2012 Fiscal Year Research-status Report
低酸素誘導因子HIFが転写誘導する接着分子遺伝子の細胞遊走能亢進における役割
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24590364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
神奈木 玲児 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (80161389)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低酸素 / CD44 / ヒアルロン酸 / セレクチン / DNAマイクロアレイ / 細胞運動能 / shRNA / ホーミング |
Research Abstract |
細胞接着は多くの疾患の病態生理に深く関連している。従来から我々は低酸素によって細胞接着分子に大きな変化が誘導されることを見いだし、特に糖鎖性の細胞接着分子に焦点を合わせてその分子生物学的背景を調査解析してきた。今年度は、低酸素によって細胞の運動能・遊走能が著明に亢進することから、糖鎖性の細胞接着分子の合成関連遺伝子に対するshRNAを細胞に導入して、低酸素による細胞運動能の亢進を引き起こしている遺伝子の同定を試みた。検索する遺伝子は、以前に低酸素で転写誘導される遺伝子をDNAマイクロアレイによって網羅的に調査した際に検出されたものから選択した。検索した遺伝子のうちに、低酸素による細胞運動能の亢進が当該遺伝子のshRNA導入によって有意に抑制されるものを複数認めた。今年度はそのうちから特にCD44とその特異的リガンドであるヒアルロン酸糖鎖との結合を介した細胞接着に関与する分子の遺伝子のshRNAによる抑制に焦点を合わせ、その細胞運動能に対する抑制機構を解析中である。現在の所、これらのshRNAは、細胞の運動能・遊走能のみならず、細胞増殖能にも有意の抑制的影響を及ぼすことが判明しつつあり、諸種疾患の治療のターゲットとして好適であることを示す成績が得られているので、今後in vivo実験に応用してゆく予定である。治療対象としては、虚血性疾患に加えて、炎症性疾患においても低酸素誘導因子の関与が強いことが報じられているので、炎症性疾患をも対象に含める予定である。また、虚血性疾患や炎症性疾患の治療においては、炎症性細胞の遊走の阻止が重要と考えられることから、今年度は各種炎症性疾患における免疫細胞の体内でのホーミング動態を解析し、治療のターゲットとなる遊走能の高い炎症性細胞の亜集団を同定し、その細胞集団に選択的に発現する細胞接着性糖鎖の同定をも試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三年間の研究計画の初年度においてすでに複数の細胞接着関連遺伝子が低酸素による細胞運動能の亢進に関与していることが明らかになり、治療のターゲットの候補分子が複数得られたので、研究計画はおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに得られた候補分子について、これらが低酸素による細胞運動能の亢進にどのように関与するのか、その機構を今後順次解明するとともに、適切な阻害剤でこれらの候補分子の機能が阻害されるかどうかを調べることが、次の研究目標となると考えられる。また、すでに得られた候補分子以外に、新規の分子をさらに検索することも、次年度以降の重要な研究課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に変更はなく、また、本年度から次年度に繰り越す研究費はないので、当初の計画通りに進行する。すなわち、低酸素による細胞運動能の亢進をもたらす細胞接着分子の遺伝子の同定と、その運動能亢進機構の解析をさらに進める。あわせて阻害剤の探索をさらに重ねて、より有効な低分子化合物のスクリーニングを開始する。 従来から我々は糖鎖が低酸素下における血管内皮との接着亢進に関与することを解明してきた。低酸素による細胞運動能の亢進を抑制できる候補遺伝子のうち、特に糖鎖に関わる遺伝子に注目してさらに検索を進める。低酸素による糖鎖変化が運動能の亢進にも深く関与するかどうかを明らかにし、そのメカニズムの解明にも力を入れる。また、我々の予備的実験の結果から、HIFの作用効果の一部は、HIFと他の転写因子との協同作用によってもたらされることが明らかになっている。HIFと他の転写因子との協同作用についても詳しく検索する予定である。
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Research Products
(5 results)