Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 原発性胆汁性肝硬変(PBC) における胆管細胞のオートファジー異常の発生要因と役割を明らかにして, オートファジー異常の制御による新たなPBC 治療法の分子基盤の確立をめざしている. 本年度は, オートファジー異常と細胞老化の発生因子として, 小胞体ストレスの関与を中心に検討した. ヒト肝組織を用い, 免疫組織化学的手法で, PBCと対照肝の胆管細胞における小胞体ストレス関連分子glucose-regulated protein 78 (GRP78) and protein disulfide isomerases (PDI), オートファジー関連分子LC3, p62,老化指標p16INK4a, p21WAF1/Cip1の発現と胆管病変との関連を検討した.また, 培養胆管細胞に小胞体ストレス誘導剤 Tunicamycin (TM), 胆汁酸GCDCなどを加え, 小胞体ストレス, オートファジー, 細胞老化の発生状況を検討した. さらに, Tauroursodeoxycholic acid (TUDCA)前処理の効果を解析した. PBCの肝内小型胆管では,胆管炎部を中心に,高率に, PDI, GRP78発現亢進, オートファジー亢進と異常, 細胞老化指標p16INK4a, p21WAF1/Cip1発現亢進を示した. GCDC, TMなどを加えた培養胆管細胞には,小胞体ストレス指標mRNA発現の亢進 , オートファジー亢進と異常, 細胞老化誘導を認めた. TUDCA前処理によって, 小胞体ストレスの有意な抑制, 細胞老化の抑制が見られた. PBCにおけるオートファジー異常, 細胞老化の発生には, 小胞体ストレスが関与することが示された. また, TUDCA は小胞体ストレス抑制を介してオートファジー異常, 胆管細胞老化を抑制し, 胆管障害や胆管を中心とする免疫病態を軽減する可能性が示唆された.
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