2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590476
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
北川 昌伸 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10177834)
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Keywords | アポトーシス / 動物モデル / MCM2 / 治療モデル |
Research Abstract |
我々はC3Hマウスにおいてレトロウイルスの一つであるフレンド白血病ウイルス(FLV)の感染が放射線誘発p53依存性アポトーシスを著明に増強する実験系を見出した。FLVに感染したC3Hマウスに低線量の放射線を全身照射すると、マウスは照射後2週間で著明な貧血を起こして死亡し、骨髄造血細胞には高頻度のアポトーシスが観察される。ところがこの現象はC3H以外の系統のマウスでは起こらない。この現象に関与する宿主特異的因子を同定するため、FLV接種後に放射線照射したC3HマウスとDBAマウスの骨髄より採取した蛋白のTOF-Mass解析を行い、AcinusおよびMCM2という2つの分子がC3Hマウス特異的に見出された。 まずin vitroの実験系を用いてこの現象の機序を徹底解明し、新たなアポトーシス誘導経路に関わるMCM2の作用を明らかにするとともに、その作用機構の全貌を解明すること及びそれを応用した治療モデルの作製を目的として実験を行った。MCM2の本来の機能はDNA複製の際に必要な helicase作用であり核内で機能する。in vitroでの解析から、MCM2はFLV由来のgp70蛋白と結合することにより核内移行が阻害され、細胞質内にとどまることでDNA-PKの活性化、p53依存性アポトーシスを誘導することがわかった。この細胞内局在変化に伴う作用転換を応用すれば、多くの腫瘍で発現が増強していることが知られているMCM2の作用をアポトーシス誘導へと向かわせるシグナルに変換することができると考えられる。 そこで、MCM2を主体とするアポトーシス増強効果の詳細な作用機構の解析と、特異的結合分子を用いたMCM2の機能修飾によるin vivoでのマウス白血病治療実験系の開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vivo解析からin vitroの実験系までを通じて、宿主特異的なアポトーシス誘導機構が明らかになった。さらに治療実験モデル開発についても、白血病細胞を用いたin vivo治療モデルを用いた解析で、大きな成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにMCM2のアポトーシス増強作用のメカニズムの詳細を探るとともに、白血病以外の固形腫瘍についても治療実験モデルを構築するために、マウス乳癌、卵巣癌の移植実験系を確立し。治療モデルを作製する。また、ヒトへの応用という観点から、ヒト細胞を用いた実験系で同様の系を見出す必要がある。ヒトの分子ではマウスのウイルス蛋白では同じ現象は観察されないので、新しい分子を見出す努力を継続する。 ヒトへの応用を考える際には、実際に各種病態で起こっているシグナル関連分子の動態を臨床検体を用いて解析することも重要で、臨床現場の研究協力者が必要である。また、ヒトのMCM2機能を修飾する分子の探索と薬剤開発、治療への応用を考える際の基礎的実験を行う専門家の研究協力も必要となる。 具体的には、1)MCM2発現の高い固形腫瘍についても同様のアプローチを行う。2)マウスとヒトのMCM2遺伝子配列の比較から核移行シグナルに関わるMCM2のdomainに結合するようなgp70遺伝子産物のホモローグを同定し、ヒト腫瘍細胞株への導入、過剰発現による機能解析、アポトーシス増強作用の解析を行うために、必要な試薬、器具類を購入する。3)臨床材料を用いた造血器系および固形腫瘍の病態解析も継続し、関連する細胞内シグナルの修飾への応用を図るため、必要な試薬、器具類を購入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究成果をもとにした比較解析と、その応用を目指した実験を行っていく必要がある。遺伝子治療モデル実験についてはこれまでの研究でマウス白血病細胞に対して非常に良い治療実験系を確立することに成功した。さらに固形腫瘍におけるMCM2遺伝子のin vitro、in vivoでの機能解析と治療への応用を進める。 ヒトへの応用を考える際には、実際に各種病態で起こっているシグナル関連分子の動態を臨床検体を用いて解析することも重要で、臨床現場の研究協力者が必要である。また、ヒトのMCM2機能を修飾する分子の探索と薬剤開発、治療への応用を考える際の基礎的実験を行う専門家の研究協力も必要となる。 具体的には、1)MCM2発現の高い固形腫瘍についても同様のアプローチを行う。2)マウスとヒトのMCM2遺伝子配列の比較から核移行シグナルに関わるMCM2のdomainに結合するようなgp70遺伝子産物のホモローグを同定し、ヒト腫瘍細胞株への導入、過剰発現による機能解析、アポトーシス増強作用の解析を行うために、必要な試薬、器具類を購入する。3)臨床材料を用いた造血器系および固形腫瘍の病態解析も継続し、関連する細胞内シグナルの修飾への応用を図るため、必要な試薬、器具類を購入する。
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Research Products
(5 results)