2012 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1によるヒト慢性炎症形成機序の解明とその制御法の開発
Project/Area Number |
24590556
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
齊藤 峰輝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40398285)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | HTLV-1 / HBZ / 慢性炎症 / 感染防御 / ワクチン |
Research Abstract |
HTLV-1マイナス鎖にコードされるウイルス遺伝子HTLV-1 bZIP factor(HBZ)のHAM病態形成における意義を明らかにするため、本年度は抗HBZモノクローナル抗体の作製を試みた。まず、HBZのC末端ペプチド抗原(HBZ 193-206:CVNYWQGRLEAMWLQ)を用いてウサギを免疫し、HBZ蛋白を特異的に検出可能な抗HBZポリクローナル抗体を得た。また、同じペプチド抗原をWKAラットに免疫し、通常のハイブリドーマ 法によりラット抗HBZモノクローナル抗体を作製した(clone:4B12, RatIgG2b)。一方、大腸菌で発現させ精製したrecombinant HBZ(HBZ96-206)を抗原として、ファージディスプレイ法によりMyc-Hisタグ付き2価ヒト抗HBZFab抗体17クローンを得た。また、これらの抗HBZ抗体を用いてHBZ蛋白、抗HBZ抗体を検出するELISA系を確立した。得られた抗HBZモノクローナル抗体は、HBZを過剰発現させた293T細胞およびHTLV-1感染細胞株中のHBZ蛋白を蛍光抗体法、ウエスタンブロット、フローサイトメトリーにより検出可能であったが、HAM患者末梢血単核球(PBMC)中のHBZ蛋白は検出できなかった。また、HBZ蛋白、抗HBZ抗体を検出するELISA系を作成したが、患者PBMC中のHBZ蛋白、患者血漿中の抗HBZ抗体ともに検出できなかった。HAM患者の病態とHBZ遺伝子発現との関連解析の結果、炎症反応が強い進行期のHAM患者は慢性期の患者と比較してHBZ mRNAが高発現しており、病勢との有意な相関が認められたが、Tax mRNA発現と病勢との有意な相関は見いだせなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、HBZ特異的モノクローナル抗体によるヒト抗HBZ抗体およびHBZ蛋白検出系を作製することを目的に研究を遂行した。HBZのC末端ペプチド抗原(HBZ193-206:CVNYWQGRLEAMWLQ)を用いてハイブリドーマ法によりラット抗HBZモノクローナル抗体を、大腸菌で発現させ精製したrecombinant HBZ(HBZ96-206)を抗原としてファージディスプレイ法によりMyc-Hisタグ付き2価ヒト抗HBZFab抗体17クローンを得ることができた。これらのモノクローナル抗体はHBZを過剰発現させた293T細胞およびHTLV-1感染細胞株中のHBZ蛋白を蛍光抗体法、ウエスタンブロット、フローサイトメトリーにより検出可能であり、HBZ蛋白、抗HBZ抗体を検出するELISA系も確立できた。一方で、ペプチド抗原、recombinant HBZ抗原のいずれを用いた場合においても、ハイブリドーマ法によってマウス抗体は得られなかった。以上の結果から、HBZ特異的モノクローナル抗体を得てHBZ蛋白の検出系を作製するという当初の目的は達成されており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回、抗HBZモノクローナル抗体を得てHBZ蛋白、抗HBZ抗体を検出するELISA系を作製したが、HAM患者PBMC中のHBZ蛋白、患者血漿中の抗HBZ抗体ともに検出できなかったことから、in vivoにおけるHBZ蛋白発現がきわめて微量であることが考えられた。よって、HAMなどのHTLV-1関連疾患におけるHBZ蛋白発現と臨床病態との関連を解析するためには、臨床検体におけるHBZ蛋白の発現を特異的かつ鋭敏に検出する高感度検出系の構築が必須である。引き続き、HBZ蛋白の多様なエピトープを認識し、親和性の高いモノクローナル抗体ライブラリーの作製を試みる。また、免疫不全マウスにHTLV-1非感染正常成人のPBMCを移植し、HTLV-1抗原で感作した自家DCを新鮮なPBMCと混合してマウスの脾臓に直接接種する独自の方法により、ヒトの抗HTLV-1細胞性および液性免疫応答が誘導可能な実験系を確立しているので、このHTLV-1感染ヒト化マウスモデル系を用いてヒトのHTLV-1関連疾患病態の再現を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、HBZ蛋白の多様なエピトープを認識し、親和性の高いモノクローナル抗体ライブラリーの作製を行うために、細胞株へのHBZ遺伝子導入によって精製したHBZ蛋白、大腸菌由来のrecombinant HBZ蛋白、コムギ無細胞タンパク質合成法により作製したHBZ蛋白、あるいは今回用いた以外のHBZペプチドといった多様な抗原を準備してマウスおよびラットを免疫する予定である。そのための抗原作製、マウス・ラット購入、培養関連試薬購入に研究費を使用したい。また、HTLV-1感染マウスモデル作製に必要な免疫不全マウス購入費用や、遺伝子解析、免疫学的・病理学的解析のための核酸分離試薬や各種抗体の購入にも研究費を使用したい。
|
-
[Journal Article] Increased expression of OX40 is associated with progressive disease in patients with HTLV-1-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis.2013
Author(s)
Saito M, Tanaka R, Arishima S, Matsuzaki T, Ishihara S, Tokashiki T, Ohya Y, Takashima H, Umehara F, Izumo S, Tanaka Y.
-
Journal Title
Retrovirology
Volume: 10
Pages: 51
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-