2014 Fiscal Year Research-status Report
治療の観点からみた卵巣癌の特徴付け:低酸素関連因子の発現に基づいた治療の個別化
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24590424
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
安田 政実 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50242508)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 卵巣腫瘍 / 低酸素環境 / HIF-1α / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに上皮性卵巣腫瘍におけるHypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α)の発現解析から,明細胞癌が他の組織型に比して低酸素下環境で順応性が高いことを考察してきた.すなわち,このことが明細胞癌の化学療法抵抗性に関わる因子の一つで,予後不良に繋がる可能性を報告した.明細胞癌ではphosphorylated-mammalian target of rapamycin(p-mTOR)の発現が亢進していることが,TOR-HIF-1シグナル伝達系の活性化に関わっていると推察した.加えて,動物実験レベルでmTORの阻害が腫瘍の縮小にかなりの効果があることを実証してきた. 本研究は,平成21~23年度・基盤研究(C)「治療の個別化を視野においた,卵巣腫瘍における低酸素関連因子の解析」の骨幹を引き継ぎ,臨床的に実践性の高い情報が治療の現場にもたらされるよう努めてきた.そのなかで,とりわけ進行癌の予後良好群と初期癌の予後不良群を対象に,そのような転帰を決定する要因の解明を低酸素関連分子に主眼を置き,治療の観点からみた腫瘍の特徴付けを臨床病理学かつ分子病理学の両面から遂行している。 これらの一連の成果は,Int J Gynecol Cancer 23(7):1210-8, 2013での報告,ならびに「明細胞癌・第Ⅱ相臨床試験」の始動を促したことに集約される.ただし,当該試験は一旦はkickoff meetingが行われて稼働体制に入ったものの,財政的事情等が絡んで休止となっている. 現在は,HIF-1αの核内移行に必須とされるhistone deacetylase(HDAC)の発現・抑制,そしてさらには抗腫瘍効果が期待される未知の分子の発現・抑制の機序と,それらの治療標的の可能性と実践応用に力点を置いた戦略へと展開してきている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度から26年度にかけて,「ヌードマウス移植モデルマウスにおける薬剤評価と血管新生への影響についての解析」を継続的に行った.本課題では,当初“5種類の明細胞癌培養株”を用いる計画であったが,移植後の生着が思うように捗らずかなりの時間を費やしたが,結果的にはRMG-1のみでの成果をまとめることとなった.すなわち,「9.研究実績の概要」で紹介したように,Int J Gynecol Cancer 23(7):1210-8, 2013では,1種類の培養細胞を用いた動物実験の結果を報告した.
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Strategy for Future Research Activity |
卵巣癌は依然として進行癌の状態で初発症状を呈することが多い。このため、手術療法のみでの根治が困難な例では,術前・術後の補助療法として高い抗腫瘍効果が望める薬剤の選択,再発時における薬剤の変更など,腫瘍(=患者)の個別化に根ざした治療法の開発はいずれの臓器癌においても今後も途絶えることの課題である。このことは、本研究の根本であると同時に、あらゆる悪性腫瘍にも当てはまる. 前回の基盤(C)研究(平成21・22・23年度)を含めて本研究に取り組み始めて以来、「卵巣癌の組織型は種々の形質発現を根本的に左右する因子である」ことを改めて我々は学んだ.しかしながら,同一組織間での乖離は勿論のこと,非定型的な組織型を示す例では,これらが持つ腫瘍特性=heterogeneity(diversity)の深さや幅は容易には証明できない.病理診断現場からの目線で、病理医がアプローチしうる手段、視点、洞察の独創性・意義を以下のごとくに再度考える(27・28・29年度基盤(C)研究として引き継ぐ). 腫瘍特性を抗腫瘍効果の観点から見つめ,解析の根本を低酸素環境での様々な分子の発現・抑制の解明に置くこと,かつ臨床現場への還元では,複数の治療標的候補が個々に存在することを情報発信していく.また,その基軸となる低酸素誘導分子HIF-1の抑制においては“HIF-1非機能化による腫瘍の休眠”をテーマとしている.
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Causes of Carryover |
上記「11.現在までの達成度」で述べたように,「ヌードマウス移植モデルマウスにおける薬剤評価と血管新生への影響についての解析」での遅滞が,下記の「平成26年度に予定していた実験」への着手をほぼ不可能にした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「卵巣癌培養株におけるRNAiによるHIF-1α抑制と腫瘍縮小効果の検討」 基本プラスミドベクターpBAsiおよびAdenovirus Expression Vector Kit(Dual Version)を用い,2本鎖オリゴDNAを調整する.コントロール配列としてHIF-1αターゲット塩基配列の塩基組成をランダムに並び替え,配列のホモロジー検索を行い使用細胞の遺伝子と相同性を持たないことを確認する. プラスミドベクターのRNAi効果が検証されたら,プロモーター+ヘアピン型RNA配列を乗せ換えて,EcoRVで切り出してアデノウイルス作成用コスミドpAxcwのSmi Ⅰ(Swa Ⅰ)部位に挿入し,siRNA-HIF-1α発現アデノウイルスベクターを作成する.得られたsiRNA-HIF-1α発現アデノウイルスを培養株に感染させる.最後にsiRNA-HIF-1α発現アデノウルスベクターによるRNAi効果の確認,下流遺伝子発現への影響,ならびに各因子の抑制を通じた腫瘍縮小効果の有無についての検討を行う.
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[Journal Article] Effect of lymphovascular space invasion on survival of stage I epithelial ovarian cancer.2014
Author(s)
Matsuo K, Yoshino K, Hiramatsu K, Banzai C, Hasegawa K, Yasuda M, Nishimura M, Sheridan TB, Ikeda Y, Shiki Y, Mabuchi S, Enomoto T, Kimura T, Fujiwara K, Roman LD, Sood AK.
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Journal Title
Obstet Gynecol.
Volume: 123
Pages: 957-965
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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