2013 Fiscal Year Research-status Report
経口投与可能な腎排泄性薬剤の消化管吸収機構と変動性評価
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24590181
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
橋本 征也 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (90228429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能澤 孝 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00180737)
石田 和也 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (90550509)
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Keywords | 腎排泄性薬剤 / 消化管吸収機構 / トランスポーター |
Research Abstract |
医薬品を適正に使用するにあたっては、薬物血中濃度と薬効・副作用の関係を定量化するとともに、薬物動態変動機構を明らかにし、患者個々に投与設計を行うことが必要である。腎排泄性薬剤の腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスを指標として簡便に計算可能であり、一般的に静脈内投与後の血中濃度予測性も比較的良好である。しかし申請者は、経口免疫抑制薬ミゾリビンの体内動態に極めて大きな個体差があることを明らかにし、その主要因は消化管吸収率(バイオアベイラビリティ)の個体差であることを解明した。そして申請者は、「経口投与が可能な少なくとも一部の腎排泄性薬剤は、消化管吸収過程が体内動態変動の主要因となっており、消化管吸収に係わるトランスポーター蛋白の発現・機能変動が薬物吸収の個体差に関与する」との作業仮説を立て、「経口投与可能な腎排泄性薬剤の消化管吸収機構と変動性評価」を進展させる。平成25年度は、治療のためにビソプロロールを服用中の患者を対象とした臨床試験を実施するとともに、培養ヒト腸上皮LS180細胞を用いてビソプロロールの消化管吸収機構を評価した。その結果、ビソプロロールの経口クリアランスと見かけの分布容積との間に強い正の相関があることを明らかにした。すなわち、ビソプロロールの体内動態の個体差には、患者の腎機能に加え、バイオアベイラビリティ(F)の個体差が関与していることを明らかにした。ビソプロロールは初回通過代謝をほとんど受けないことから、Fの個体差は消化管吸収の個体差を反映している。そこで、LS180細胞を用いて、ビソプロロールの消化管吸収機構を評価したところ、ビソプロロールの取り込みには、未同定ではあるもののH+/有機カチオン対向輸送系が関与することが明らかとなり、このトランスポーターの活性・発現の変動がビソプロロールの体内動態の個体差に関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果を原著論文に纏め公表するとともに、学会発表を行ったことから、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
腎排泄性有機カチオンの小腸吸収機構解析:本研究の直接の対象とはしていないが、申請者らの研究室では現在も新規な薬剤2種類について、小児における薬物動態試験が企画・実施中である。その一つは抗不整脈薬フレカイニドを対象としたものであるが、この薬剤も腎排泄性であるものの消化管吸収機構は未だ不明である。そこで、ビソプロロール、フレカイニド、ジソピラミドなど、複数の腎排泄性の有機カチオンの消化管吸収機構を比較・検討する予定である。また、遺伝子導入・ノックダウン細胞を用いて、未同定のH+/有機カチオン対向輸送系の実体を解明することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究はおおむね順調に進展したが、1,335円の次年度使用額が生じた。 次年度の研究費は、薬物定量および培養細胞等を用いた基礎実験を行うための消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)