2012 Fiscal Year Research-status Report
外国籍住民参加型の地域医療連携システムの構築:医療通訳者育成支援の試みから
Project/Area Number |
24590623
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
濱井 妙子 静岡県立大学, 看護学部, 助教 (50295565)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 文子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30315858)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 地域医療学 / 外国人医療 / 医療通訳者養成 / 医療コミュニケーション / 異文化コミュニケーション / 在住ブラジル人 |
Research Abstract |
本年度は、在住ブラジル人対象の医療通訳者養成研修プログラムの実施準備作業として、次のプロセスを経た。(1)医療通訳者に必要な能力とアウトカム指標に関する検討:文献レビューと専門家へのインタビュー情報から抽出し、医療通訳者に必要な能力の構成要素を決定し、それぞれの構成要素に対するアウトカム指標と評価方法を決定した。(2)医療通訳者養成研修プログラムの考案:先進的自治体や関連団体が実施している既存の研修プログラムや専門家へのインタビュー情報を検討した結果、当研修プログラムは、講義と実技演習を中心とした研修と臨床における実務実習を実施することにした。(3)研修プログラムの具体的な実施計画:対象者の条件を設定し、募集方法を検討したうえで、自治体や関連団体に募集の協力を依頼した。今回の研修プログラムは、医療通訳者に必要な基礎的知識と技術の習得を目的として日程を決定し、専門講師の依頼を行った。医療通訳者の能力習得に必要な所要時間の根拠について明記されている文献は見当たらなかったが、医療通訳者養成の研修時間は少なくとも30~40時間以上必要とされていることから、本研究における講義と実技演習を中心にした研修プログラムは実施可能な時間の36時間で設定した。36時間の研修を全て受講した者に対して、実務実習を行う。臨床における実務実習の受け入れについては、医療通訳者を雇用している医療機関に研究協力の依頼を行った。(3)研究プロジェクトのホームページ開設:対象者募集、実務実習のための協力医療機関募集、関連情報発信、対象者のための自己学習、情報共有、双方向通信のツールとしての活用を目的に、ホームページを制作した。(4)研究倫理審査委員会への申請:上記研究計画の実施に向けて、当大学研究倫理審査委員会へ研究の倫理審査を申請し、承認を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、在住ブラジル人を対象とした医療通訳者養成研修プログラムの実施に向けての準備期間とし、主に次の4つを実施する計画であった。(1)医療通訳者養成研修プログラムの考案、(2)医療通訳能力の評価基準の設定、(3) 研修にとりいれる模擬医療面接・服薬指導のシナリオ作成、(4)研修参加者の募集と選定。これらの達成状況については、次のとおりである。(1)については、独自の研修プログラムを考案した。日本には、国による医療通訳者の資格認定制度がないため、医療通訳者としての人材養成カリキュラムや資格基準に統一されたものがなく、コアカリキュラムに必要な科目と時間数の根拠は不明確で教材や教授法も確立されていないことが明らかになった。さらに、対象言語によって、研修に求められる語学レベルも異なるため、応募者の語学レベルや医療現場における通訳経験によって、研修プログラム内容の微調整が必要であると考えられる。(2)については、医療通訳者に必要な能力の構成要素を明確にし、それらの構成要素に対する評価方法を決定した。(3)の研修教材については、既存の資料や新たに作成した資料を組み合わせて使うが、研修にとりいれる模擬医療面接・服薬指導の場面別シナリオについては、現在準備中である。(4)については、対象者の条件と募集方法を決定し、研究プロジェクトホームページ上にて公募する。対象者の選定のための面接試験の採点項目と採点基準については概ね決定しているが、面接委員間でのディスカッションが必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、先に考案した研修プログラムを次の要領で実施する。 (1) 対象者の募集と選定:ホームページ上で対象者を募集する。応募者に対し、語学能力(日本語とポルトガル語)、医療通訳者としての適性、医療通訳者を志した動機などを把握するために、日本語の筆記・聴解試験と面接試験を実施する。試験合格者で、研究の主旨を理解した上で研究の参加・協力の同意が得られた者を対象者として選定する。(2) 日本語能力の把握:研修後に、対象者の日本語能力を客観的に確認するために日本語能力試験を受験させる。(3) 研修プログラムの実施:講義と実技演習を中心にした研修36時間(9回)と実務実習を実施する。さらに、ホームページを対象者のための自己学習、情報共有、双方向通信のツールとして活用する。(4) 研修プログラム評価のためのデータ収集: データは、医療知識などに関する筆記試験と模擬医療面接(OSCE方式)により収集する。 対象者には、受講料は無料、交通費・教材は支給とし、全プログラムを修了した者には、謝礼として2,000円程度の通訳関連書籍を贈呈する。面接委員には、医療通訳者養成に実績のある専門家2名に協力を得る。研修の講師は実績のある専門機関からの招聘、研究組織メンバーで務める。研修は講義、ロールプレイ、ワークショップ形式などを取り入れて、効率よく必要な能力が習得できるように工夫する。研修修了者には、医療通訳者のボランティア業務への関与を推奨し、継続的に医療通訳に関するQ&Aサービスや修了者のニーズにあわせて専門的な勉強会を実施し、研修修了者のスキルアップの維持・向上に努める。 平成26年度には、研修プログラムの有効性の評価により、問題点を抽出し、専門家と意見交換をしながら、プログラムの改善案を検討する。研修修了者に対するフォローアップは、継続して実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に必要な経費は次のとおりである。なお、対象者は25人、研修回数は試験、実務実習も含めて15回で試算している。(1) 対象者に関わる経費 1,212,500円(交通費:1人平均2,500円×25人×15回=937,500円、教材・資料:1人平均3,000円×25人=75,000円、日本語能力試験(願書を含む):1人6,000円×25人=150,000円、贈呈する書籍:2,000円×25人=50,000円)。 (2) 模擬患者役、面接委員、研修補助、研修の講師など謝礼 655,000円(模擬患者役:1回10,000×3回=30,000円、面接委員:50,000円×2人=100,000円、研修のポルトガル語補助員(1回5,000円×9回=45,000円、専門研修(通訳技術、医療通訳倫理、内科など)の講師:1回平均6万円×8人=480,000円)、(3) ホームページ機能更新料70,000万円、(4) 実務実習の受入医療機関への謝礼 100,000円:(5万円×2カ所)、 (5) 研修と模擬医療面接の記録用ビデオカメラ 150,000円、(6) データ分析に関する経費67,500円(模擬医療面接試験のテープ起こしと翻訳:1分300円×3分×25人×3回=67,500円)、(7) 研究分担者との打合せなど旅費50,000円、(8) その他消耗品。
|