2013 Fiscal Year Research-status Report
酸感受性イオンチャネルを介した新規内分泌調節機構の解明
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24590281
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
植田 高史 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90244540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20326135)
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Keywords | 刺激分泌関連 / イオンチャネル型オーファン受容体 / 下垂体 / 副腎髄質 |
Research Abstract |
1)下垂体におけるASIC1bとASIC4については、より感度の高いRI標識cRNAプローブを用いたin situ ハイブリダイゼーション法により、下垂体前葉にASIC1bとASIC4のmRNAが共発現していることを見いだした。細胞種の同定を試みたが、ともによい抗体等がないこともあり、現在までに細胞種を同定するに至っていない。一方、その生理学的意義を探るため、ASIC4とASIC1bを強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用いてASIC4のASIC1bに対する機能修飾について電気生理学的に検討した。ASIC4存在下ではASIC1b単独ではみられないsustained currentが観察され、ASIC1bとASIC4が共存する細胞では、そのチャネルの活性化により一過性および持続性の応答が起こり、刺激に対する細胞応答が増強していることが示唆された。 2)ASIC4については市販のASIC4相同組換済ES細胞を利用する方法を含めノックアウトマウスの作製を進めており、今年度そのキメラマウスを得た。 3)ASIC以外の酸感受性を持つ分子としてTRPVチャネルが知られている。これに関連して我々はTRPV2が下垂体後葉の一部の後葉細胞に発現していることを確認し更に詳細な解析を行った。TRPV2は後葉の全細胞の約13.7%に発現し、その6%はGFAP、14%はvimentin、23%はS100B陽性細胞と一致していたが、約半数は検索したマーカーとは一致せず、後葉細胞の新しいサブタイプであることが示唆された。カルシウムイメージング解析においては、全細胞数の約12%がTRPV2のagonistであるprobenecidに応答し、TRPV2のnonselective blockerであるruthenium redで有意に抑制されることから、下垂体後葉組織には機能的なTRPV2が発現していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ASICチャネルと同時に解析を開始した「下垂体後葉におけるTRPV2」については予定通りに解析を終了し、TRPV2が長年示唆されていた下垂体後葉細胞における浸透圧センサーの候補分子として機能している可能性を確認できた。 2)ASIC4のノックアウトマウスの作製に関しては、今年度末に予定通りに複数のキメラマウスを得ることができた。 3)ASIC4のASIC1aやASIC1bへの関与については、in vitroの強制発現系で、ASIC4がASIC1bの電気生理学的性質を修飾し、活性の程度を増強していることが電気生理学的解析により明らかとなった。 4)下垂体におけるASIC (ASIC1bとASIC4)は当初下垂体中葉に豊富に発現していることが示されたので、その役割をまずα-MSH分泌の影響で評価しようといろいろ試みたが、このホルモンはわずかなストレスでも分泌が増減するため、ASICが機能しているかどうか十分な証拠を見いだすことが出来なかった。一方、ASIC1bとASIC4は下垂体中葉だけでなく、下垂体前葉でも発現していることが今年度の詳細なmRNAの発現解析で明らかとなった。下垂体中葉が人ではほとんど存在しないのに対し、下垂体前葉は主要な内分泌器官であり、この部位でのASICの働きを解析することは重要である。 5)昨年RT―PCRやin situ ハイブリダイゼーション法によりマウス副腎髄質の細胞にASIC4が発現していることが示されたが、今年度の解析で、この細胞でのASIC4は、ASIC1aと共存していることが確認された。副腎髄質細胞の細胞株としてPC12細胞が様々な現象のモデル細胞として頻用されている。副腎髄質同様、この細胞においてもASIC1aが発現しており(Chu et al., J Neurophysiol, 2002)、内分泌細胞におけるASIC1aとASIC4の機能を探る上で最適な実験系を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
1)下垂体..ASIC4とASIC1bがどの下垂体前葉細胞に発現しているかを形態学的に解析する。別のアプローチとして、下垂体前葉の細胞株(AtT20, GH3など)を購入し、これを使用して行う解析も平行して行う。発現が確認された細胞株により、ASICの機能的発現、分泌機能への影響などを解析していく。 2)ASIC4ノックアウトマウス..キメラマウスからジェノタイピングによりポジティブな個体を選別し、繁殖させて実験に供する。ASIC4は脳の様々な部位でも発現しており、embryo lethalの可能性もあり得るが、根気強く継続して進めていく。個体が得られた場合、表現型を形の如く組織像にて確認するとともに、注目している内分泌機能を一般的な血液検査から始め進めていく。 3)in vitro解析..ASIC1a単独、ASIC1a+ASIC4, ASIC1b単独、ASIC1b+ASIC4を安定して観察記録できる系を確立して、ASIC4の効果を確認するとともに、FMRFamide などのニューロペプチドによりその機能が修飾されないか確認する。 4)副腎髄質..ノルアドレナリン細胞やアドレナリン細胞に発現するため、ホルモン分泌への影響を調べる。PC12細胞においてはASIC1aを発現しているため、その活性化により細胞内にカルシウムイオンの流入が起こる。カルシウムイオンが引き起こすこの細胞の現象におけるASICの意義を探る。さらにPC12細胞はNGF存在下でニューロン様の細胞に分化し突起を伸展するようになる。ASIC4がこれにどのように関与するのかをsiRNAを用いたノックダウン実験で解析する。 5)ASIC4の生体機能..ASIC4を活性化するリガンドの探索を継続して進めるとともに、他受容体とのカップリングについてもその可能性を模索する。例えば、TRPV2とASIC4は脳視床下部室傍核(PVN)のニューロンに共発現している。ASIC4はTRPV2と会合するのか? 会合した場合、TRPV2の機能をどのように変化させるのかを検討する。
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Research Products
(1 results)