217 と630の発現について、がんの悪性化と関係しているEZH2とMFGE8のメッセンジャーRNA(mRNA)についても分析した。 結果: 肺癌患者においてmiRNA 101*の低発現患者では全生存率が低下すること、大腸癌患者においてMFGE8の発現量が完全切除群の患者において切除不能の患者群より有意に低いこと、切除不能の大腸癌患者においてmiRNA 26aの高発現およびmiRNA 124*の低発現患者の群では全生存率が低下することが認められた。miRNA 124*の前駆体導入によりstructural maintenance of chromosomes 4 (SMC4) およびLow density lipoprotein receptor-related protein 1B (LRP1B)の発現が低下すること、細胞増殖率が低下することも認められた。 結論: miRNA 101*、miRNA 26a、miRNA 124*は肺癌あるいは大腸癌の予後に影響を及ぼしている可能性が、MFGE8の発現量は大腸癌のバイオマーカーとして応用できる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は大腸癌および肺癌患者での生存率との関係、in vitroでの機能研究を行い、以下の結果が得られた。2年目に達成すべき目標以上に達成されたと考えられる。 得られた結果 肺癌患者におけるmiRNA発現と全生存率との関係: miRNA 101*の低発現患者では高発現群の患者と比較して全生存率が有意に低下することが認められた。他のmiRNAでは発現量と全生存率に相関は認められなかった。 大腸癌患者における完全切除後の患者と切除不能患者におけるRNA発現量: 血漿中miRNAとmRNAの発現量について評価した。MFGE8の発現量が完全切除群の患者において切除不能の患者群より有意に低いことが認められた。 miRNA 26aおよびmiRNA 124*発現量と全生存率との関係: miRNA 26aの高発現患者では低発現群の患者と比較して全生存率が有意に低下し、miRNA 124*の低発現患者では高発現群の患者と比較して全生存率が有意に低下することが認められた。腫瘍切片から得られたmiRNA124*についても同様に低発現患者では高発現群の患者と比較して全生存率が有意に低下することが認められた。無増悪生存期間についてはmiRNA 26a、miRNA 124*とも有意差は認められなかった。他のmiRNAでは発現量と全生存率、無増悪生存期間とも相関は認められなかった。 miRNA 124*の前駆体導入による細胞機能への影響: miRNA 124*の前駆体をWiDr細胞に導入するとSMC4、LRP1BのmRNA発現量が有意に低下した。SMC4、LRP1BのsiRNA導入も同様に低下した。miRNA 124*の前駆体導入によりWiDrの細胞増殖が有意に低下することも認められたが、LRP1BのsiRNA導入による影響は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果からmiRNA124*は癌の予後因子として応用できる可能性がある。最終年度はチロシンキナーゼ阻害薬が有効なポピュレーションを見出すことを目指し、miRNA-124*とSMC4に着目して、薬物血中濃度や薬物代謝酵素、薬物トランスポーターおよびチロシンキナーゼの遺伝子変異も併せて研究を行う。チロシンキナーゼ阻害薬を使用している患者における血漿と組織診断時に採取されたホルマリン固定腫瘍サンプルからRNAを抽出し、miRNAを含む各遺伝子発現量とメッセンジャーRNAの遺伝子変異について分析する。全生存期間と無増悪生存期間および血漿中のチロシンキナーゼ阻害薬の濃度も調べ、遺伝子発現量と遺伝子変異との関係について分析する。検体からRNAを抽出しmRNAとmiRNAのcDNAを作成する。リアルタイムPCR法により発現量を定量する。大腸癌に使用するチロシンキナーゼ阻害薬であるレゴラフェニブ、あるいは慢性骨髄性白血病に用いるイマチニブ等のチロシンキナーゼ阻害薬の薬物動態、薬力学に影響すると予想されるCYP3A4、UGT1A9、P-gp、BCRP、VEGFR、PDGFR、FGFR、KIT,RET,RAF-1,BRAFの遺伝子変異はマルチプレックスPCRで増幅したアンプリコンを次世代シーケンサーRoche GS juniorを用いて配列を調べる。血中濃度はUPLCを用いて測定する。
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Research Products
(3 results)