2014 Fiscal Year Research-status Report
GATA転写因子群による腎臓機能維持を介した慢性腎臓病の予防戦略
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24590371
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森口 尚 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10447253)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腎臓病 / 炎症性サイトカイン / GATA転写因子 / 腎集合管細胞 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
1, 腎臓病時の腎内での炎症性サイトカインは、遊走してくるマクロファージ等の炎症細胞からの分泌に加え、腎実質の細胞に由来する割合も高いと考えられてきたが、腎内でのいずれの細胞が、サイトカイン産生を担っているかは、これまで明らかでなかった。 2, 腎臓病時の炎症性サイトカインの、腎内での起源を調べたところ、主に集合管細胞より産生されていることが明らかとなった。 3, 我々は昨年度までの解析から、腎集合管細胞にジンクフィンガー型転写因子GATA2が高発現していることを見いだした。そこで、転写因子GATA2の尿細管細胞特異的な欠損マウスを用い、発現アレイ解析を行うことで腎集合管細胞内でGATA2の制御下にある遺伝子群の網羅的な解明を試みた。その結果、種々の炎症性サイトカイン関連遺伝子群の発現が、著しく低下していることを見いだした。 4, GATA2を強制発現したマウス腎集合管由来細胞株のmIMCD細胞では、LPS(lipopolysaccharide)刺激時の炎症性サイトカイン発現誘導が、著しく増強することを見いだした。この結果はGATA2が炎症誘導時の腎集合管からのサイトカイン産生を、正に制御する機能を持つことを示す。 5, 尿細管細胞特異的なGATA2欠損マウスでは、虚血再還流刺激時の腎障害が軽微であることを見いだした。さらに本欠損マウス腎では野生型マウスと比較し、炎症細胞の遊走が軽減しており、腎内炎症性サイトカインレベルも低く保たれていることを見いだした。 6, 公開されているChIP-seq解析データから、複数のサイトカイン遺伝子群の制御領域に、GATA因子の結合部位が存在することが明らかとなった。これらの結果は腎臓障害時に、GATA転写因子が腎集合管細胞において、炎症性サイトカイン遺伝子の発現を活性化させることにより、腎臓病に伴う炎症を亢進させる機能をもつ可能性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は、GATA2が造血器系および腎泌尿器系の発生に重要な役割をもつ因子であることを、明らかにしてきた。一方、成体腎臓においてもGATA2は高発現していることが知られていたが、その生理機能に関しては全く明らかではなかった。昨年度までに我々は、GATA2が腎集合管での水チャネルAqp2の発現レベルを維持することにより、生体の体液バランス維持機能に深く関わることを明らかにしてきた。 近年になり、家族性の原発性免疫不全症であるMonoMac症候群において、GATA2遺伝子変異が病態形成の原因となっていることが報告され、GATA2と生体免疫機能との関連が徐々に明らかとなってきた。一方、腎臓病時の腎内での炎症環境形成のメカニズムは永年に渡り未解明の課題であった。今年度我々は、遺伝子改変マウスを用いた一連の解析から、集合管細胞においてGATA2が炎症性サイトカイン遺伝子の発現レベルを制御することにより、腎内での炎症環境形成に深く関わることを明らかにした。この結果は、当初は予想出来なかったものであり、我々の用いているユニークな遺伝子改変マウスシステムと、発現アレー解析により初めて明らかとなった。今後、このGATA2によるサイトカイン遺伝子群の発現制御メカニズムをより詳しく解析することで、抗炎症治療の新たな分子基盤開発につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の我々の解析から、GATA2が炎症性サイトカイン遺伝子群の発現を亢進させる機能を持つことが明らかとなった。mIMCD細胞を用いた実験から、GATA2強制発現mIMCD細胞株では、LPSによる炎症誘導時に、炎症性サイトカイン遺伝子群の強い発現誘導が惹起されることが解った。このときGATA2タンパク質の発現レベルには大きな変化はないことから、炎症性シグナルによるGATA2タンパク質に対する何らかの翻訳後修飾や、共役因子がリクルートされる可能性が考えられる。今後の解析でこれらの可能性に関して、検証を進めていく。また、腎集合管細胞内での転写因子GATA2の標的遺伝子に関しては、多くが未解明のままである。それら標的遺伝子群を網羅的に明らかにするために、内在性GATA2を発現するmIMCD細胞株を用いたChIP-seq解析を行うことが重要になると考える。今後、GATA因子阻害剤等の開発が進行すれば、腎集合管でのGATA2機能を抑制することにより、サイトカイン遺伝子群の発現を抑制し、腎内の炎症レベルを抑制する新規の抗炎症療法の開発につながる可能性があると考える。
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Causes of Carryover |
実験に用いる遺伝子改変マウスの繁殖が予想よりも遅く、繁殖用マウスの購入時期を延期する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、遺伝子改変マウスの繁殖が進行すると考えられるため、必要な野生型マウスの購入にあてる。
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[Journal Article] MafB promotes atherosclerosis by inhibiting foam-cell apoptosis.2014
Author(s)
Hamada M, Nakamura M, Tran MT, Moriguchi T, Hong C, Ohsumi T, Dinh TT, Kusakabe M, Hattori M, Katsumata T, Arai S, Nakashima K, Kudo T, Kuroda E, Wu CH, Kao PH, Sakai M, Shimano H, Miyazaki T, Tontonoz P, Takahashi S.
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Journal Title
Nat Commun
Volume: 5
Pages: 3147
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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