2013 Fiscal Year Research-status Report
ガンマヘルペスウイルス感染による慢性炎症化と細胞形質転換機構の解明
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24590550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安居 輝人 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (60283074)
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Keywords | Epstein-Barrウイルス / B細胞 / LMP1 / リンパ腫 / ヘルペスウイルス / 上皮がん / 上皮がん / 慢性炎症 |
Research Abstract |
現在、疫学的にヒトがんの20%はウイルス発がんであることが示唆されている。その中でも全世界人口の90%に感染するEpstein-Barrウイルス(EBV)はリンパ腫、上皮がんに関与するがんガンマヘルペスウイルスである。EBVはウイルス遺伝子にコードされている8種類の潜伏遺伝子産物を発現するが、Latent membrane protein 1 (LMP1)は上皮細胞において強い細胞形質転換活性を有し、様々なEBV関連疾患の発症に関与していることが示唆されているが、そのがん化過程の作用機序は未だ明らかではない。 本研究ではEBVを含むガンマヘルペスウイルス関連発がんの分子機構を明らかにするため平成25年度計画に基づいて、EBV遺伝子に焦点をあてEBVによるB細胞形質転換機構のLMP1シグナル分子の恒常的活性化によるBリンパ腫形成の検討を行った。 24年度に作成された細胞種特異的発現を可能にしたLMP1ノックインマウスを用いLMP1を発現したマウスB細胞を単離し、不死化に必要なEBV潜伏遺伝子感染遺伝子、あるいは宿主側因子の同定を試みた。EBV潜伏感染遺伝子及び宿主因子の恒常的活性化変異体をLMP1陽性B細胞にレトロウイルスで導入しその不死化効率を検討した。その結果、LMP1を含む全てのEBV潜伏感染遺伝子の発現によりマウスB細胞の不死化が認められた。一方、LMP1によって活性化が認められるNFkB1, NFkB2, Akt, Stat3の恒常的活性化変異体を単独で導入してもB細胞の不死化は達成されなかった。しかしながら、SV40 large T antigen(LT)とLMP1の共発現によりB細胞の不死化が認められたことから、LTが不活性化するp53及びRb経路がマウスB細胞の不死化に関与していることが明らかとなった。EBNA1、EBNA3Cはそれぞれp53, Rb経路を不活性化することが知られていが、今回得られた結果はEBVによるB細胞不死化にLMP1とともにp53、 Rb経路不活性化の必要性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度計画遂行の成否は平成24年度計画で作成されたマウスの樹立に依存していたが、それらは既に完了しており、平成25年度計画は速やかに行われた。また平成25年度研究計画で重要なレトロウイルスの作成、及びレトロウイルスによる遺伝子導入においても、以前より確立された手法を用いていることによって、なんら研究計画遂行の障害とはならなかった。またもうひとつの理由として、世界で初めてEBV潜伏感染遺伝子によるマウスB細胞の不死化に成功したことにより、さらに次年度に目標に掲げられている「ヒトB細胞の不死化要素の同定」といった研究課題の本質にせまる研究計画を立ち上げることが可能となったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も継続してマウスB細胞におけるEBV不死化に必要なEBV潜伏感染遺伝子の同定を行う。すでにEBV潜伏感染遺伝子によるマウスB細胞不死化に成功したので、EBV潜伏感染遺伝子の中で、「必要十分」なコンポーネントの探索にとりかかる。LMP1とガン抑制遺伝子群の不活性化によりマウスB細胞の不死化が可能となったので、LMP1シグナルのうち、どの伝達経路の恒常的活性化ががん抑制遺伝子とクロストークするのかを明らかにする。 LMP1陽性B細胞を用い、本来EBVが感染ターゲットとしているヒトB細胞においてこのメカニズムが適用できるかどうか、学術的及び臨床応用的に重要な問題となるので、ヒトB細胞を用いた不死化に関与するEBV潜伏感染遺伝子とそのシグナル伝達経路の検討を行う。EBVによる細胞不死化は臨床的にB細胞のみならず、上皮細胞でも認められることが知られている。EBV不死化メカニズムで上皮細胞でも共通性があるか否かを検討することが、EBV病態発症メカニズムの全貌を明らかにするために必要である。 平成25年度にLMP1シグナル活性化経路の中でAktやNFkBがB細胞不死化に重要な役割を果たしていることを示唆する結果が得られたが、これは確証のある知見とは言えず、本研究を成功せしめる必須の課題として、1)EBVがB細胞分化段階で様々なリンパ腫を誘導すること、2)in vitroにおけるB細胞分化を現時点では誘導できないので、B細胞分化を検討できる個体レベルでの解析のためモデルマウスが必要となる。LMP1で活性化されるシグナル伝達経路の中でどれがB細胞がん化に必要であるかを検討するために、新たにマウスを作成する。恒常的活性化型Akt、あるいはIKKを成熟B細胞以降の分化段階特異的に発現するマウスでB細胞がん化の有無、B細胞分化異常を検討する。これらにより、EBV不死化に関与する宿主活性化因子を明らかにすることが可能となる。
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Research Products
(11 results)