2013 Fiscal Year Research-status Report
救急収容要請通話における情報提示内容・提示順と諾否の判断に要する時間の関連性
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24590632
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 なおみ 慶應義塾大学, 看護学部, 教授 (70288124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 進悟 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80129650)
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
岩野 雄一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90571729)
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Keywords | 救急医療 / 収容要請通話 / 救急隊員 / 救急医 / 会話分析 |
Research Abstract |
研究計画書に示した「救急収容要請通話における伝達内容および順序には、通話の所要時間と正確性との間に相関が見られるか」という課題の検証は、計画最終年度に全12000件分の分析を終えるまで待たねばならないが、2年目までに得たデータの範囲内で実施した分析においては、以下の3点が明らかになった。 1.バイタルサイン伝達後に不応需に至る通話の特徴:2944件分の録音から抽出した当該通話103件分を分析した結果、「当該診療科対応不能」「病棟・初療室内のスペース不足」「『かかりつけ』と『直近』医療機関の捉え方の相違」が主な原因であった。すなわち、バイタルサインが伝達され、通話が不当に長くなる前に諾否判断の可能な事例が複数あることが判明した。 2.「生物医学的情報」「社会心理的情報」「搬送内容」の伝達に要する時間の割合:分析対象とした155件の通話において、総所要時間の平均は142.1秒、各種伝達時間の平均は、生物医学的情報(例:症候)69.8秒、社会心理的情報(例:付添者)54.3秒、搬送内容(例:到着時刻)15.3秒であった。社会心理的情報の伝達・搬送内容の確認に費やされる時間の合計は、生物医学的情報の伝達に要する時間にほぼ匹敵することが分かった。所要時間の短縮にはこれらの情報伝達・確認を効率的に行うことが有効と思われる。 3.「頭文字語」使用の有効性:249件の分析対象のうち、受傷機転→損傷部位・程度→症状→処置の順に伝達が行われていた通話は、重症例の2.0%、中等症例の4.0%、軽症例の5.0%に過ぎなかった。一方「処置」以外の3項目を含む割合は、それぞれ重症96.0%、中等症98.0%、軽症82.2%であった。外傷患者の搬送時に伝達内容の記憶を助ける手掛かりとして推奨されている頭文字語(例:MIST)は、実際の提示順にはなじまない可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
収容要請通話の録音はすべて完了し、残すデータ処理作業は2ヶ月分の(1)断片化された状態で録音されている音声データの連結、(2)録音内容から個人情報を削除する匿名化、(3)業者に委託しての筆耕 のみとなった。 その結果平成25年度は、国内学会における発表4件(招待講演1件・パネルディスカッション1件・口演2件)および国際学会における論文発表1件の合計5編を通じて研究成果を公開した。また、来年度に向け、すでに国内学会に1件の演題登録、国際学会に2編の発表論文提出を完了している。さらに、国内学会学術誌に1編の論文を投稿済みであり、現在査読結果を待っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度にあたる平成26年度は、引き続き国内・国際学会での論文発表および国内学会学術誌への投稿を行うと共に、1年分のデータ処理がついに完了することから、これに基づくより大規模な量的分析に着手し、国際学術誌への投稿も活発に行う予定である。
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Research Products
(4 results)