2013 Fiscal Year Research-status Report
腸アメーバ症発症の一因としての腸内細菌産生物質の解析
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24590511
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 正規 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70112688)
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Keywords | 赤痢アメーバ / Bacteroides fragilis / Gal/GalAc lectin / 糖鎖 / 増殖促進因子 |
Research Abstract |
腸内偏性嫌気性菌であるBacteroides fragilisの共棲培地で、赤痢アメーバ臨床株を培養すると安定して分離培養できることからB. fragilisの赤痢アメーバ増殖促進物質について検討した。その結果、B. fragilisの培養上清(分子量10,000以下の低分子物質)にも増殖促進作用があることが新たにわかった。さらに、この分画には赤痢アメーバの病原性因子のひとつであるGal/GalNAcレクチン(腸粘膜への接着因子)と結合する糖鎖も含まれることがGal/GalNAcレクチンに対する特異抗体の結合阻害(競合反応)アッセイから推定された。そこで市販の糖鎖精製ラベル化キットを用いB. fragilisの培養上清から糖鎖を精製し、MALDI-TOF MS解析を行った結果、Gal/GalNAcに相当する質量のHexとHexNAcの糖鎖のピーク(分子量772 (Hex)2と934 (HexNAc)1(Sulph)1, (Hex)3)が新鮮培地に比べ数倍増加していることが確認された。 また、B. fragilisのCBAマウス盲腸への赤痢アメーバの感染促進効果を利用して作成した赤痢アメーバ腸持続感染モデルを用いて、盲腸粘膜(特にムチン層)での赤痢アメーバとB. fragilisの局在を、抗赤痢アメーバGal/GalNAcレクチン及び抗B. fragilis- LPSモノクローナル抗体を用い免疫組織化学的に検討した結果、ともに粘膜表層部に顕著な反応がみられ、両者の局在が重複していることが証明された。 これはB. fragilisの赤痢アメーバ病原性への関与を考える上で興味深い結果であり、現在赤痢アメーバの病原性発現とB. fragilisの病原性への関与のメカニズム解析の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の成果においてB. fragilis の培養上清に低分子の赤痢アメーバ増殖促進因子の存在が確認され、赤痢アメーバの接着因子(Gal/GalNAcレクチン)と結合する糖鎖が多量に含まれることが質量分析の結果から示唆された。 また、当該年度の研究計画に基づき実施された赤痢アメーバ感染CBAマウス腸粘膜組織の免疫組織学的解析結果からB. fragilis のLPSと赤痢アメーバGal/GalNAcレクチンの局在が大きく重複することが証明された。 反面B. fragilis の赤痢アメーバ病原性に寄与すると考えられる腸粘膜の機能を障害するような物質はLPS, コハク酸そしてPolysaccharide Aなど単一ではないことも理解されてきた。 しかしながら、これらの結果は次年度以降の研究の方向性を決める上で有用な基礎的データを提供することができ、新たな進展も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
赤痢アメーバ症の発症率は10%程度と推定され、赤痢アメーバの腸粘膜組織侵入を伴う発症には宿主の免疫能の低下や腸内細菌叢の影響等が考えられている。 次年度は赤痢アメーバ症発症因子の候補のひとつとして、赤痢アメーバ増殖促進物質や赤痢アメーバ接着因子(Gal/GalNAc レクチン)と結合する糖鎖等が含まれるB. fragilisを考え、培養上清からのGal/GalNAc レクチン結合糖鎖の精製及び同定と、弱毒化した赤痢アメーバをB. fragilis の培養上清を加え培養した後、そのvirulence増強効果の有無をハムスターにおける肝膿瘍形成能やCBAマウス盲腸持続感染モデルでの感染率を基に比較検討する。B. fragilis の培養上清(分子量10,000以下の分画)には致死的な効果も報告されるLPSや、白血球のmigrationを麻痺させるコハク酸、そして免疫変調を引き起こすPolysaccharide Aなども含まれることが知られている。Polysaccharide AはLPSの構成多糖としても知られ、またGal/GalNAcレクチンと結合するGal/GalNAc を含む糖鎖でもあることから、Polysaccharide Aの赤痢アメーバ増殖促進効果についても検討する。 B. fragilis の赤痢アメーバの病原性への関与についてはLPS, コハク酸, Polysaccharide A などの複合的な作用も考えられることから、LPSやコハク酸の赤痢アメーバ増殖と腸粘膜侵入促進効果の有無についても明らかにする。 質量解析で確認された分子量772と934の糖鎖の構造解析についても、レクチンカラムやLC-MSなどの手法で精製解析し、必要であれば合成も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用CBAマウス購入費予算として計画していたが、研究室移転に伴い動物飼養施設申請が必要となり、その飼養認可が下りた時点で助成金残高が4472円とマウス購入費としては不足していたため、次年度使用額が生じてしまった。 感染実験用CBAマウス購入費として翌年度分として請求した助成金と合わせて使用を計画している。
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Research Products
(1 results)