2013 Fiscal Year Research-status Report
院内がん登録データによる青森県がん患者の動態の基礎的研究
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24590593
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松谷 秀哉 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30241483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 賀広 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70178672)
松坂 方士 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70431434)
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Keywords | 院内がん登録 / 地域がん登録 / がん診療 / GIS |
Research Abstract |
平成25年度はほぼ当初の計画通り2次医療圏などをベースにした受療動向や医療資源に対する格差の分析をおこなった。具体的には、院内がん登録や青森県内における受療動向調査、厚生労働省の集計データなどを用いて地域間相互作用モデルなどによるデータ解析をおこなった。 主な結果は以下の通りである。 青森県がん拠点病院での受療動向は基本的に2次保健医療圏内で成立しており(1圏域を除く)、概ね青森県の受療動向調査とも一致する。ただし、臓器ごとにみた場合、肺がんなど異なるものがあり、この要因を検討する必要がある。 全国の2次医療圏ごとの医療資源(病院数や医師数など)に対する格差をジニ係数により求めた。病院数の全国平均は0.32で多少の格差が認められる程度であったが、各県ごとにバラツキがあり北海道・東北地方各県の多くが0.4以上と大きい。一方で、診療所数を合わせた場合は全国平均で0.12、北海道・東北地方でも0.2前後であり格差は小さい。この事から各自治体が限りある資源を効果的に使うために集中と再分配に対しての対応・対策の違いによるものと思われる。医師数におけるジニ係数は全国平均は0.25で病院数よりも小さいが同様の傾向が見られる。なお、地域医療における医師不足が問題となっているが、2次医療圏で見た場合は平均化されるためか大きな格差は見られない。 また青森県の2次医療圏における受療動向を発生量制約型の重力モデルを用いた解析では、入院患者における移動は病院数による影響は先行研究の結果(北海道や群馬県など)と同程度であったが、距離による依存性が強い結果となった。これは冬の雪などによる生活環境の制約が考えられるが、いづれにしても広域的な季節性を取り入れた解析と比較が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、院内がん登録データによる臓器ごとの動態分析、青森県の受療動向調査データや厚生労働省の集計データなどを用いた医療圏間での医療資源のバランスや格差について地域間相互作用モデルなどによるデータ解析をおこなった。これらの状況は「研究実績の概要」でも述べた通りであり、各データ間における整合性も特に問題となるところはなかった。以上から、平成25年度はほぼ当初の計画通りであり概ね順調と考える。 一方、作業・予定が遅れている部分もある。昨年に報告した通り、院内がん登録データの集約に遅れをきたした。その後、本学の「地域がん疫学講座」の設置と地域がん登録の業務移管といった対応がおこなわれ、実施体制が整うとともに着実に機能し始めた。 しかし、この間の時間的な損失から、平成25年度に実施予定のひとつである「がん地域連携パス」についての分析と評価が未実施となった。また、成果発表となる学会や論文にまとめる作業にも影響して学会発表1件にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」でも述べた通り、がん地域連携パスについての分析と評価と成果発表においてやや遅れている。がん地域連携パスはクリニカルパスと同様に診療の標準化を考える上でも重要である。残念ながら、青森県におけるがん地域連携パスは順調には稼動していない状況である。その理由の一つとして、がん患者の受療動向が不明のために実態に即したパス運用ではない可能性が考えられる。青森県がん診療連携協議会がまとめたがん診療連携拠点病院院内がん登録報告書によると、自医療圏以外からの紹介患者が全紹介患者に占める割合は20~40%である。また、逆紹介患者については75~90%に及ぶ。これら全てが自施設で定期的に診療を受けるとは限らないが、青森県では居住地から遠距離の医療機関で受療する患者は多い。そのため、本研究により青森県のがん患者の受療動向が明らかになることは、今後のがん地域連携パスの運用状況改善に大いに寄与すると考えられる。 また、今年度(平成26年度)が本研究の最終年度である事から、これまで得られた結果・成果を医療情報学会などで発表をおこない論文としてまとめるとともに、青森県内の関連会議などで検討をおこなっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まだ当初計画よりやや遅れが生じたため、おもに成果発表となる学会などへの機会が予定よりも少なく旅費が減ったものである。 今年度は本研究の最終年度である事から、昨年度の余剰経費を成果発表、報告書の作成(紙やトナーなど)などの雑費用として使用して重点的な対応をする予定である。
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Research Products
(1 results)