2013 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスによる自然免疫の活性化と抑制の新たなメカニズム
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24590570
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押海 裕之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50379103)
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Keywords | 自然免疫 / C型肝炎 / I型インターフェロン / ウイルス / ユビキチン |
Research Abstract |
自然免疫はウイルス感染初期の生体防御に必須である。特に、ウイルス感染初期の自然免疫応答としてのI型インターフェロン産生はウイルスの排除に重要である。細胞質内のウイルスRNAはRIG-Iと呼ばれるセンサー分子により認識され、MAVSと呼ばれるアダプター分子を介してI型インターフェロンが産生される。我々はこのRIG-I分子の活性化に必須な分子としてRipletと名付けたユビキチンリガーゼを同定し、その機能をノックアウトマウスを作製しこれまでに解明した。 C型肝炎ウイルスは、ヒトの肝癌のおよそ70%の原因として知られている。C型肝炎ウイルスのRNAもRIG-Iにより認識されI型インターフェロンが産生されることが知られているが、C型肝炎患者ではこのメカニズムが阻害されていることから、患者では殆どI型インターフェロンが産生されないことが知られている。我々はこのメカニズムを解明するために実験を進めたところ上記のRiplet分子がC型肝炎ウイルスのタンパク質により阻害されていることを発見した。 このC型肝炎ウイルスによるRiplet分子の阻害メカニズムの詳細な分子機構の解明を進めたところ、C型肝炎ウイルスのNS3-4Aタンパク質をRiplet分子と細胞内で共発現させると、Riplet分子の活性中心であるRING fingerドメインがNS3-4Aタンパク質により切断されることを発見し、実際にC型肝炎ウイルスをヒト肝臓由来細胞のHuH7細胞に感染させた実験では、ウイルスRNAが存在するのにも関わらずRIG-Iのポリユビキチン化が生じないことを確認した。これらの解析から、C型肝炎ウイルスがヒトの自然免疫応答を抑制し持続感染する新たなメカニズムを解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にあった、C型肝炎ウイルスによるRiplet分子分解機構の解明に於いては、その分子機構の詳細を解明し、PLoS Pathogens誌にその成果を発表した(Oshiumi H et al PLoS Pathogens 2013 e1003533)。 DDX60ノックアウトマウスの機能解析に於いては、マウス胎児由来繊維芽細胞、骨髄由来樹状細胞、腹腔内マクロファージ等を用いた解析を実施し、さらに個体への感染実験としてウイルス感染時のI型インターフェロン産生の測定と生存率、および、感染後の各臓器でのウイルス量を測定し、DDX60の生体内での役割について評価を完了した。 また、HCVのマウスモデル系として、現在、自然免疫系に欠損を持つマウスとHCVモデルマウスとの交配を完了し、現在実験を進めている。 HCV感染時のIII型インターフェロンの産生経路として上記のモデルマウス等を用い、これまで重要だと報告されていたTLR3-TICAM-1経路だけでなく、CD8陽性樹状細胞等においてもIPS-1分子を介した経路が重要であることを証明し,責任著者としてJ. Immunology誌にその成果を発表した(Okamoto M et al J. Immunol. 2013, 192:2770-2777)。 Luple分子についても現在CRISPRの実験系を用い、遺伝子改変を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
DDX60ノックアウトマウスを用いた解析から得られた情報を基に、さらにヒト培養細胞を用いた実験結果を加え、論文として成果をまとめる予定である。 HCVのモデルマウスとしては、これまでにhydrodyanamic法によるHCVのRNAを直接マウスの肝臓に注入する方法だけでなく、HCVの全ゲノムがマウスゲノム内にトランスジェニックされているマウスを用い、HCV感染時の自然免疫応答機構を生体内のレベルで解明を行う。また、HCVのウイルス受容体のトランスジェニックマウスの作製も引き続き実施し、よりヒトの感染に近いマウスモデルを作製し、自然免疫応答の解明を試みる。 DNAセンサーとしてのLuple分子の機能解析から、これまで、Luple分子がHEK293細胞での細胞質内DNAによるI型インターフェロン産生に必須であることを、CRISPRを用いた遺伝子ノックアウトにより解明した。今後、CRISRP法を用いたLupleノックアウトマウスを作製し、上記のメカニズムが生体内のどのような細胞で機能し、個体への感染実験を実施することで、その重要性を解明していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
DDX60ノックアウトマウスの解析に於いて、一部の実験を延期したため,次年度に計画を遂行する為に消耗品費を一部持ち越す。 DDX60ノックアウトマウスの解析の為に、消耗品として、酵素やキット類やオリゴDNAやsiRNA等の実験に必要な試薬類を購入する予定である。また、細胞培養の為のディッシュ等のプラスチック製品の購入を行う。
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