2012 Fiscal Year Research-status Report
治療効果予測困難な現行のEGFR抗体治療における新規予測検査法の開発
Project/Area Number |
24590674
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (30589924)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / コンパニオン診断 / 治療効果予測 |
Research Abstract |
本研究は,大腸癌のEGFR抗体治療において未だ規定できない効果予測因子を明らかにするために,抗体治療薬によって検出される標的分子の組織発現解析法を構築し,治療薬の組織結合部位の特定を行うと共に,治療効果との関係性を明らかにし,さらに新規の効果予測検査法を確立することを目的としており,本年度は以下の課題に取り組んだ. (1) セツキシマブ(CTX)を用いたEGFR免疫組織化学的検出法の確立:ヒト組織での検討に先立ち,EGFRタンパク発現量が既知の細胞株の移植腫瘍ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本を用いてCTXによるEGFR免疫組織化学的(IHC)検出法を確立した.検討にはH1299細胞,A549細胞,A431細胞を用い,SCIDマウスへ移植後にFFPE検体を作製した.CTXはFITC化を行った後に一次抗体として反応に供し,その後多段階増感反応によるIHC検出を試みた.その結果フローサイトメトリー解析によるEGFR発現量に一致し,CTXによるEGFR検出が可能であることが確認された. (2) CTX-EGFR検出法を用いたヒトFFPE組織におけるCTX結合部位の解析:移植腫瘍を用いて確立した解析法を用いて,ヒトFFPE組織におけるCTXの組織結合部位の特定を行った.検討にはEGFR診断薬(clone 2-18C9)を用いて強陽性を示した腺癌(大腸癌,肺癌)および扁平上皮癌(頭頸部癌,肺癌,子宮頸部癌)を用いた.その結果,EGFR診断薬により強陽性を示した組織領域においてCTXによる陽性反応が認められたのに対し,弱陽性を示した領域ではCTXによる陽性反応は認められなかった.さらにCTXによる陽性反応を示した組織領域ではEGFR遺伝子増幅が認められた. 以上の結果より,CTXの腫瘍組織に結合部位を特定できたと共に,CTX陽性となった腫瘍の分子病理学的特徴が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的の達成のため,1年目にあたる平成24年度は上述のように,(1) CTXを用いたEGFR IHC検出法の確立および(2) CTX-EGFR検出法を用いたヒトFFPE組織におけるCTX結合部位の解析の実施を計画した. (1)における最大の課題はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)された組織中のEGFRタンパクに対するCTXの反応性であった.FFPE処理された組織中のタンパクは,通常抗体との反応性が著しく低下する.今回使用したCTXは抗体治療薬でありFFPE組織向けには開発されていないためFFPE組織への適用性は低い.そのためわずかな抗体反応性を検出する増感技術が要求された.そこで我々はCTXのハプテン化,抗原-抗体反応の多段階化,タイラマイド・ラジカル反応の利用により,その検出を可能にした点そしてその検出が細胞株のEGFR発現量と相関していた点については評価できるといえる. 一方(2)については,移植腫瘍のFFPE組織を用いて確立した検出法をヒトFFPE組織へ応用する場合,その質的差異からしばしば技術を要するが,更に改良を加えることで,ヒトFFPE組織での解析を可能に,すでに診断薬として承認されている診断薬抗体clone 2-18C9との関係を明らかにすることができた.さらにCTXにより陽性となった腫瘍領域を対象に分子病理学的アプローチを行い,その特徴(EGFR遺伝子増幅)を明らかにできた点については,今後治療効果予測法を確立する上で,重要な知見といえる. 今年度の研究の進捗については,概ね当初の実験計画通り進行したといえ,区分を(2)とした.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる平成25年度は,当初の計画通りCTX既治療のEGFR陽性・KRAS野生型大腸癌におけるCTX-EGFR検出法による治療効果予測の可否について明らかにするため,以下の2点について検討する.本研究はCTXを用いた大腸癌治療に日常従事している国立がん研究センター中央病院 消化器内科 山田 康秀医師の協力を得て進める予定である. 1) CTX既治療のEGFR陽性・KRAS野生型大腸癌の選択:CTX-EGFR解析に用いる症例の選択を行う.解析には進行・再発の結腸・直腸癌で, EGFR陽性・KRAS野生型と判定され,すでにCTX治療が行われ,その予後追跡が実施された症例を選択する.さらに近年治療抵抗性が報告されているBRAFやPIK3CA変異,PTEN欠失を有する症例を除外し最終20~30例を選択する. 2) 前向き観察研究によるCTX治療における効果予測評価:上記で選択した症例を用いた前向き観察研究を行い,EGFR-CTX解析およびEGFR遺伝子増幅解析により判定を行ったEGFR陽性群および陰性群間でのCTX奏効率および生存時間解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度同様,次年度も主に物品費に充てる予定であり,費目別には以下のように計画している. 【物品費】CTX-EGFR検出法に必要な試薬,EGFR遺伝子増幅解析に必要となる試薬を購入する予定である.またバイオマーカー探索のため遺伝子改変を行った細胞株も購入する予定である.その他の消耗品として免疫組織化学研究用試薬,細胞培養用試薬,ウエスタンブロッティング解析など生化学研究に使用する試薬を購入する予定である.一方,設備備品費は,研究代表者が所属する部門に主要な研究設備が整っており,新たな設備備品の購入は考えていない.【旅費】情報収集や成果発表のため国内外の学会へ参加予定である.【人件費・謝金】該当なし.【その他】本研究で得られた成果を,学会誌等へ投稿することを予定している. 研究推進にあたっては,計画に基づき実験を進めていき,研究費を有効活用したい.
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[Journal Article] Validity and reproducibility of Ki-67 assessment in gastrointestinal stromal tumors and leiomyosarcomas.2013
Author(s)
Ogino J, Asanuma H, Hatanaka Y, Matsuno Y, Gotoda H, Muraoka S, Tsuji T, Fukazawa Y, Yamashiro K, Kondo N, Iwaki H, Miyokawa N, Hasegawa T.
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Journal Title
Pathol Int
Volume: 63巻
Pages: 102頁-107頁
DOI
Peer Reviewed
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