2012 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミクスにより見出した新規抗がん剤反応性予測タンパク質のバイオマーカー開発
Project/Area Number |
24590208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 小夜 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (90424134)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 個別化医療 / S100A10 / 抗がん剤 / 薬剤反応性 / バイオマーカー / オキサリプラチン |
Research Abstract |
本研究では、研究代表者が平成21~23年度 基盤研究(C)「プロテオーム解析による抗がん剤反応性関連タンパク質の解明とバイオマーカーへの応用」において新規に見出した抗がん剤感受性関連タンパク質S100A10について、その臨床応用に向けた研究を展開させる。 初年度である平成24年度は、1)臨床保存血液検体の測定を目的としたS100A10 ELISA 測定系構築、2)S100A10低発現であるヒト大腸癌細胞株COLO-320を用いたS100A10安定(過剰)発現株の作製と抗がん剤感受性の評価、3)ヒト大腸癌組織アレイを用いた免疫学的組織染色による検証に向けた準備に取り組んだ。 1.S100A10 ELISA 測定系の構築:先行研究において得られた複数候補抗体を用いて、FDAガイドラインGuidance for Industry, Bioanalytical Method Validation (2001)等にもとづき最適化条件(使用抗体の決定および測定限界、定量限界等の設定)の検討を行なった。 2.S100A10安定発現株の作製と抗がん剤感受性評価:HaloTagシステムを用いて、S100A10低発現COLO-320細胞の S100A10安定(過剰)発現株を作製し、オキサリプラチン(L-OHP)感受性を検討したところ、S100A10発現によりL-OHP感受性が有意に低下した。 3.ヒト大腸癌組織アレイを用いた免疫学的組織染色:化学療法治療歴および予後に関する情報が付帯されているヒト大腸癌組織アレイを平成24年度末に入手し、現在、先行研究にて検討した染色条件の確認作業を行っている。 次年度以降は、免疫組織学的検証、ELISA測定系構築と臨床血液検体の測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの達成度については、おおむね順調に進展していると考える。本研究では、研究代表者が平成21~23年度 基盤研究(C)「プロテオーム解析による抗がん剤反応性関連タンパク質の解明とバイオマーカーへの応用」において新規に見出した抗がん剤感受性関連タンパク質S100A10について、その臨床応用に向けた研究を展開させることを目的としている。平成24年度は、臨床保存血液検体の測定を目的としたS100A10 ELISA 測定系の構築に向けた最適化条件の検討を行いながら、並行してS100A10安定(過剰)発現系の作製と薬剤感受性評価を進めた。 S100A10ELISA測定系構築については、血清成分による測定系への妨害・干渉等により最適化条件の検討にやや時間を要している。安定発現株の作製と評価は平成26年度の予定としていたが、安定発現株の作製には時間を要すること、S100A10結合タンパク質であるannexin A2との共発現細胞株作製にあたりまずは単独発現系における導入条件等を決定しておくことが必要と考えたため、初年度より準備を進めS100A10低発現細胞COLO-320を用いたS100A10安定発現株を作製してオキサリプラチン(L-OHP)感受性の評価を行なった。その結果、S100A10発現がL-OHP感受性を低下させることが明らかとなり、今後の研究に一つのエビデンスを与えることができた。免疫組織学的染色による検証については、現段階において患者保存検体の入手が困難であったため、まずは化学療法治療歴および予後に関する情報が付帯されているヒト大腸癌予後診断組織アレイを入手し、先行研究にて検討した染色条件の確認作業を行っているところであり、来年度には評価・解析結果による検証が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的<新規に見出した抗がん剤感受性関連タンパク質S100A10の臨床応用に向けた研究の展開>、および平成24年度までの達成度を踏まえ、平成25年度以降は以下のように研究を進めていく。 1.臨床検体を用いた検証:血液検体による検証は、現在構築過程にあるS100A10 ELISA測定系の構築作業を継続し、測定系確立後に臨床保存血液検体を測定し、血液中S100A10と治療反応性や予後、副作用等との関連性について評価する。組織検体による検証は、ヒト大腸癌組織アレイの本染色を行ない、S100A10タンパク質の発現(S100A10陽性率および染色強度など)と、治療歴および予後との関連について評価する。 2.S100A10の抗がん剤感受性に関わる機能解析:初年度(平成24年度)にCOLO-320を用いたS100A10安定発現株作製によりオキサリプラチン(L-OHP)感受性の評価を行うことができたため、以降、他の抗がん剤に対する感受性評価を行うとともに、当初予定していたS100A10および結合タンパク質であるannexin A2の共発現株の作製を試み、抗がん剤感受性に関するannexin A2との関わりについて検討する。 3.大腸癌以外のがん種における検討:肺がん、すい臓がんなど、白金系抗がん剤を治療に用いるがん種におけるS100A10発現量と抗がん剤感受性について各種がん細胞株を用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請書における、平成24年度分の内訳のうち、研究成果発表のための旅費として50,000円を申請していたが、平成24年度の研究成果は、学会発表ではなく年度末に論文作成を行なったため、この旅費を利用しなかった分がほぼ次年度使用額(77,205円)に相当する。従って、この次年度使用額はこの論文投稿に関わる費用に充てる。 平成25年度分として交付申請した直接経費1,300,000円については、引き続きS100A10 ELISA測定系作製のためのイムノプレートやタンパク質試薬購入などの他、S100A10安定発現細胞株の作製および培養に関わる消耗品(血清、培地、ディッシュ、チューブ、ピペットなど)、またヒト組織アレイの免疫学的組織染色に必要な抗体やその他の試薬、画像解析に関わる費用など、主に物品費(消耗品)に充てる予定である。
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