2013 Fiscal Year Research-status Report
虚血誘導性G蛋白活性調節因子を介する病態制御機構の解明
Project/Area Number |
24590280
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 元彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40292122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 直記 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40278362)
佐藤 麻紀 愛知医科大学, 医学部, 助教 (60351102)
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Keywords | シグナル伝達 / G蛋白質 / 心筋保護 / 循環器・呼吸器 |
Research Abstract |
前年度の研究により、GβγサブユニットはAGS8のC末端領域 (150アミノ酸)に結合することが明らかとなったので、同部位のアミノ酸配列を基に29-30アミノ酸のペプチドを複数合成した。それぞれのペプチドがAGS8-Gβγの相互作用を阻害するのか、 in vitroのpull-down assayで評価した。すなわち、AGS8のC端領域をGST融合蛋白(GST-AGS8-C)として大腸菌で作製し、そこに合成ペプチドとともに精製Gβγ加え、GST-AGS8-Cに結合したGβγ量をimmunoblotで比較検討した。その結果、2つのペプチドがAGS8-Gβγの相互作用を阻害した (IC50, CP1:6.73x10^-6 M; CP9:2.77 x10^-6 M)。 今回の研究ではCP9をAGS8ペプチドとし、その生物学的効果を検討した。AGS8ペプチドを培養心筋細胞に投与し、低酸素誘導心筋傷害に対する抑制効果を検討したところ、AGS8ペプチドは効果的に低酸素誘導心筋アポトーシスを抑制した。すなわち、AGS8ペプチドは低酸素暴露による活性型カスパーゼ3の増加およびTUNEL陽性細胞の増加を抑制した。また、AGS8が心筋アポトーシスを誘導する上で重要であるコネキシン43の透過性、局在に対するAGS8ペプチドの効果も検討した。AGS8ペプチドは低酸素下で心筋アポトーシスに関係するコネキシン43のインターナリゼーションと透過性の低下も抑制した。 これら結果は、心筋細胞におけるAGS8-Gβγシグナルが虚血心筋保護の治療標的として有望であること、また本課題で用いた方法により、G蛋白活性調節因子を介する情報を制御可能であること示した。この成果は複数の学会において発表し、成果は論文として公表した(Sato,M. et al. PLoS One 9(3):e91980, 2014.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度当初に予定した計画はすべて達成することができた。合成ペプチドを用いたpull-down assayによるAGS8-Gβγ結合阻害実験も明快な結果を得ることができた。また、心筋細胞へのペプチドの導入、アポトーシス防止効果も計画通りの結果を得ることができ、論文発表につなげることができた(Sato,M. et al. PLoS One 9(3):e91980, 2014.)。
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Strategy for Future Research Activity |
組織でのペプチド導入効率を向上させるため、より短いペプチドを作製し細胞膜透過性修飾を付加すること検討する。また、 ペプチドの心筋保護効果を、灌流心を用いてin vivoで検討する。 1.AGS8-Gβγ相互作用を抑制する効率的なペプチドの作製: 今後は同定したペプチド(30アミノ酸)をもとに、細胞内への導入が有利なより短いペプチド(20アミノ酸程度)を作製し、これのAGS8-Gβγ相互作用阻害効果を検討する。20アミノ酸程度の効果的なペプチドが同定されれば、各種修飾を付加して細胞膜透過性ペプチドを作製する。すなわち、代表的な細胞膜透過性修飾であるTAT-修飾をはじめ、数種類の修飾をN端あるいはC端に付加する。細胞膜透過性は、昨年同様蛍光色素を付加したAGS8ペプチドの細胞内取り込みを蛍光顕微鏡で判定する。 2.摘出灌流心におけるAGS8ペプチドの虚血心筋傷害防止効果: AGS8ペプチドの効果をラット摘出灌流心で検討する。ラット摘出灌流心での虚血心筋傷害への薬効評価は多くの研究で用いられている確立された方法である。ペプチドを導入試薬とともに灌流心に投与し、その後心筋梗塞を起こし、その大きさを心筋逸脱酵素量および病理学的に検討してペプチドの効果を判定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究実績に記載したとおり実験結果を比較的順調に得ることができ、ペプチド合成を繰り返すことが少なかったため、合成に要する費用が軽減した。また、精製Gβγサブユニットを用いたGST pull-downアッセイも、試行回数が当初予定より少なくて済み、結果として精製Gβγサブユニットの購入量が少なくなり、これに要する費用が軽減した。 助成金は平成26年度分と合わせて、より短鎖のペプチド合成に使用する予定である。今後の研究の推進方策に記載したペプチド合成は試行錯誤の部分があり、この部分に助成金を注力する予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Combination therapy of cisplatin and inductive hyperthermia using ferucarbotran (Resovist®) in human oral cancer cells.2014
Author(s)
Sato I, umemura M, Mitsudo K, Kioi M, Nakashima H, Iwai T, Feng X, Oda K, Miyajima A, Makino A, Iwai M, Fujita T, Yokoyama U, Okumura S, Sato M, Eguchi H, Thonai I, Ishikawa Y
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Journal Title
Journal of Physiological Sciences
Volume: 64
Pages: 177-183
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Disruption of Epac1 decreases phosphorylation of phospholamban and protects the heart against tresses.2014
Author(s)
Okumura S, Fujita T, Cai W, Jin M, Namekata I, Mototani Y, Jin H-L, Ohnuki Y, Tsuneoka Y, Kurotani R, Suita K, Kawakami Y, Hamaguchi S, Abe T, Kiyonari H, Tsunematsu T, Bai Y, Suzuki S, Hidaka Y, Umemura M, Ichikawa Y, Yokoyama U, Sato M, Ishikawa F, Izumi-Nakaseko H, Adachi-Akahane S, Tanaka H, Ishikawa Y.
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Journal Title
Journal of Clinical Investigation
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] シンポジウム“心筋組織の恒常性維持機構とその破綻(オーガナイザー:佐藤元彦, 黒瀬等)” 心筋虚血関連G蛋白活性調節因子(AGS8)由来ペプチドによる低酸素誘導心筋アポトーシスの制御.
Author(s)
佐藤元彦, 鈴木洋子, 佐喜眞未帆, マムン アル アブドゥラ, 林寿来, 岩瀬敏, 犬飼洋子, 西村直記, 佐藤麻紀, 清水祐樹.
Organizer
第91回日本生理学会大会
Place of Presentation
鹿児島大学郡元キャンパス(鹿児島市郡元1-21-24)
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[Presentation] 病態特異的G蛋白活性調節因子の同定と解析:多発性嚢胞腎に発現するG蛋白活性調節因子の同定.
Author(s)
鈴木洋子, 佐喜眞未帆, マムン アル アブドゥラ, 林寿来, 岩瀬敏, 犬飼洋子, 西村直記, 佐藤麻紀, 清水祐樹, フランク パーク, 佐藤元彦.
Organizer
第91回日本生理学会大会
Place of Presentation
鹿児島大学郡元キャンパス(鹿児島市郡元1-21-24)
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[Presentation] 半側顔面多汗の病態解析.
Author(s)
犬飼洋子, 岩瀬敏, 桑原裕子, 清水祐樹, 西村直記, 佐藤麻紀, 菅屋潤壹, 佐藤元彦.
Organizer
第91回日本生理学会大会
Place of Presentation
鹿児島大学郡元キャンパス(鹿児島市郡元1-21-24)
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[Presentation] Pathogenesis of the hemifacial hyperhidrosis.
Author(s)
Inukai Y, Iwase S, Shimizu Y, Sato Maki, Nishimura N, Onizuka C, Kuwahara Y, Sugenoya J, Sato M.
Organizer
XXI World Congress of Neurology
Place of Presentation
Reed Messe Wien GmbH, Congress Center (Messeplatz 1, Vienna, Austria)
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[Presentation] 局所性多汗症の病態解析.
Author(s)
犬飼洋子, 岩瀬敏, 西村直記, 佐藤麻紀, 清水祐樹, 桑原裕子, 菅屋潤壹, 佐藤元彦.
Organizer
第54回日本神経学会学術大会
Place of Presentation
東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内3-5-1)
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