2012 Fiscal Year Research-status Report
血管平滑筋細胞の多彩な形質転換を制御するリゾフォスファチジン酸シグナリングの解析
Project/Area Number |
24590462
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
加藤 誠也 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60268844)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 血管平滑筋細胞 / 形質転換 / 動脈硬化 / リゾフォスファチジン酸 |
Research Abstract |
血管平滑筋細胞は血管壁の最大量の構成細胞であり、動脈硬化症の発症から進展の段階において種々の形質転換を示し組織病変の形成に関与する。本研究は軽度酸化型低比重リポ蛋白の成分でもあり、血中の酵素オートタキシンによってリゾフォスファチジルコリンからも生成される生理活性脂質、リゾフォスファチジン酸(LPA)の血管平滑筋細胞の形質転換に与える影響について、従来より知られていたEdg型レセプターシグナルに対して最近、同定された新規非Edg型レセプターであるLPA4のシグナリングの意義を明らかにし,形質転換、ひいては動脈硬化制御の可能性を論じるものである。ラット大動脈由来の培養平滑筋細胞にLPAを添加しWST-1 assayで増殖能を評価、自他の既報の如く100nM-1uM程度で最大刺激効果を認めた。続いて増殖型、静止型の形質転換モデルを作製しRNAを抽出、LPA1-6の発現をreal-time PCRで検討した。LPAレセプターの発現様式は両形質で著変なく、LPA4発現量はLPA1発現の2-3倍程度であったが、LPA1の発現はLPA刺激により増大する傾向を認めた。本年度は増殖型、静止型の古典的形質転換モデルに加え、IL-4によるVCAM-1発現を指標とした炎症型形質モデル、過剰の中性脂質蓄積に誘導される老化型形質モデルを作製し、種々の形質発現時のLPAレセプター利用度の変化について検討した。また本年度はLPA4シグナルの役割を検討するために外来性にGFP tagを付与したヒトLPA4遺伝子を発現する組換えアデノウイルスベクターを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、立案時に計画したように多彩な平滑筋細胞の形質転換をin vitro培養系で再現するシステムについてはほぼ確立した。血清添加量、細胞密度改変による古典的静止型増殖型形質転換に加え、サイトカインやLPA自体による炎症性形質の誘導、長期培養や脂質添加による老化型形質や泡沫化形質の誘導、アンギオテンシンII添加による細胞肥大の誘導を確認している。またこれらの形質発現時のLPA1-6の発現変化をモニターするreal-time PCRの系も確立している。LPAレセプターは低分子量G蛋白に共役する7回膜貫通型レセプターであり、その下流には複雑なシグナリング経路が想定されているが、それらの活性状況をスクリーニングするのに有用なRho(ROCK) 阻害剤;Y-27632、PKC阻害剤;GF109203X、MAPK阻害剤;PD98059、PI3K阻害剤;LY294002、PKA阻害剤;KT5720、p38MAPK阻害剤;SB202190、NFkB阻害剤;SN50、Rac-1 inhibitorを入手し、LPA反応性の良い扁平上皮癌細胞株SQ20B細胞でそれらの効果につき至適濃度を含めて検証した。引き続き平滑筋培養系に応用する予定である。更に本年度は、次年度に予定していた外来性遺伝子導入実験に用いるLPA4発現アデノウイルスベクターの作製を済ませており、以上の事より当初予定した研究計画はおおむね順調に進展しているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平滑筋細胞がin vitroで示す各種の形質転換モデルにおいて、基本となる形質転換の課程、そしてLPA刺激下の転写因子の活性化様式について、ルシフェラーゼアッセイを用いて検討したい。LPAレセプター下流のシグナリングは複雑であるが、低分子量G蛋白の活性化に対応して活性化する2次伝達経路についてはG12/13がRho/Rock経路、GqがPLCからIP3やPKCに至る経路、GiがRas/MAPKやPI3K/Akt経路、そしてGsがcAMP依存性に活性化される経路を担うことが示されている。特にGsについてはEdg型レセプターではなくLPA4下流で活性化される事が報告されている。更にこれらの2次伝達経路はそれぞれSRF-RE、NFAT、AP-1、SRE、CRE等の転写因子活性化を介して標的遺伝子の活性化を誘導し細胞機能の改変に働くとされており、各種シグナリング阻害剤、リン酸化部位検出抗体を用いた実験と組み合わせてLPA4下流で利用されているシグナリングを明らかにしたい。具体的には上記転写因子を恒常的に発現する培養平滑筋細胞株の樹立を計画している。また外来性LPA4遺伝子導入実験に用いるアデノウイルスベクターを用いて、一過性のLPAを高発現する細胞の形質転換の変化、あるいはその過程で用いられる細胞内伝達経路について検討したい。昨年度、ヒト喉頭癌細胞株SQ20BにおけるLPA4発現誘導により増殖能、遊走能が減弱すること、Ki16425依存性のEdg型レセプター下流のシグナリング、特にRacの活性化を介した経路に対して抑制的な作用を示す事を報告した。平滑筋細胞でも類似したメカニズムが存在するか興味深い。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
-
-
-
-
[Presentation] Ectopic wild type gene transfer successfully corrects vascular smooth muscle phenotypes of adipose tissue triglyceride lipase deficient mouse.2012
Author(s)
Yanhui Lin, Shunmei Chiba, Akira Suzuki, Satoshi Yamaguchi, Takaya Nakanishi, Hirofumi Matsumoto, Yoshihiko Ikeda, Hatsue Ishibashi-Ueda, Ken-ichi Hirano, Seiya Kato.
Organizer
American Heart Association, Scientific Sessions 2012
Place of Presentation
ロサンゼルス(米国)
Year and Date
20121104-20121108