2012 Fiscal Year Research-status Report
乳がん細胞の抗がん剤耐性化に関与する薬物代謝酵素の役割
Project/Area Number |
24590217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
小倉 健一郎 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (10185564)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乳癌 / 抗がん剤耐性化 / タモキシフェン / グルクロン酸抱合 / MCF-7 / 抱合反応 / エストロゲン受容体 / UGT |
Research Abstract |
本研究計画の第一の目的である、乳癌細胞中における UGT1A4 の過剰発現によって生じたタモキシフェン(TAM)耐性化の機構を明らかにするため、UGT1A4 発現 MCF7 細胞 (MCF-7-UGT1A4)における TAM 代謝ならびにその動態を検討した。すなわち、TAM の N-グルクロン酸抱合反応の促進そして排泄による TAM の細胞内濃度減少について検討した。その結果、TAM存在下において培養したMCF-7-UGT1A4細胞では、wild type MCF-7細胞と比較し、細胞内 TAM濃度は低下していた。そして、同条件下においてTAM代謝物の同定を行ったところ、MCF-7-UGT1A4細胞においてTAM N+-glucuronideが生成していた。また、この TAM N+-glucuronideはすみやかに細胞外へ排泄されていた。さらには細胞中 TAM蓄積量の測定を行ったところ、MCF-7-UGT1A4細胞では wild type MCF-7細胞に比べて、細胞中 TAM蓄積量は有意に減少していた。これらのことから、UGT1A4によるTAMのN-グルクロン酸抱合がTAM耐性を発現するメカニズムの一つであることが明らかになった。 一方、TAM 耐性化した MCF7-1A4 は、人為的に UGT1A4 を発現させたものであるが、実際に TAM 耐性化した乳癌細胞で、その耐性化が UGT1A4 発現によるものが存在するかを明らかにする必要がある。 そこで本研究計画の第二の目的として、MCF7 細胞を死滅しない程度の濃度の TAM 存在下で長期間培養し、生じる TAM 耐性 MCF-7細胞を作成した。現在作成開始より10ヶ月程度が経過し、耐性細胞が構築されつつある段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目的としたUGT1A4発現MCF-7細胞において、予想されたメカニズムの通りにTAMの細胞内濃度の減少に伴い細胞外TAM N+-glucuronideが上昇しており、UGT1A4によるN-グルクロン酸抱合反応がTAM耐性化機構の一つであることが実証された。 TAM耐性MCF-7細胞の作成は、概ね1年以上かかることが報告されており、第二の目的である耐性細胞は順調に作成されつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の通りTAM 耐性 MCF7 細胞の樹立を継続して行う。耐性細胞株の樹立は過去に報告があり、現状でTAMにより死滅しない細胞が生育しているので、TAM 耐性細胞株を得る可能性は 高いと考えられる。耐性株が樹立、クローン化された場合には、拡大培養を行い、各クローン株 について TAM の代謝能を検討する。さらに、細胞のミクロソームを調製し、TAM に対する N-グルクロン酸抱合活性の測定ならびにウェスタンブロット分析により UGT1A4 の発現を検討す る。 得られた TAM 耐性 MCF7 細胞株の各種遺伝子群について、野生株との発現様式の比較を行う。 すなわち、MCF7-1A4 の遺伝子発現検討と同様に、エストロゲン受容体 (ERα, ERβ)、タンパク 質リン酸化酵素(PKC)、HER-2、プロゲステロン受容体、アポトーシス制御関連遺伝子群(API5, BNIP3)などの発現変動を real-time PCR 法により測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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