2012 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患患者の歯髄由来iPS細胞とメタロチオネインを活用した薬物治療薬開発
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24590664
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
保住 功 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20242430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國貞 隆弘 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30205108)
犬塚 貴 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184734)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / iPS細胞 / メタロチオネイン / 筋萎縮性側索硬化症 / 分化誘導 / 創薬 |
Research Abstract |
神経変性疾患患者のなかで、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 4名、ハンチントン病(HD) 3名(huntingtin遺伝子のCAG配列の増大を確認済み)、ファール病(FD 6名から主に不要となった智歯の歯髄から歯髄細胞(DPC)を分離し、iPS細胞の樹立を行なった。我々はマウスiPS細胞から運動ニューロン細胞への分化誘導を試みているが、誘導はされるが効率が低く、改善を計っている。 我々はメタロチオネイン(MT)-IIIcDNAの作用機序を機序を調べる目的で、結合タンパク質を超高感度タンパクネットワーク解析システムを用いて、3種の相互作用タンパク質の同定に成功した。さらに、解析プログラムNAGARAにより、MT-IIIに作用する低分子化合物を設計、合成した。そこで、MT-IIIと相互作用するタンパク質の同定とその機能解析を行い、さらにMT-IIIに作用する化合物を用いて、MT-IIIおよびその結合タンパク質の活性を調節することで、神経変性疾患に対する治療薬の開発を進めている。 我々はまた、メタロチオネイン(MT)-IIIcDNAを組み込んだアデノウイルスを用いて頭部外傷モデルマウスの有効性とGAP-43の上昇を報告しているが、このことはMT-IIIが神経再生の過程で作用していることを示唆しており、今後、iPS細胞の分化誘導過程でその作用を検討する。 我々はSOD1に変異を持つ犬(コーギー犬)を入手できた。マウスの脊髄損傷モデルでヒト歯髄細胞を移植することで効果を認めている。この自然発症の犬ALSモデルおいて、犬歯髄細胞移植療法で効果が認められれば、ヒト臨床応用への大きな道筋が開かれる ALS患者の歯組織からiPS細胞の作製、分化誘導と平行して、犬ALSモデルを用いて再生治療を進めており、まず、ALSに関する新たな創薬を提言してゆく。これらの手法は他の神経変性疾患患者の治療に役立つもの考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、各神経変性疾患患者のiPS細胞は作製中で、アルツハイマー病 (AD)、パーキンソン病 (PD)等の神経変性疾患患者のiPS細胞の作製も行っている。ALS、HD、FDに関しては順調にiPS細胞の作製が進んでいる。運動ニューロンへの分化誘導は効率が低い。 一方、MT-IIIの結合蛋白は産業総合研究所の協力も得て、三つの結合タンパク質(P、F、N、非公開)が同定された。うち二つのP、Fについて免疫沈降法を用いて確認した。これによって、今後、MTの作用機序に関する新たな展望が開ける。またMT-IIIに結合する低分子化合物が入手できたことで、創薬へも直結できるものと期待できる。 ヒトALSの脊髄組織を検索し、亜鉛(Zn)が有意に上昇し、一方、Znトランスポーターの一つであるZnT-3が減少していることを見出した。このことはZnがALSの発症、進展に大きな役割を果たしていることを示唆しており、MT-IIIが治療薬として有望である根拠ともなる。 また幸い、犬ALSモデルが入手できたことは今後のヒト治療薬開発に向けてその貢献度は大きい。 以上、神経変性疾患患者のiPS細胞の作製は今後順次行うが、分化誘導法については遅れがある。しかし、次に述べる今後の研究の推進方策として、国立成育医療研究センター、京都大学iPS研究所の指導を得る準備はできている。それ以外の進展に関しては、ALSモデル犬が得られるなど、ALS研究の進展は順調と思われる。AD、PDに関しても同様、iPS細胞から誘導、ストレス、レスキュー実験に関してもその基盤となる準備は順次進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿い、各神経変性疾患(ALS、AD、PD等)のiPS細胞の作製を遂行する。また血液細胞からのiPS細胞の作製にも取り組む。分化誘導に関しては連携研究者である国立成育医療研究センター 阿久津英憲博士、京都大学iPS研究所の指導を得る。 MTの結合蛋白に関しては、生理的条件下での結合状態を確認する。またヒトALS脊髄におけるZnトランスポーター(ZnT, ZIP)の発現を遺伝子、タンパク質レベル、組織で明らかにする。 以上の成果を基盤に、コントロールとALS患者のiPS細胞を運動ニューロンに分化させる。過酸化水素による酸化ストレス、ツニカマイシンによる小胞体ストレス、Zn負荷・欠乏による重金属ストレスを加え、反応性の差異を見る。遺伝(各人の遺伝子を持った細胞)と環境因子によるヒトALSに出来るだけ近い病態を作り出す。SOD1, TDP-43等の遺伝子変異の明らかな家族性のALS患者のALSと孤発性ALS患者のiPS細胞から誘導した運動ニューロンでも比較する。孤発例の症例では、将来のオーダーメイド医療を視野に入れた治療薬の検討も行いたい。さらに、MTやその誘導剤、低分子化合物、病態に応じた薬剤を用いて、レスキュー実験を行う。得られた薬剤に関してはALSモデルマウス、ALSモデル犬で有効性を確認し、毒性試験も踏まえ、有効性と安全性の確認を行う。また、AD、PD患者からiPS細胞を作製し、それぞれ大脳皮質神経細胞、ドーパミン産生細胞に分化誘導する。酸化ストレス、小胞体ストレス、銅 (Cu)、マンガン (Mn)等の重金属負荷によるストレスを加え、病態の再現を試みる。オーダーメード医療も視野に入れた薬効解析系を確立し、MTを始めとした新たな創薬を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画として、iPS細胞場用関連で、細胞培養用培地・試薬類 400,000円、分析用試薬 350,000円、プラスチック消耗品 250,000円、ガラス器具 100,000円、それと動物としてマウスと犬の動物代 300,000円を計上する。雇用に関する人件費・謝金 200,000円、学会への旅費 200,000円、総額の合計として、昨年度の残金と合わせて予算1,800,000円を計上する。
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Research Products
(1 results)