2014 Fiscal Year Research-status Report
腸アメーバ症発症の一因としての腸内細菌産生物質の解析
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24590511
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 正規 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70112688)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 赤痢アメーバ / Bacteroides fragilis / Gal/GalAc lectin / B. fragilis 培養上清 / 増殖促進因子 / Entamoeba dispar / マウス腸持続感染モデル / virulence |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果から、腸内偏性嫌気性菌であるBacteroides fragilisの培養上清中に赤痢アメーバの増殖促進作用が含まれることが明らかにされ、MALDI-TOF MS解析の結果からは、Gal/G alNAcに相当する質量のHexとHexNAcの糖鎖のピーク(分子量772 (Hex)2と934 (HexNAc)1(Sulph)1, (Hex)3)が新鮮培地に比べ数倍増 加していることも確認された。当該年度は、赤痢アメーバの病原性発現とB. fragilisの 病原性への関与について解析を行った結果、B. fragilis培養上清を無菌培地に加え培養した赤痢アメーバをB. fragilisとともにCBAマウス盲腸へ接種すると、従来、最高でも60%程度であった赤痢アメーバの盲腸への感染率が90%以上と高率に感染すること、そして感染マウスが、本培養系を用いた赤痢アメーバを接種すると4か月以内に死亡することも新たにわかってきた。また、赤痢アメーバ腸持続感染モデルを用いて、盲腸粘膜での赤痢アメーバとB. fragilisの局在を免疫組織化学的に、ともに粘膜表層部に局在が重複していることが昨年度の成果として証明されていたが、これに加え、B. fragilisが直接的に赤痢アメーバのvirulence増強作用を示したことは、粘膜組織侵入を伴う赤痢アメーバの病原性へのB. fragilisの関与を考える上で興味深い結果であった。さらに、従来非病原性と考えられていた遺伝子的にも赤痢アメーバと酷似するEntamoeba dispar は同じくB. fragilisの培養上清と長期間無菌培養後、NODSCIDマウスの肝に直接接種すると一過性に肝膿瘍を形成することもわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの成果から、B. fragilis の培養上清に低分子の赤痢アメーバ増殖促進因子の存在とともに赤痢アメーバの接着因子( Gal/GalNAcレクチン)と結合する糖鎖が多量に含まれることが質量分析の結果から明らかになり、また、当該年度の研究計画に基づき実施された赤痢アメーバのマウス盲腸持続感染モデルを用いた感染実験から、この糖鎖を多量に含むB. fragilis の培養上清に赤痢アメーバのvirulenceを増強する作用もあることが明らかになった。赤痢アメーバ感染CBAマウス腸粘膜組織の免疫組織学的解析結果からも既にB. fragilis のLPS と赤痢アメーバGal/GalNAcレクチンの局在が大きく重複することも証明されており、赤痢アメーバとB. fragilis の個々のvirulenceが共同する総合的なvirulenceの増強とともに、B. fragilis の培養上清が赤痢アメーバや非病原性と考えられてきたE. disparのvirulenceを直接的に高める作用が見出されたことは興味深い。 これらの結果は次年度以降の研究の方向性を決める上で有用な基礎的データを提供することができ、新たな進展と論文発表に値する成果が期待 されることから、おおむね。順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
赤痢アメーバ症には、潰瘍性大腸炎と誤診されステロイド投与された場合に起こるような劇症型の致死的なアメーバ症もみられ、赤痢アメーバの発症には赤痢アメーバのvirulenceとともに、宿主の免疫能の低下や腸内細菌叢の影響等が考えられている。 次年度は赤痢アメーバ症発症因子の候補のひとつとして、腸内細菌のB. fragilis が直接的に赤痢アメーバのvirulenceを増強させる作用に焦点を絞り、CBAマウスを用いた、盲腸持続感染モデルにおいてB. fragilis の培養上清を加えて培養することでvirulenceが増強された赤痢アメーバ用いて感染実験を行い、感染マウスの組織学的解析を行うことで、in vivo における病変の進行の推移を解析する。非病原性と考えられているE. dispar と最近病原性が確認された自由生活性のE. moshkovskiiをB. fragilis の培養上清を加え培養した後、そのvirulence増強効果の有無についても、NODSCIDマウスやハムスターにおける肝膿瘍形成能、そしてCBAマウス盲腸持続感染モデルで比較検討する。B. fragilis の培養上清には致死的な効果をもつLPSなども含まれることが知られている。Polysaccharide AはLPSの構成多糖としても知られ、またGal/GalNAcレクチンと結合するGal/GalNAc を含む糖鎖でもあることから、Polysaccharide Aの赤痢アメーバ増殖促進効果に加え、virulence増強効果についても検討する。B. fragilis の赤痢アメーバの病原性への関与についてはLPS, コハク酸, Polysaccharide A などの宿主側への作用も考えられるこら、B. fragilis 単独のマウス盲腸粘膜へのvirulenceについても病理組織学的に明らかにする。
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Research Products
(5 results)